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day102 準備期間2日目③

『TO:レン FROM:ライ

 見たい物に意識をずらす感じかなぁ。』


種族特性が反映された魔力感知を取ったら、世界が虹色になったらしい兄ちゃんからのヘルプに返信する。

見えなくなるコツを掴もうと過ごしていたみたいだけど、準備期間2日目の夕方になり、これはだめだと俺にメッセージを送ったみたいだ。


『TO:ライ FROM:レン

 ステレオグラムみたいな感じ?』


『TO:レン FROM:ライ

 焦点ぼかしたら戦えないよ。

 魔力感知に意識を集中して持って行きつつ、視点に意識をずらして行くというか・・・。

 それで見えるようになるから、兄ちゃんなら違うスキルとかに意識ずらしたら見えなくなるかも?』


『TO:ライ FROM:レン

 一瞬できた 試しに魔力制御に意識をずらしてみたら消えたよ』


『TO:レン FROM:ライ

 へぇ~! 魔力制御ってそういう使い道もあったんだね。』


魔法属性スキルのMPの消費が抑えられるだけじゃないらしい。

それなら俺も、魔力制御と魔力感知の合わせ技で、違う何かが見えたり、魔力の調整がしやすくなったりするだろうか。

ああでも、兄ちゃんの魔力制御は種族特性が反映されているから、普通の魔力制御とは違うはずだ。


『TO:ライ FROM:レン

 コツ掴めそう ありがと』


どういたしまして、と。

ウィンドウを閉じて、目の前に並ぶ魔道具を眺める。


睡眠、麻痺、火傷、毒、暗黒、冷気、混乱……これだけの状態異常を魔道具で引き起こせるようになった。

それぞれの効果付与のある魔法鉱石を使って、シアとレヴに掌サイズの球を鋳造してもらい、それを元に作った魔道具だ。

睡眠は水弾、麻痺は雷弾、火傷は黒炎弾、毒と暗黒は闇弾、冷気は氷晶弾、混乱は風弾を融合したら出来る。


ちなみに、混乱はスキルが使えなくなるらしい。

通常攻撃は出来るので、武器を持って戦う人にはあまり意味はないかもしれないけど、魔法職の人には困る状態異常だろう。


毒の罠の魔道具と呪術と組み合わせた毒の魔道具、どちらでも毒状態にすることは出来るけど、呪術と組み合わせた毒の魔道具の方が効果が高く、効果時間も長いらしい。

ただ、一度使ったら壊れるので、範囲も広く、魔石の魔力が尽きるか壊されでもしない限り使える罠の方がコスパは良い。


足を止められる方が強そうだと、睡眠と麻痺、冷気の魔道具は多めに作っておいた。


「ライ君、防具できたわよ~!」

「! 今行く!」


椅子から立ち上がり、うきうきとイリシアの元へ歩いて行く。


「わ、凄い……!」

「うふふ、頑張ってみたわ。

 これで私達の分は全部できたわね」


俺達プレイヤーの防具はレベルが低い順に作っていたそうで、残りはみけねこさんだけなのだそうだ。

ジャスパーさんは鎧を装備しているので、シルトさんが作っている。

鎧の下に着る服は、刀の鞘のように、鎧が完成すると甲匠の妖精の力で現れるらしい。


それと、最後にヤカさんとガヴィンさんの防具。

ヤカさんとガヴィンさんはここにいる誰よりもレベルが高い。なんと、桁が1つ違う。

確かに、ガヴィンさんは元々肆ノ国にいたようだし、ヤカさんだって全ての基本属性の魔法柱が使えるのだから、レベルだって高いだろう。

つまり……フェルダも元々はそれくらいのレベルだったのではないだろうか。


「それじゃあ着替えようか」

「皆にはもう渡しておいたわ。

 部屋に行って着替えているはずよ。私も着替えてくるわね」

「うん! 俺も、着替えるね」


イリシアが部屋に向かうのを見届けてから、受け取った防具をアイテムボックスに入れる。

俺の場合、着替えるわけじゃなくて、一瞬で変更されるけど。

着替える事もできるけど、着付けの仕方がわからない。今度ジオンに教えて貰おうかな。


全員分が出来てから皆で着替えようと話していたので、皆の防具がどうなったのかはまだ知らない。

ウィンドウで装備を変更し、『決定』の文字に触れると同時に、ふわりとエフェクトに包まれる。


裸になったりはしないので、どこで装備を変更しても大丈夫だ。

近くにいるいわいさんにじっと見られているのは、少し恥ずかしいけれど。


「……なるほど。存在感がやばいです」

