表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
187/249

day107 ポイント交換

「皆、必要な素材ありそう?」

「ふむ……近い内に採掘に行く予定はありますか?」

「お祭りで結構使っちゃったし、行かなきゃね。

 今ってどこで採れる鉱石が良いのかな?」

「エルフの集落の近くの……」

「あ、前に採掘したとこ?」

「そうですね。あちらが一番品質が高いですね。

 それに、グリーンクォーツも入手できますし」

「うん、それじゃあ今度……明日にでも行こうか。

 銀の洞窟にも行きたいね」

「でしたら、私は特に必要な物はないですね」

「俺もないかなー」


個人ポイントのカタログを皆で眺める。


クランポイントは昨日全て使いきることが出来た。

クランレベルとクランハウスで3万ポイント。残り2万ポイントのほとんどは本に変わった。


どうやら貴重な本が賞品の中に紛れ込んでいたらしい。

と言っても、世界に数冊しかないとか、ある集落にしか伝わっていないとか、そのレベルの貴重さではないらしいけれど。

収集家が10人いたら1人は持っているくらいの貴重さ……と、エルムさんは言っていた。

他にも本はたくさんあったけれど、大半は街で売っている誰でも手に入れる事が出来る本なのだそうだ。


家具の中で一番ポイント数が多い物で1,000ポイントくらいだったのに対し、本は一番ポイント数が多い物で2,000ポイントくらいだった。

ポイント数の多さからも貴重さが伺える。

家具よりも優先するべきだとエルムさん達が教えてくれた本を全て交換したら、ほとんどポイントが残らなかった。

残りは家具に交換したけれど、ほとんど交換できなかったので個人ポイントで交換しておいた。


エルムさん達はクランハウスに俺達の個人ポイントを使うのはと遠慮していたが、全員分で11万ポイントもある。

防具に交換する必要はなくなったし、鋳型もフェルダがいるから交換しなくて良い。

魔石等の素材に交換するにしても、あまり多くなると置く場所に困る。それに、交換できる素材より良い素材がこの先手に入るだろうし。


「昨日交換した本は、クランハウスに置いてきちゃったし、家に置く用にもう1冊ずつ交換する?」

「クランハウス行けば読めるし、いらないんじゃない?

 どうしてもポイント使いきれないなら良いかもだけど」


どうやら個人ポイントとクランポイントで交換できる本に差があるらしい。

誰でも手に入れる事が出来る本は同じだけど、貴重な本はラインナップが違うとの事だ。

そちらの本もエルムさん達に教えて貰って交換しておいた。

クランポイントと個人ポイントで交換した本は全て、クランハウスに置いてきている。


「んー種はどうする? 交換しても良いし、クリントさんに紹介してもらった人から買っても良いし」

「どちらでも構わないけれど、そうね……裁縫に使える素材はいわい君に分けて貰えたから、すぐに必要ってわけじゃないわ。

 それに、今種を手に入れても、農業できないものね」

「それもそうだね。うーん……住宅と家具と本だけじゃ使いきれないね」


テラ街の家を購入する事については、皆賛成してくれていたので、今日の朝ログインしてからすぐに《住宅購入チケット》と交換しておいた。

そのまま朝食ついでにギルドで家も決めた。テラ街に行くまではお預けだけど。


これまでポイントで交換できた《住宅購入チケット》は500ポイント、1,500ポイント、2,500ポイントの3種類だったけれど、今回からは5,000ポイントの《住宅購入チケット》が追加されている。

