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day98 イベント準備②

「65の武器、2振できましたよ。

 大剣とショートソードで間違いありませんか?」

「わ、ありがとうございます!

 カヴォロさん、アクセサリー代と両方いけます?」

「恐らく大丈夫だとは思うが……武器の性能によるな」


ジオンから2本の武器を受け取り、鑑定して……頷く。


「ユニークだね」

「だろうな」


どちらも氷晶属性+12と冷気+9の効果付与が付いている。

秋夜さんのデスサイズが黒炎属性+10と麻痺+7だったので、みけねこさんとジャスパーさんの武器のほうが少し上だ。

いつも売りにだしている武器の効果付与は、大体全部で10くらいなので、俺とジオンの武器を除くと一番数値が高い。


イベントが終わったら、この数値で売りに出そうかな。

イベントの期間中にちょっと有利な武器を持つくらいは許してもらえるだろう。


「なるほど……武器だとそんなことになるんすねぇ……。

 ちなみに……ライさん達の武器って」

「全部魔法鉱石だね。効果付与の数値は……まぁ、100には届いてないね」

「……それ、世に出さないでくださいね……。

 お金の件は、本人達に聞いてみたが良いっすね」


ベルデさんはウィンドウの上で指を動かし、少し経ってから俺へ視線を移した。


「7倍、出すそうっす。もっと高くても良いみたいっすけど」

「いやいや、7倍で……7倍でも、結構な額だから……」

「ライさん達の装備にはその価値があるっすからね。

 でかい額受け取るのに抵抗があるんすねぇ」

「作った本人が受け取るなら、凄いなーって思うだけなんだけど、受け取るのが俺だから、申し訳なくなっちゃうんだよね」

「魔道具でも同じだったろ」

「いや……俺はスキルレベルが高いわけじゃないから……」


俺はスキルレベルも低いし、作れる人がいないってだけだ。

今回、サポート枠を通じて、皆もこの世界の人達と仲良くなって、これまで知らなかった事や、新たなスキルを覚える機会が増えるだろう。


「想像以上の武器が手に入るって喜んでるっすよ。

 65の武器は、これまで売られてなかったですしね」

「あ、そっか。45までのしか出してないね。

 一応……1人には、売ってるんだけど」

「あー秋夜さんっすか? 仲良いっすもんね」

「仲良くはない、けど……お世話にはなってるね」

「あの人、面倒見良いらしいっすもんねぇ。そうは見えないすけど。

 えーと、7倍……大剣が651,700CZ、ショートソードが557,200CZか……カヴォロさん」

「ああ、足りる」


一体いくら持ってきているのだろうか。

取引ウィンドウを開いて、取引を完了する。


「突然頼んだのに、ありがとうございます」

「ううん。生産頑張る隊の人達に頼りっぱなしだから、お手伝いできて良かったよ」


イベントまでの期間、仲間を増やす為にずっと動いていたので、参加の申請くらいしかしていない。

申請する必要があると顔合わせの時にシルトさんから聞いて、クランウィンドウから申請しただけだけど。

同盟クランの申請もその時にしておいた。


「ライ、ガヴィン呼んできて良い?」

「良いよ。何かあった?」

「いや、素材の事話しておきたくて」


鋳型の元にする石工品は全て作り終えたらしい。


「俺も付いて行く?」

「はは、子供じゃないんだから、大丈夫だよ。行ってくる」

「行ってらっしゃい」


どんな素材を持ち込むか話したいのだろう。

中でも素材は手に入るけど、集める時間や欲しい素材がない可能性、足りなくなる可能性を考えると、持ち込んだほうが安心だ。

特に石工の素材は、あちこち探し回らなきゃいけないだろうし。


「35の指輪と腕輪って、カヴォロが装備すんのか?」

「菖蒲さんかカヴォロさんで分ける感じっすね」

「なら、指輪は菖蒲な! 細くしとこ」


指のサイズなんかは装備するとぴったりになるので、アームの幅を変えるのだろう。

菖蒲さんは太めの指輪より、細い指輪のほうが似合いそうだ。


「んで、カヴォロが腕輪な! キャベツキャベツ……」

「それにもキャベツを彫るのか……」


ぱらりとシンボルが描かれた本のページを捲る。

