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day101 準備期間1日目②

「ライさん達が生産道具を作っている間は素材を集めましょう。

 あ、ガヴィンさんとヤカさんは大丈夫ですからね。作業に取り掛かって貰って……」

「や、俺も行く。道具は持ってきたけど、素材はそんなに持ってきてない。

 正直、ここまでの廃墟と思ってなかったから」

「なるほど……わかりました。

 では、魔物班、採掘班、伐採班、採取班に分けたいと思います。

 魔物班は……ジャスパーさんと菖蒲さん、お願いできますか?」

「おっけぇ~たくさん集めてくんねー」

「狩りは、苦手だけど……スティール、頑張ってくるね」


菖蒲さんはスティールを覚えているようだ。

魔物から素材が取れるスキルだけど、戦闘職の人は狩れば良いから取らず、生産職の人もレベルが高い場所にはあまり行かないので、取っている人は少ないらしい。


「採掘は……どうしましょうか。採掘を持ってる方のほうが多いですよね」

「ちなみに、誰が取ってるんすかね?」


生産頑張る隊の人達が手を上げるのを見て俺も手を上げると、隣にいたカヴォロが俺の手を降ろした。


「ライは行かなくて良い」

「はい」


カヴォロとみきさん、いわいさん、ぐんぐんさん以外は覚えているみたいだ。


「それでは、私とサクノさんで行きましょう。

 それから……ガヴィンさんとフェルダさんですかね?」

「兄貴は作業してなよ。俺行ってくる。

 ライ、つるはしとシャベル持ってる?」

「うん、一応持ってきてるよ」


アイテムボックスから取り出して、ガヴィンさんに手渡す。


「採取は……ぐんぐんさんとカヴォロさん、いわいさん、みきさん。

 ぐんぐんさんとカヴォロさんは、ある程度集まったら、すぐに戻ってきていただいて構いませんので」

「うん。道具ができたら、農業するねぇ」


どうやら1階から行ける庭に畑があったらしい。

荒れているので手を加えないと農業はできそうにないようだけれど。


「農業は、生産道具が出来るまでは私も手伝わせて?

 スキルレベルが低いから、あまり手は出せないかもしれないけれど」

「本当? ありがとー」


ふにゃりとぐんぐんさんが笑う。


どの生産道具から作るべきだろうか。早めに帰ってくるぐんぐんさんの道具にしようか。

鍬とスコップ、シャベルがあれば大丈夫だと言っていたし、そんなに時間はかからないはずだ。


「伐採はベルデさんとみけねこさん、お願いします。

 ベルデさんは仕事が多そうなので……道具が出来次第、戻ってきてくださいね」

「うぃ。出来たら教えてください」

「カヴォロに連絡したら良い?」

「えっと、あ、はい。そうですね。お願いします。

 カヴォロさんからクランチャットで連絡してもらうので」

「了解。最初に、ぐんぐんさんの道具を作って貰うよ」

「良いの~? わー、楽しみにしてるね~」


と言っても、ぐんぐんさんの生産道具はシアとレヴが作るので、俺は……何から作ろうか。


「優先順位ってどのスキルが高いかな?」

「石工以外ですと……木工ですかね。

 兵士さんの杖や弓もですが、家具も必要になりそうですし」

「それじゃあ、木工で使う魔道具を作るね」


木工で使う魔道具は主に、木を切ったり削るための道具……現実で言うところの電動糸鋸やテーブルソー等だ。


「最後に、作業場ですが……どこを作業場にしましょうか?

 この部屋も広いですが……」

「ここは恐らく食堂だな。奥にキッチン用のスペースもあった。道具も家具も1つもないが。

 隣にどの部屋よりも広い部屋があったから、そっちの方が良いだろう」

「なるほど。でしたら、隣の部屋を作業場にしましょう。

 クリスタルまで行くのに地下は通りませんしね」

「地下なら本戦で出したままでも大丈夫っすね。

 盗むことはできないし、壊されることは……まぁ、ないと信じたいっすね」

「本戦と関係ない生産道具、しかも通り道にない物だよ?