「そ、そう……やばい……?」

「元々ライさんには存在感ありますけどね。

 先程までの着物より派手になっているので、存在感が増し増しになってます。

 しかも、完璧に着こなしているので、更にどどんと!」

「えーと……」

「姿見を持ってきてるので、確認してみてください」


ぽんっと目の前に姿見が現れる。

早速、鏡の中の俺に視線を向けてみる。


昨日イリシアが言っていたように、前の装備を元にして作られたらしい。

らしいと言うのは、色合いなんかは一緒だけど、所々布が増え、柄が増え、装飾も増えていて、随分印象が変わっているからだ。


裾から膝元あたりには、波のような柄が金箔で施され、金粉が振り撒かれており、金を砕いて欲しいと言っていたのはこれだろうとわかる。

足元にかけて裾が広がっていて、黒地に白の麻の葉柄が大きく入った襦袢が見えている。

帯には前で黒の部分と切り替わるように鮮やかな芥子色と黒の市松模様の柄が斜めに入っており、朱色の帯飾りが追加され、左腰辺りにある梅結びから長い紐が垂れている。

紐の先にはリーノが細工する時の彼岸花の柄が入った黒色のガラス玉が2つぶら下がっている。


一番変わったのは外套だろう。シースルー素材の布が下に追加され、後ろから反物のような長い布が2本揺れている。

前を止めていた飾り紐は、腕の辺りに追加された白色の飾り紐に続き、背中まで続いている。

首元にはもふもふとファーが追加されていて、暖かい。

俺が寒いのが苦手らしいと話した事があったから追加してくれたのかもしれない。


自分の全身を眺めて、どちらかというと敵側のような出で立ちだと感じる。

鬼だから、そう見えるのだろうか。


「なるほど……強者感……」

「それですそれです。みきが言ってましたね」


少し装飾や柄を足すだけでがらりと変わるものなんだなと感心する。

初期装備から前回の防具に変わった時も派手になったなと思ったけど、今回は更に派手になった。


皆の防具も楽しみだと、いわいさんと話しながら待っていると、作業場に皆が戻ってきた。


「わ! 凄い! 派手! 強者感!」

「ふふ、そうですね。色合いが増えました」


ジオンはこれまで通り袴だけど、俺と同様にがらりと印象が変わっている。

上衣の身頃が左右で違い、ジオンから見て右側は濃い藍色に薄く矢絣柄が入っていて、左側は灰緑色だ。

前はマントのような外套だったけど、今回は、淡い水色から裾に欠けて濃い青色へと変化する着物を羽織っている。

大きく前が開かれ、腕の辺りでそれ以上ずり下がらないように、飾り紐で止められている。

袴の裾には俺と同じように金粉が振り撒かれている。


「裾が伸びたぜー! 3本!」

「ダイヤ柄の裏地も可愛いね。ズボンの形も少し変わってる」


一番最初に目に入るのは、ジャケットの色とよく似たキャスケットだ。

アクセサリー扱いのようだけど、リーノの作った装備とどちらを装備に設定するかは、後で話して決めておこう。

短かかったジャケット裾が長くなり3つに別れて、リーノが動く度に中のダイヤ柄の裏地が見える。

シャツはストライプ柄に変わり、裾も以前より長くなっている。

首元にも皮の素材の飾りが追加されおり、他にもジャケットやコルセットにも装飾が追加されている。


「ライくん、見てー!」

「ボクたちも上着!」

「うん、凄く似合ってるよ。

 それに、頭に乗ってる小っちゃい帽子も可愛いね」


これまでベストが外套になっていたが、今回からは丈の短い半袖のケープを羽織っている。

スカートとズボンの裾にはフリルがあしらわれ、濃い藍色の部分には白い糸で刺繍がされている。

腰で大きな黒と赤のストライプ柄のリボンが揺れていて、首元のリボンとネクタイ、それから頭に乗った小さな帽子にも同じ柄のリボンが使われている。

ケープやベスト、胸元のリボン、ネクタイ、腰のリボン、小さな帽子はシアとレヴで少しずつ違う形になっている。

いわいさんが作ってくれたらしい、新しいダガーのホルダーは、杖も一緒に差すことが出来るようだ。


「こーいうの、着た事ないんだけど、これ、似合ってる?」

「驚く程似合ってるよ。フェルダもコートが追加されたんだね」


コートを羽織るだけでがらりと印象が変わる。

ロングコートは裾部分だけ黒地に白のチェック柄になっており、燕尾とはちょっと違うけれど、2つに分かれた裾の裏地は白地にグレーのストライプ柄だ。