どちらのシンボルのほうが良いだろうか。エルムさんなら、どちらを使うかな。

テスト用に両方用意しておけば間違いないだろう。


「ライ君、どうかしら? お財布を作ってみたのだけれど」

「綺麗な藍色だね。染料で染めたの?」

「ええ、そうよ。ジオン君に作ったの」

「私ですか? なるほど、良い財布ですね。薄くて軽い」

「ふふ。ジオン君は懐にお金を入れていると言っていたから、邪魔にならないようにしてみたの」

「ありがとうございます。大切に使わせていただきますね」

「皆のお財布、作るわね。ライ君は必要ないかしら?」

「んー……お財布は必要ないけど、鞄が欲しいな。

 今使ってる鞄、色々詰め込んでたから、結構ボロボロになっちゃってて」

「あら、それじゃあ、鞄を作るわね」


魔石をあるだけ詰め込んでた時期もあったので、形も崩れている。

新しい鞄も楽しみだ。


「んー……大丈夫、かな」


この魔法陣はこれで良いだろう。

2種類用意したし、多分、大丈夫だ。後は中でテストして、完成させるだけだ。


次の魔法陣を描いていると、ガヴィンさんを連れてフェルダが帰ってきた。

いつも通りのガヴィンさんの横で、フェルダがげんなりとした顔をしている。


「お邪魔します。元気?」

「ガヴィンさんこんにちは。元気だよ。

 ……フェルダは、どうしたの?」

「ガヴィンに、転移陣代払わさせられた」

「あはは、お兄ちゃんだ」

「石工の村はまぁ、近いから安い方だけど……」


俺達は1,000CZだけど、この世界の人達は違う。

ちなみに、従魔になると1,000CZで使用できるようになるらしい。

その代わり、俺が行ける場所にしか行けなくなるみたいだけど。


フェルダにお金を渡しておかないと。イリシアにも。

さすがに弟であるガヴィンさんの前で渡すのはやめておこう。後で忘れずに渡さなければ。


この際、家にいくらか置いておくべきだろうか。

そう言えば、銀行の口座を共用で使えるシステムはいつ導入されるのだろう。


フェルダはガヴィンさんと2階の収納部屋へと向かって行った。

俺も続きをしなければ。


俺の隣にはカヴォロが座っていて、俺が描く魔法陣をぼんやりと眺めている。

ベルデさんはリーノの作業、いわいさんはイリシアの作業を見学している。

作業ばかりで碌なおもてなしができていないのが申し訳ない。


黙々と羽ペンを動かす。

時折、ベルデさんやいわいさんが質問している声が聞こえてくる。


「おっし! 終わり! 全部できたぜ!」


手を止めて、頭を上げる。

ベルデさん達に渡す全てのアクセサリーの加工が終わったようだ。

カヴォロと共に、リーノの作業机まで向かう。


「凄い。全然違うアクセサリーになってる」

「削ったり、繋げたり、ちょっと歪ませたりしただけだけど、結構変わるだろ?」


見た目はがらりと変わっているけれど、数値は変わっていないらしい。

値段も、先程確認した時から変わっていないみたいだ。


「金だけ渡すぞ」

「了解」


カヴォロからお金を受け取り、アクセサリーと《魔除けの短剣》は、ベルデさんが直接アイテムボックスに入れて、取引完了だ。


「俺は、装備渡しに行きますね。売る分も早速シルトさんの露店で出してもらうんで。

 明日……じゃ、なくて、明々後日っすね。明々後日は、朝……9時頃とかって家にいます?」

「ん……うん、早めにくるよ」

「助かります。それじゃ、9時頃に荷物を取りにきますね」

「ありがとう」

「それじゃ、お邪魔しました。

 いわいさん、あんま長居しちゃだめっすよー!」


ベルデさんの言葉に、いわいさんはひらりと手を振るだけで答えた。

視線はイリシアが作業する手に向けたままだ。夢中らしい。


1つ2つと魔法陣を描いていく。

描き終わった魔法陣をもう1度確認して、次の魔法陣に取り掛かる。


「ライさん、刀が出来ましたよ」

「わぁ、ジオン、ありがとう。お疲れ様。

 氷晶属性にしたんだね」

「はい。……最後まで迷いましたが、相性を取りました」


黒炎属性の高い数値を取るか、氷晶魔刀術との相性を取るか……最終的に、《氷晶玉鋼》で作る事にしたらしい。

装飾にも氷晶属性の付いた《氷晶銀》を使っているようだ。


『如法暗夜☆4 攻撃力:77

 装備条件

 Lv50/STR10/INT49