俺達は5,000ポイントの《住宅購入チケット》と交換した。

ギルドで見せて貰った資料によると、住居自体はクランハウスより少し小さそうだったけれど、広い庭に大きな畑、納屋なんかも併設された住宅のようだった。

テラ街に行くのが楽しみだ。


家具と本、そして《住宅購入チケット》を合わせて28,600ポイント。まだまだポイントが残っている。

テラ街用の家具は交換するとして……いや、保管しておく場所がない。

ベルデさんが作った家具をいくつか貰ってきているので、そんなに交換する物もなさそうだけれど。

テラ街でも作業場は作りたいから、足りない分の作業机や収納くらいだろうか。


「交換期限があるから、早めに使い切りたいんだけどなぁ」

「召喚石に交換したら?」

「ぐぅ……5,000ポイントか……」


いくらポイントが余る程あるとは言え、失敗する召喚石と交換するのは勿体ない。

けど、もしかしたら……ひょっとしたら……成功するかも……いやでも、☆4種族が出るより確率が低いみたいだし。


「……1個だけ……交換してみる?」

「いいんじゃねぇか? フェルダの時だって、成功したんだから大丈夫だって!」

「いやぁ……ジオンの時は5回目でやっと成功したから……それでも、凄く運が良かったと思うけど」

「新しい仲間ー!」

「どんな人かな?」

「あらあら、2人共気が早いんだから。でも、そうね。楽しみね。

 きっと素敵な人が応えてくれると思うわ」


成功しないのが当たり前だ。成功してしまっても部屋が足りないし。

ベルデさんから貰ったベッドを置く場所もない。廊下ならまぁ……あるけど……さすがにそれはどうかと思う。


成功しなくても問題ないという言い訳を自分に言い聞かせながら、1個だけ召喚石と交換する。

中央の大きな机を片付けて、床に召喚石を置く。


「そ、それじゃあ行くよ!」

「「がんばれー!」」

「うん! 頑張る!」


大きく深呼吸して、召喚石を真っ直ぐ見据える。


「契約召喚!」


俺がそう言葉に出すと同時に、ボンっと小さな爆発音と共に召喚石が弾けて消えた。


「あぁ……失敗した……!」


一瞬で5,000ポイントが消えてしまった。

一番大きな住宅と交換できるポイントがなくなってしまった。


「ライさん、私の個人ポイント……と言っても、全てライさんのポイントに合算されていますが……5,000ポイントを私にくれませんか?」

「それはもちろん。皆の個人ポイントだから、5,000ポイントとは言わず、好きに使って良いよ」

「では、5,000ポイントを召喚石に」

「うん……うん!? も、勿体ないよ!? ジオンが良いなら、良いけど、でも……」

「俺も俺も! 俺も召喚石と交換するぜ!」

「アタシも!」

「ボクも!」

「待って待って……うーん……分かった。とりあえず、ジオンの分だけ……」


皆意外とギャンブラー気質なのだろうか。

俺は臆病なので、あまり得意ではないのだけれど。

10回失敗したら必ず1回成功するとかならともかく……召喚石に確定枠や天井はないだろう。


再び交換した召喚石を床に置く。


「……契約召喚!」


ふわりと召喚石に光が灯る。


「おっ! おぉ……? なんだ?」

「ん……?」


成功だと思った瞬間、光が消え、ボンっと音を立て召喚石は消えてしまった。


「……うん? 失敗?」


皆で顔を見合わせて、首を傾げる。


「ん……拒否、かな……」

「……なるほど……呼びかけは届いたけど、応じないってことかな……」

「えー! 勿体ねぇなー。すっげー楽しいのに」

「あはは、ありがとうリーノ。そう言ってくれて嬉しいよ」


とは言え、これは凄くがっかりする。

成功だと思った分、ダメージが大きい。


「ライ! もう一回! 今度は俺の!」

「うぇぇ……成功する気がしないよ……」

「大丈夫だって!

