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day11 スキルと特性

毎朝の日課をこなし、ログイン。


宿屋の食堂で朝ご飯を食べて一旦部屋に戻り、スキル一覧を眺める。

溜まりに溜まったSPは80。何か取得してもいいかもしれない。


「んーまずは採掘を覚えてしまおう。

 それから……回復魔法とか使えたらいいんだけど」

「回復魔法は聖属性ですね」

「あー属性魔法なんだね。それじゃあ覚えられないや。

 あ、【従魔回復】だって。これなら覚えられる」


自分の回復はできないけれど、ジオンの回復ができる。

ヴァイオレントラビットと戦う前にスキル一覧をチェックしておけばよかったな。


「あ、あとこれにしようかな。【夜目】だって。

 夜も見やすくなるみたい。それに洞窟の中も」

「ええ、そうですね。ですが、ライさんは鬼神ですので必要ないかと思いますよ」

「そうなの?」

「はい。鬼神や鬼人はある程度夜目が効きますので。

 実際、夜の狩りも問題なかったでしょう?」

「確かに、暗かったけどある程度見えてた」


ゲーム補正かと思っていたけれど、種族特性としてステータスに書かれた特性以外にも隠れた特性があるようだ。

これは精神的なものだと片付けた疲労度も、本当に隠しステータスとしてあるかもしれない。

まぁ、隠れてるからわからないし、これ以上考えても仕方がないけれど。


「何か便利なスキルあるかな?」

「ふむ……【魔力感知】はいかがですか?

 周囲のモンスターの魔力が見えるようになるそうです」

「ジオンは周囲の敵の動向に瞬時に反応しているけど、持っていないよね?」

「魔力を見ているわけではありませんからね。

 音や気配、あとは勘です」

「勘……俺には無理そうだし、取得しようかな。

 えーと……あれ? こういうこともあるのか」

「何か問題が?」

「うーん、問題って程ではないけど、種族特性が反映されてるんだよね」


ステータス一覧には【魔力感知】と【魔力感知・百鬼夜行】の2つが並んでいた。

取得に必要なSPが【魔力感知】が5なのに対し【魔力感知・百鬼夜行】は30もある。


「でしたら、特性が反映されているほうが良いと思いますよ。

 魔力感知の効果はそのままで、何かしらの特性が追加されるはずです」

「なるほど。それじゃあ、こっちにしようかな」


早速【魔力感知・百鬼夜行】を取得する。残りのSPは30になった。

他にも色々と試しに覚えてみたいスキルはあるけれど、今はいいか。

必要なスキルが増えるかもしれないし。


「ちなみに、ライさんの種族特性はどんなものなんですか?」

「種族特性って同じ種族ならみんな一緒なんじゃないの?」

「大体は同じですね。例えば鬼人だったら炎華を持っている人が多いです。

 私は氷鬼なので雪華ですね。違う特性を持っている人もいますよ。

 中でも、上位種族は様々な特性を複数持っていることもあると聞いてます」

「ああ、うん。俺、種族特性2つあるよ。

 1つは地獄の業火で黒炎属性の威力が上がってるみたい。使ったことないからわからないけど。

 ただ、その特性のお陰で他の属性が覚えられないんだよね」

「あぁ……そうだったんですね。先程聖属性が覚えられないと言っていたのが疑問だったんですが納得しました」


種族特性は一律だと思っていたからジオンは知っているものだと思って特に言及したことはなかった。

そうなると、種族スキルも人によって違うのかもしれない。

スキル説明を読んでもいまいち使い道がわからなかったのでこれまで気にもしたことがなかったが。


「それから、百鬼夜行だね」

「は……百鬼夜行、ですか?」

「うん、そうだよ。知ってるみたいだね。結構多いのかな」

「まさか。鬼神の多くが百鬼夜行の特性を持っていたらこの世界は鬼神のものになってしまいますよ。

 条件が厳しいとは言え、使役する魔物は強力な魔物ばかりですから。

 ……従魔にできる魔物の条件はどのようなものですか?」

「条件も人それぞれなんだ? ☆4……ランクって言ったほうがいいのかな?