 効果付与

 黒炎属性+65

 麻痺+15』


『虎尾春氷☆4 攻撃力:91

 装備条件

 Lv40/STR33/INT41

 効果付与

 氷晶属性+54

 睡眠+9』


「最高だね。さすがジオン。お祭りで使うのが楽しみだよ」

「ふふ、そうですね」


《黒炎玉鋼》を使うより数値が低くなるけど、使っている鉱石の数が違うので、俺の刀の黒炎属性とそこまで大きな差があるわけではない。

ちなみに、全てを《黒炎玉鋼》で作っていた場合の数値は80くらいになるみたいだ。とんでもないなと思う。

30の差と相性、どちらが攻撃力が上なのだろう。


黒から赤にグラデーションした鞘を撫でて、にんまりと笑う。

新しい装備に心が躍る。これを使って戦うのが楽しみだ。


鞘や柄、鍔は、刀身が出来ると同時に刀身に合った物が現れるらしい。ジオン曰く鍛冶の妖精の力なのだとか。

一応、木工スキル等の他の生産スキルでも作ることが出来るみたいだけど、あまり作らないようだ。

鍔だけはリーノが作った鍔に取り換えている。

取り換えた場合、鍛冶の妖精の力で作られた部位はエフェクトと共に消えて行ってしまう。魔力で出来ているとか、そういう感じなのかな。


「ライ、夕飯にしよう。腹が減った」

「わ、もうこんな時間か」


時間を確認すると、夕飯には遅い時間が表示されていた。

まだまだ全ての魔法陣を描き終えていない。


全員でカヴォロのご飯を食べた後、カヴォロといわいさん、ガヴィンさんは帰って行った。

ちなみに、先程渡したピアスと《魔除けの短剣》4本は既に売れてしまったらしい。

お金はイベントの時に貰う事になった。


カヴォロ達が帰った後も、魔法陣を描く作業を進める。

シアとレヴは予定していた8割の鋳型を作り終えていたようだったので、先に寝て貰った。

明日と俺のいない1日で予定していた鋳型は全て作り終えるだろう。


シアとレヴが眠って暫く経った頃、持ち込む予定のアイテムを粗方整理し終えたジオンとフェルダも、少しだけ申し訳なさそうな顔をした後、2階に上がって行った。

その後、全員分のお財布と俺の鞄を作り終えたイリシアも、おやすみなさいと言葉を残して、2階に上がって行った。


作業場に残った俺とリーノは黙々と作業を続け、リーノが先に作業を止めた。


「おっし、とりあえず、ライのアクセは出来たぜ!」

「お疲れ様、リーノ。ありがとう」

「後は明日と明後日で作るかなー」

「うん、無理しないで寝てね」


完成したピアスと腕輪、指輪を鑑定する。

全てユニークアクセサリーだ。魔力回復の宝石と耐毒の鉱石が使われている。

《リコリス》、《スプレケリア》、《アマリリス》……花の名前だろうか。


「もしかして、リーノが俺の装備に細工してくれてるのって花なの?」

「おう、そうだぜ! 前にジオンが、鬼人の街には彼岸花っていう花がたくさん咲いてるって言ってたからなー」

「なるほど、彼岸花だったんだね」

「お、見た事あるのか? 洞窟じゃ咲いてなかったからなぁ。

 真っ赤で綺麗な花だよな。その話聞いた後、図鑑で見て、これにしようって思ったんだ」

「綺麗だよね。1本でも綺麗だけど、たくさん咲いてると、圧巻なんだよ」


少し不吉な気もするけれど、見ている分には好きな花だ。

すっと幾本もの線が上にくるりと彫られている、繊細な装飾だ。

ユニークアクセサリーの名前になった花はヒガンバナ科の花の名前だったりするのかな。


早速装備してリーノに見せると、リーノは似合ってるとニカリと笑って言ってくれた。


「んじゃ、俺寝るけど……ライはまだ作業するのか?」

「うん、もう少しだけ。そんなに長くはしないけど」

「そっか。無理すんなよ。おやすみ」

「おやすみなさい」


トントンとリーノが階段を登る足音を聞いてから、また羽ペンを動かし始める。


羽ペンが羊皮紙の上を動く音と本のページを捲る音だけが耳に届く。

ログアウトするまでに終わらせないと。

生産頑張る隊の人達が考えてくれた魔道具の魔法陣は中で描いても良いけれど、生産道具の魔法陣は全て書き終えてからイベントに挑みたい。


一度深呼吸をして、気合を入れる。

あと1つか2つは頑張ろう。

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