 それを壊されたなんてことになったら……一生許せないかな~!」

「もし壊されたらさぁ、そいつの武器叩き折るよ~」


にこにこ笑いながら、ジャスパーさんがそんなことを言った。

叩き折ろうと思って叩き折れるものなのだろうか。


「そうですね。生産道具を壊したプレイヤーには制裁を、ということで。

 それでは、ご飯を食べ終わった方から作業を開始しましょう!」


はぁいと全員が返事をする。

最後の一口をぱくりと食べて、皆の様子を伺う。

シアとレヴがあと少しかかりそうだ。


「土台部分は、一部鋳造で作らなきゃだけど、他はフェルダよろしく」

「ん、了解」

「ごめんね。イリシアの道具、もうちょっと待ってね」

「気にしないで。私、皆にどんな服を作ろうって色々想像してるの。

 考えてるだけでわくわくするのよ。きっと素敵な服を作るからね」

「うん、楽しみにしてるね」


今回、俺達の防具も新しくしてもらう。

着物が良いとか袴が良いとか、動きやすい方が良いとかは伝えたけど、色やデザインなんかはお任せだ。


「僕もライと作業かな。ほとんどする事ないだろうけど。

 手紙に書いてあった分は、全部持ってきたよ」

「ありがとう、ヤカさん。いくら?」

「それがね、僕達が持ち込んで使った素材は、ギルドが払ってくれるんだって」

「え、そうなの!?」

「そうみたい。手紙きてた。まぁ、申請が面倒なんだけど。

 じゃあ良いかって他にも色々持ってきてるよ」

「わー……! やった!」


サポート枠の人が持ち込んで使用した素材については、ギルドからお金が支払われるらしい。

使わなかった分は当然払われないようだけど。


「あ! これ!」

「ん?」


アイテムボックスから《黒炎魔石》を取り出して手渡す。


「うわっ……え? なに?」

「ネックレスのお礼だよ。呪い軽減できたし……他にも、ね」

「別に良いのに。貰って良いなら貰うけど……いや、婆さんがなんて言ってくるか」

「エルムさんにお礼ならそれが良いって言われたから、大丈夫だよ」

「ふぅん……ありがと。最終進化の魔石なんて、初めて見た」


ヤカさんは手に持った《黒炎魔石》をまじまじと眺めて、口角を上げた。

宝物を見つめるようなその視線に、喜んでくれたようだと俺の口角もにっと上がった。


「「ごちそうさまー!」」

「ライくん、たくさん作ろう!」

「作業場にいこー!」


食べ終わったシアとレヴがうきうきと立ち上がる。

ぴょこぴょこと跳ねるように隣の部屋へ向かうシアとレヴの後を追う。


「ライさん、持ってきてるアイテム、適当に出しちゃって良いっすか?」

「うん、ありがとう。お願いします」


家から持ってきた生産道具や素材が広げられていく。

他の皆の持ち込んだアイテムも広げると、何もないがらりとしていた広い部屋が作業部屋として生まれ変わった。

全てのアイテムを広げてもまだまだ余裕がある。


広い部屋の一角に広げられた俺達のアイテムを見て、なんだか家に帰ってきたみたいだなと思う。

家具や作業机は少ないが、いつもの俺達の作業場とほとんど変わらない。


素材調達へと皆が出掛けて、俺達だけとなった作業場で、ぺたりと地面に座り込む。

ジオン達が道具を移動させている姿を眺めつつ、束ねた羊皮紙から1枚の羊皮紙を抜き取る。


元となる生産品は、細かな部品は作って、1つの大きな箱に入れて持ってきているけど、大きな部品は収納アイテムに入れるのが難しいので、中で作ろうと素材だけしか持ってきていない。