 ちょっと成功したわけだし、次は成功するって!」

「うぅ……」


もう1回もう1回と皆に後押しされて、召喚石を交換する。

召喚石だけで既に15,000ポイントも消費している。恐ろしい。


「契約召喚!」


ふわりと召喚石に光が灯る。

その光はジオンやフェルダの時のようには広がらず、大きくなったり小さくなったりを繰り返し、やがて小さな爆発音を立てた。


「……さっきと同じやつ? 失敗するまでに時間かかってたけど」

「同じ方に呼びかけが届くものなんでしょうか?」

「どうかしら……でも、もしかしたら縁が繋るってことはあるかもしれないわね。

 細く細く、今にも切れてしまいそうな縁でしょうけれど……もしかしたら、繋がり易くなっているのかもしれないわ」

「ってことは、何度も繰り返してたら、根負けして来てくれるかもしれないぜ?」

「ライくんもう1回!」

「まだこないのかなー?」

「力押しで召喚できるものなの……?」


本当に同じ人に呼びかけることができているとして、拒否しているのに何度も呼びかけられるのは鬱陶しいだけではないだろうか。

でも、先程の光の様子の感じだと、もしかしたら迷っているのかもしれない。そうだったら、応えてくれるかもしれない。

諦め半分、期待半分で再度召喚石を交換する。


「……契約召喚!」


ぶわりと光が灯る。今度は大きくなったり小さくなったりを繰り返さず、そのままどんどん光が消えて行く。

失敗かと思ったその瞬間、召喚石から光が溢れ出た。


「どうだ!? 今回は成功か!?」

「わ、わかんない……!」

「でもフェルダくんの時と一緒だよ?」

「あ! 誰かいるよー!」


溢れた光が人の形に集束していく。

光が晴れると共に、そこに現れた人物の風貌が明らかになった。

瞼を上げたお兄さんが、俺に視線を向けて口を開く。


「……悪いが、お前さんと契約することは出来ん。

 まぁ、召喚石で呼ばれとるから、今は契約しとるが。

 契約を解除してくれんか?」

「あ、えっと……そっか……うん、わかった」


物凄く残念だけど、呼びかけに応えてくれたわけじゃないという事は分かる。

断る為に来てくれたのだろう。


「何度も呼びかけて、ごめんなさい」

「構わんよ。たったの2回だ。……ああ、じじぃも1回呼ばれとったな」

「お爺さん?」

「お前さんが何回召喚石を使ったかは知らんが、わしより前にわしのじじぃも呼ばれとった。

 そりゃ老い先短いじじぃが応えるわけなかろうて。余生をゆっくりさせろと言うに決まっとる。

 ま、中には応える変わり者もおるかもしれんがな」

「なるほど……お爺さんが待ってるなら、尚更申し訳ない事をしたよ。

 断る為とは言え、きてくれてありがとう」

「いや、断るだけには来ん。

 じじぃに今すぐ行けだの行くべきだのとぐいぐい押し出されてな。

 余程わしを追い出したかったと見える」

「なるほど……?」

「じじぃがなんと言おうと、わしには無理だ。悪いな」

「ううん、大丈夫だよ。えっと……ちょっと待ってね」


これまでに契約を解除したことがないのでやり方がわからない。

ヘルプページを開いて、テイマーの項目を読み進める。


「な、お前名前なんて言うんだ? 俺はリーノ!」

「わしか? わしはネイヤだ」

「ネイヤ、な! ライと一緒にいるの楽しいぜ? 帰っちまうのか?」

「羽のないわしが従魔、ましてや異世界の旅人の従魔なんぞ荷が重い」

「羽? 羽がどうかしたのか?」

「わしは烏天狗だからな」

「烏天狗……肆ノ国にいるとは聞いていましたが、お会いしたのは初めてです」

「お前さん肆ノ国出身か? 烏天狗はあちこちの山を旅する種族でな。

 移動以外は山の中に引っ込んどるから、街の連中には会わん。

 ま、わしにゃ羽がないもんで、置いて行かれてしもうたが」

「羽……私と同じなのね。私も精霊なのだけれど、自然の力が全くないの」

「そいつは……悪い事をした。お前さんを傷付けるつもりはなかった」

「ふふ、良いのよ。今はちっとも気にしていないわ。

 それに、皆同じだもの。誰も気にしないわ」

「突然変異種。ライの従魔は全員そう。

 俺は正確には違うけど……ま、今の俺は突然変異種だね」

「全員? そんなことがあるわけ……いや、昔じじぃがそんな話しとったような……」

「俺、テイムに制限があるんだよ。種族特性なんだけどね。

 ……あ、契約解除できそうだよ」


ヘルプページを閉じて、テイムモンスター一覧を開く。

追加されている『ネイヤ』の文字を選択し、新たに開いたページでいくつかの操作をすると『契約解除』と書かれたアイコンが表示された。


「本当は肆ノ国まで送りたいんだけど、俺達じゃ行けないから……でも、住んでる山から一番近い街までの転移陣代は払うよ。遠いなら、食事代や宿代も」

「……いや、気が変わった。やっぱり、お前さんの従魔にしてくれんか?」

「それは嬉しいけど……良いの?」

「お前さんこそ、羽の無い烏天狗なんぞを抱え込むことになるが、良いんか?」

「んん……よくわからないけど、俺にも羽はないし、皆にもないよ」

「そりゃお前さんらはなかろうて……いや、龍人ならあるんか?」

「龍人に羽はないよ。羽があるのはまた違う種族」

「ほーか。まぁ、お前さんが良いなら良いが。

 悪かったな。のこのこやってきたくせに契約を解除しろと突っ撥ねて、やっぱり従魔にしろなんぞ、無礼にも程がある」

「ううん。仲間になってくれて凄く嬉しいよ。

 これからよろしくね、ネイヤ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[一言] いやあ、何か凄い事をしている気がする。 何故なら一般的なプレイヤーはまずやらないな。 彼らだからこそできる荒業だわ。
[良い点] 新たな家族おめでとう。 変異種しかいないからコンプレックスは息しないと思うので大丈夫よ。 他プレイヤーから種族わからないのってリーノ(ノッカー)、シヴレヴ(ネーレイス)かな。そこに一人また…
[良い点] 待ってました〜!小説家になろうで1番楽しみです。会話のテンポが良くてにやにやしながら読んでます笑 新しい仲間!どんな人(?)なんだ?!楽しみです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