 ランク4以上の人型かつユニークモンスターだよ」


俺の言葉にジオンは目を大きく見開いて小さく息を飲んだ。


「……この世界に、敵対する人型の魔物……魔人や獣人等の所謂亜人はいません。

 いえ、堕ちた元亜人はいますが……およそ人とは思えない姿をしているとか」

「……人型とは言えないってこと?」

「そう、ですね……」


言われてみれば、ジオンのような姿をしたモンスターが出てくるわけがない。

倫理的にアウトである。


テイムできるのはジオンのような例外を除いたら敵対するモンスターだけだ。

人型のモンスターがいないとなると……どうしたらいいんだろうか。


「しかし……条件として提示されているのであれば、その条件を満たす魔物がいないということはないはずです」

「……そうだね。それに、さっきジオンが言ってた堕ちた元亜人も気になるし」

「そうですね。元は人型ですから条件を満たしているかもしれません。

 堕ちた魔物は強力ですのでランクも高いと思いますよ」

「それがせめてもの救いってところかな」

「突然変異種かどうかは……そもそも堕ちること自体が突然変異とは言えますが……。

 恐らく、堕ちただけではだめでしょうね」

「割とぽこぽこ堕ちるものなの?」

「獣魔ならともかく、亜人は滅多なことでは堕ちませんよ。私は見たことがありません」


堕ちた亜人がそもそも希少な上、ユニークでなければならないのか。

希少に希少を重ねたら、それはもういないというのと同義ではないだろうか。

そもそも、堕ちた亜人がテイムできるかもわからない。

とは言え、ジオンの言う通り、条件を満たすモンスターがいないなんてことはないはずだ。

仲間は欲しいけど、気長に行くとしよう。


「ま、そろそろ出ようか。

 店主さん心配してくれてたし、挨拶しに行こう」

「ええ、そうですね」


宿からでて武器屋に向かう。

扉を開けてにっこりと笑って挨拶をする。


「こんにちは、店主さん」

「おう。その様子じゃリベンジは叶ったみてぇだな?