それ以外も俺達で作れない、例えば木工で作って貰いたい部品等は、ベルデさんに頼む必要がある。

幸い、木工の魔道具の部品は木工品じゃなくても良いので、俺達だけで作れる。


「まずは何から?」

「これから!」


魔法陣と設計図が描かれた羊皮紙をフェルダに見せる。

1つ目の魔道具の大体の土台部分は石工品で作ってもらう予定だ。

フェルダは羊皮紙を眺めた後、頷いて作業に取り掛かった。


「アタシたちはー?」

「この部品をよろしく。

 それが出来たら、鍬とスコップ、シャベルを2つずつお願いね」

「「はーい!」」


最後にぐんぐんさんとイリシアの農業スキルのレベルを伝えると、鋳型を選んだシアとレヴが、鋳造用の炉の元へ向かって行った。

鋳造用の冷蔵庫、基、冷却庫も追加でもう1つ作って2つ持ってきているので、次々と完成するだろう。


「ジオンは鋸刃をお願いね」

「お任せください」

「リーノは土台に風属性が付与された魔法宝石を使って装飾してね。

 鉱石は融合してないやつで大丈夫だよ」

「おう、任せとけ!」


作業開始だ。

土台が出来るまで、俺は少し時間がある。

たくさんある羊皮紙の設計図をもう一度確認しておこう。


「へぇ、さすが婆さんの弟子だね。綺麗な魔法陣。

 あー……ここは変えたが良いかも」


指差された部分を見ると、先日描いている時に2つから迷って選んだ記号が描かれていた。

迷ったもう1つの記号を隣に描いて、ヤカさんに視線を向ける。


「こっち?」

「そう」

「教えてくれてありがとう。凄いね、ヤカさん。ぱっと見て分かるんだね」

「まぁ、色々見てきたし。

 それに、魔道具製造スキルを取得するのに、随分勉強したから」

「そっかぁ……俺達みたいに、弟子になるだけじゃないもんね」

「それ本当信じられない。僕の苦労って……まぁ、封印しかしてないけど」

「俺達はぽんって覚えられるけど、その分知識や技能が最低限しかないからね。

 ヤカさんは魔道具作らないの?」

「作らないね。僕が作るとこう……なんか、若干呪われる」

「そんな事があるんだ……」


作り手によって変化してしまう事があるらしい。

そんな話は聞いたことがなかったけど、種族によるものなのだろうか。


「呪術スキルなんて取得した日には、封印すら出来なくなりそう。

 呪いも解呪もする機会ないし、取得することもないだろうけど」

「なるほど。知識と技能……呪術の場合は実技なのかな?

 両方必要なんだよね」


逆に言えば、この世界の人で呪術スキルが使える人は、呪いや解呪を使った事がある人と言う事だ。

もちろん、産まれた時から持っていたって人もいるだろうけど。


「細工終わったぜー!」

「ありがとう、リーノ」


フェルダが作ってリーノが装飾した土台に、早速チョークで魔法陣を描いて行く。


「次はどれ?」

「この魔道具の……この部分、よろしく」

「んー……ん、わかった」

「こちらも1枚、できましたよ。替え刃も作っていきますね」

「うん、ありがとう」


刃を取り換えるのは難しくない。

恐らく見たらわかるとは思うけど、後でベルデさんに替え方を伝えておかなければ。


「ライくん、出来たよー!」

「ありがとう」


小さな部品の入った箱から、今作っている魔道具に使う部品を取り出し、土台を組み立てていく。

部品さえあれば、他の生産スキルを持っていない俺でも組み立てる事ができる。

魔道具の元になる物は組み立てることが出来ると言ったほうが正しいかな。


平行定規がつるりとした石の上で滑らかに動く。

使い勝手は俺には分からないけど……きっと大丈夫だろう。


「ライ、魔石ある?」


頷いて、ヤカさんに封印前の魔石を手渡すと、すぐに風属性を封印してくれた。

イリシアのスキルレベルが上がって風纏を覚えれば、《風魔石》も作れるようになるけど、今はまだ作れない。


ふと、聖属性以外の基本属性は用意できるようになったのかと気付いて驚く。

黒炎属性は進化属性だけど、作れる魔道具は同じだ。寧ろ、火属性よりも性能が高い魔道具が作れる。


これまではイベントのポイントで魔石や防具、鋳型なんかに交換していたけど、これからはそれらに交換する必要がなくなってしまった。

今回もポイントが貰えると決まったわけではないけれど……でも、きっと30位以内には入れるはず……入れたら良いな。

いや、入れる。強化に関しては、ジオン達や生産頑張る隊の皆に勝てるクランはないと自信を持って言える。

強化ポイントと防衛ポイントは他のクランよりも稼げるはずだ。破壊ポイントは……どうかな。


「出来た、かな?」


魔法陣を描いて、組み立てて、テスト。

小さな音を立てて刃が回り始めた。現実だともっと音が出るイメージだけど……魔法凄い。

速度を調整するための記号に触れ、速度がゆっくりになったり早くなったりする事を確認してから、魔法陣の上で《風魔石》に力を籠める。


「完成!」


1つ目の魔道具、テーブルソーの完成だ。

鑑定で性能を確認して、アイテム名の横の☆4の文字に口角が上がる。ユニークだ。

皆の作ってくれた生産品の品質を下げることなく魔道具に出来て良かった。


にんまりと笑って、次の魔道具に取り掛かる。

まだまだ作らなければいけない魔道具はたくさんある。

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