戦闘中に裾が広がって邪魔にならない為なのか、上から2本のベルトで抑えられており、1本のベルトからポーション用のホルダーがぶら下がっている。

黒一色だったベストは、前だけグレーのチェック柄に変わっている。

腰に巻かれたストールは2つに増えており、ワインレッドの布の上に、前と同じ前髪の色とよく似た色の市松模様のストールを巻いている。


「どうかしら? 何か気付かないかしら?」

「うん? んー……エルフの皆が着ている服に似てるね」

「ええ、そうなの! 私、エルフの服が大好きなの!」

「そっかぁ。うん、そうだよね」


元々初期装備であろう白いワンピースを着ていただけのイリシアが一番印象が変わっている。

裾や襟元に刺繍があしらわられ、背中で白のリボンが揺れる翡翠色の上部分がケープのようになっているロングコートは、エルフの皆が着ていたコートによく似ている。

中に着ているワンピースは、全体的に淡い青緑色のグラデーションがかかり、袖元の広がった袖にはシースルーの素材が使われている。

コートやワンピース、それからコルセットにもフリルがあしらわれているけど、可愛というよりは綺麗だと印象を持つ。


「みきさんが強者感半端ないって言ってたの、凄く分かったよ。

 でも、皆服に負けてないし、凄く似合ってる」

「うふふ、皆とっても素敵だから、少し派手なくらいじゃ負けないわよ。

 もっと派手にしても良かったのだけれど……素材が足りなくて」

「今度色々集めようね。それに、農業も始めたいし」


農業を始めるなら、テラ街で畑付きの家を買おうかな。

俺達の目標は大きな家を買う事だけど、なかなかここだって家は見つからない。

というより、迷う。トーラス街も良い街だし、アクア街のあのリゾート感もセレブな気持ちになれそうだ。

エルムさんがいるカプリコーン街も捨てがたい。いや、知り合いがいる街や村は全部捨てがたい。

まだ行っていない場所もたくさんあるし、後からここが良かったって所が見つかったらと思うとなかなか手を出せない。


トーラス街の家も最終的には別荘にするつもりなわけだし、気になる街ではもう家を買ってしまおうか。

さすがにそこまでするのは散財が過ぎるかな。


「ありがとう、イリシア。最高の防具だよ」

「そう言って貰えると嬉しいわ。いわい君にもね、たくさん助けてもらったのよ」

「いわいさんも、ありがとう。こんなに変わるなんて思ってなかったよ」

「いえいえ。僕がしたことは皮細工くらいですよ。

 それも、イリシアさんにたくさんの事を教えていただきながらなので」

「うふふ。いわい君はきっと素晴らしい職人さんになれるわ」

「頑張りますよ。革細工と裁縫なら結構やれると思ってたんですが……上には上がいますね」

「あらあら。うふふ。歴が違うもの。生産はスキルレベルだけじゃないのよ」


イリシアと比べるのは酷ではなかろうか。

裁縫は尤だし、今でこそ革細工のスキルレベルは低いけど、元々は恐らく……随分高かっただろうと思う。

ちなみに、イリシアの皮細工は、先日の練習と準備期間で6まで上がっている。

俺の従魔になった事で上がりやすくなっている上に、やはり知識がある状態だと更にスキルレベルが上がりやすいようだ。


「技能もそうですが、知識でこの世界の方々には勝てませんね。

 これからは知識も蓄えたいと思います」

「何がスキルの解放に繋がるか分からないから、色々知識を蓄えるのは良いと思う」

「そうなんですか?」

「うん。呪術スキルは、勉強して纏めてたら解放されたよ」

「なるほど……そういうスキルもあるんですね」


そう言えば、いつの間にやら解放されているスキル……例えば従魔念話や従魔治療なんかはアナウンスがなかったけど、魔道具製造スキルと呪術スキルはアナウンスがあった。

どういう違いなのだろう。今持っているスキルのレベルが上がった時に解放されていたら鳴らない、とかなのかな。


「それじゃあ私達は、残りの防具も完成させてくるわね」

「うん。本当にありがとう」


武器も防具もアクセサリーも、全ての装備が新しくなって、気持ちも変わる。

さぁ、俺も続きの作業に戻ろう。夜の会議までに全て終わらせたい。

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