 まったく、大したもんだよ」

「ぎりぎりだったけどね。運が悪かったら駄目だったかも」

「お前さん運良さそうだもんなぁ。

 それにしても、そうか……弐ノ国に行ってしまうんだな」

「転移陣を使えばすぐに戻ってこれるよ」

「おう。たまには顔見せにきてくれや。

 それに兄ちゃんの作った刀も見たいしな」

「うん。自慢しにくるよ。

 それに、暫くはしょっちゅう戻ってくると思うしね」


店主さんは豪快に笑って、俺の頭をくしゃりと撫でた。


「頑張れよ」

「うん! 行ってくる!」


またねと手を振って、武器屋を後にする。

時間を見れば『CoUTime/day11/11:30』だ。

カヴォロは昼頃にって言っていたけど、いるだろうか。


露店広場に訪れて、前にカヴォロが露店を開いていた場所へ行けば、カヴォロを見つけることができた。

先日よりは落ち着いたようだが、まだまだ人気のようだ。

並ばなくていいと言っていたから、少しの申し訳なさを感じながら露店へと近づいて行く。


「カヴォロ、今大丈夫?」

「ああ……大丈夫だ」


カヴォロは俺の姿を確認すると一考し、『休憩中』と書かれた木の板を取り出して露店に置いた。

これは、大丈夫ということになるのだろうか。

ちらりと並んでいるプレイヤー達の様子を伺うと不満そうではないので安心する。


視線をカヴォロに戻し口を開こうとすると、カヴォロが人差し指を口に当てて見せるので口を閉じた。

俺に近付いて内緒話をするように小さな声で話し始める。


「倒しているやつがほとんどいないから、大っぴらに話していては妬まれる可能性がある」

「なるほど」


これだけ人気な露店だと妬む人もいるのだろう。

そのうち誰でも手に入れる事ができるようになるとは言え、現状希少なお肉なわけだし。

わかったと頷いて、小さな声で会話する。


「ギルドで聞いた値段は約500CZ……ただ、10個だと依頼で大体6000CZだった。

 2倍で12,000CZでいいか?」

「そんなに?」

「言っておくが上乗せはしても値引きはさせないぞ。

 露店に出せばもっと高く売れるんだからな。

 俺はライの善意にだいぶ甘えさせてもらってるんだ」

「んん……カヴォロがそう言うならそれで」


こくりと頷いたカヴォロがウィンドウを操作した後に現れたウィンドウに《ヴァイオレントラビットの肉》を10個並べる。

取引額の確認をして、『取引完了』アイコンを押す。


「助かった。ありがとう。

 また食べに来てくれ。材料が増えたら色々作れるだろうし」

「うん。期待してる。

 それじゃあ忙しそうだし、そろそろ行くね」

「ああ。またゆっくり話そう」


その言葉に笑って頷いて、その場を離れて冒険者ギルドに向かう。

歩いて行ってもいいが、早く行きたいので転移陣を利用するつもりだ。

ついでに受付でヴァイオレントラビットの戦利品を売っておく。

残念ながら納品依頼には数が足りなかった。


転移陣を利用してアリーズ街へひとっ飛び。

あっという間にアリーズ街の冒険者ギルドである。


冒険者ギルドから出るとすぐ近くに雑貨店があったので地図を購入するために中へ入る。

そう言えば雑貨店に来るのは初めてだ。


「地図ありますか?」

「はいはい。弐ノ国の地図でいいかしら?」


ふわふわと笑う優しそうなお姉さんがカウンターから答えてくれる。

俺はそれに頷いてカウンターへと寄って行く。


「地図は2,000CZよ」


お金を入力して、承認。

早速アイテムボックスから地図を取り出して、ジオンと一緒に眺める。


「えーと……ここが、この街だね。鉱石は……」

「ふむ。洞窟ですね? どこでしょう」


山脈の名前は書いてあるが、洞窟の名前は見当たらない。

山に行ったらあるだろうか。


「あら、洞窟に行きたいの? 地図を見せて」


ありがたいことに教えてくれるようだ。

カウンターに地図を広げて、3人で地図を覗き込む。


「鉱石が欲しいのよね? それならここから一番近いのはここね」


お姉さんが指差す場所に視線を向ける。

地図で見る感じそんなに遠くはなさそうだ。


「ここからならそうね……歩いて1、2時間ってとこかしら。

 鉱山の近く、この辺りね。村があるから寄ってみたらいいわ」

「ありがとう、お姉さん。

 あ、もう1つ。トーラス街ってどこかな?」

「トーラス街はここ。弐ノ国で一番大きな海の街よ。

 そうそう、弐ノ国は魚介が名産だから是非食べてみてね」

「これからお昼ご飯だから、食べてみるよ」

「あら、それじゃあここの隣のレストランに行ってみて? 美味しいわよ」


お姉さんにお礼を告げて、店から出てそのまま隣のレストランに入る。

席に座り、メニューを眺めて魚介のパスタを注文する。

俺はペペロンチーノ、ジオンはトマトソースだ。


個人的にはニンニク風味のバター醤油のパスタが好きだけど、そう言えば醤油で味付けされた料理は見かけていない。

トーラス街が海の街だと言っていたから、魚醤はあるかもしれない。


運ばれてきたパスタを食べる。

ぷりぷりのいかに大きな貝。程よいにんにくの風味が口の中に広がる。

ごろごろと乗っている魚介は嫌な魚介臭さは一切なく、しっかりと味付けがされているため飽きることもない。

文句なしに美味しい。


材料がない今、プレイヤーが作れる料理の種類は凄く少ない。

そのうちこのパスタよりも美味しい料理が増えてくるだろうが、材料はもちろん、スキルレベルも必要だろう。

カヴォロの串焼きは間違いなく美味しかった。カヴォロの他の料理もきっと凄く美味しいだろう。

料理に使えそうなものは積極的にカヴォロに持って行ってあげよう。

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