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day98 イベント準備①

「皮自体にも色が付けられるんですか!? 布ではなく!?」

「ええ、染料があれば出来るわよ。

 布と比べると少し大変だから、そのまま使う事の方が多いけれど、ちょっとしたアクセントに色を変えたいって時に染める事もあるわね」

「なるほど……」

「ライ君、宝石を使っても良いかしら?」

「もちろん。宝石で染料が出来るの?」

「ええ、そうよ。他にも植物なんかが使えるわ」

「あ、だったらこれ使える?

 《白銀草》っていう植物なんだけど」

「あら……ふふ、懐かしいわね。

 ええ、使えるわ。そうね……両方使いましょうか」


あの後やってきたいわいさんに、いくつかの道具を借りて、イリシアは早速革細工を始めた。

フェルダがその道具を見て、石工で形を作り、それをシアとレヴが鋳型にする。

この鋳型を使っていわいさんの道具も作れるだろう。作るのは中に入ってからだけど。

俺達では作れない道具、例えば裁縫で使う機織り機なんかは、木工で作れるそうなのでベルデさんに頼んでおいた。


「待ってください、今の、もう一度見せてください」

「あら、ごめんなさい。まずは……」


作業を見学しているいわいさんから質問をされる度に、イリシアは嬉しそうに顔を綻ばせて答えている。


「あ、そうだ。ベルデさん。イリシアの杖も作って貰えるかな?」

「良いっすよ。えーと……壁に立てかけてある杖と同じサイズで良いんすか?」

「うん。仲間になったばかりだから、レベル1でも装備できる杖が良いんだけど……」

「なるほど……レベル1の杖は作ったことないっすけど……素材が素材なんで、街で売ってる杖より強い杖にはなるんじゃないかと。

 それに、ライさん達に生産道具作って貰えるんで、間違いなく強い杖が出来るっすよ」

「ありがとう。楽しみにしてるね。

 残しておいた《翡翠聖木の丸太》も渡しておくね。お祭りの時のほうが良い?」

「や、纏めて持って行ったが良いんで、貰いますよ。

 どんな杖が出来るか楽しみっすね」


前に渡した《翡翠聖木の丸太》はまだ使っていないそうだ。

道具を新調してから使うつもりだと言っていた。


「そう言えば、キラーツリーって魔物が、木材と樹皮を落としたんだけど、木工で使えるかな?」

「キラーツリー? 初めて聞く魔物っすね。参ノ国の魔物っすか?」

「うん、そうだよ。行くのに条件が必要な場所にあるから、珍しいかも」

「へぇ~《翡翠聖木の丸太》もそこで?」

「そうそう。伐採スキルを持ってないから、集められてはないんだけど」

「あー……木工持ってないと木を集めることないっすもんねぇ。

 キラーツリー? の、素材も使わせて欲しいっす」

「うん、持ってくるね」


魔法陣を描くのを中断して、2階へと上がる。

収納部屋に置いておいたキラーツリーの素材と《翡翠聖木の丸太》をアイテムボックスに入れて、作業場に戻る。


「お金は前回と同じで良いっすか?」

「うん、良いよ。あ、でも……使う用途によるかな。

 もしそれで、お祭りの時の兵士さん達の装備を作るなら、お金はいらないよ」

「なるほど……じゃ、その時はそうさせてもらいます」


ウィンドウを開いて、全て並べる。


他に渡す物は……あ、ぐんぐんさんに種……いや、イリシアが農業スキルを持っていた。

糸や布を作るのに綿や麻が必要らしいので、一緒に育てられる。

そうなると……やっぱりテラ街かな。


「ピアスできたぜ! 10個!」

「全員分作ったのか……?」

「おう! これまで売ってきたピアスより、使ってる魔法鉱石の数が1個多いから、付与の数値も増えてるぜ!」

「わー……! なんか、本当、申し訳ないっす……」

「兵士さんだけじゃなく、生産頑張る隊の皆のアクセサリーも作る予定だったから、気にしないで」

「俺、細工好きだからさー。色んなピアス作れて楽しかったぜ!」

「そうっすか……や、ありがとうございます」

「俺達の装備と、道具は金を受け取ってもらうぞ。

 イベントが終わった後も使うからな」

「えっ……う、うん。えっと……確認してみるね」


25が6個と35が2個、65が2個、合計10個のピアスだ。

使っている鉱石の量は一緒だけど、数値が違うので、値段も変わる。

オークションウィンドウで、全てのピアスを確認して、さすがリーノだなと感心する。


「全部ユニークだよ」

「ユニーク!? 全部!?」

「うん。リーノが頑張ってくれたよ」

「へへ、やっぱ、誰かの為に作るのって楽しいよなー!」


リーノの言葉を聞いたカヴォロは、リーノに聞こえないように溜息を吐いた。

最初の頃は道具の性能や素材の品質が低かったのか、理由はわからないけど、ここまでユニークアクセサリーはできていなかった。

金と銀を手に入れてから、ユニークが出来るようになった気がする。


「それで? 値段は?」

「えーと……25が26,000CZで、35が30,800CZ。

 65は38,800CZが買取価格みたいだね」


ユニークだからって性能が高いというわけじゃないと、エルムさんやフェルダも言っていたけど、リーノの作るユニークアクセサリーはしっかり性能も高い。

その分値段も上がっている。同じ性能でユニークじゃなかったとしたら……多分、6,000CZくらい差があるだろうか。

あくまで買取価格の話なので、街で売られているとしたら18,000CZ以上の差が出るだろう。


「10個……全部ユニーク……全部……?」

「知り合いだとユニークになるらしい」

「知ってる相手だと気合が入るからね。気合でユニークが出来るのかって言われるとわかんないけど。

 でも、俺はともかく、皆は一流の腕を持っているから、最後は気持ちなんじゃないかなって思う」


尤を持つ皆は、作ろうと思えば強い装備が作れる。

だったら、ユニークになるかならないかの最後の要は、やっぱり心なのではないだろうか。


「全部5倍……や、5倍で良いんすかねぇ……。

 買取価格から考えるに、ライさんのアクセって大体6倍以上で落札されてるっすよね?」

「よく知ってるね」

「生産職なんで、露店とかオークションとかチェックしてるんすよ」

「なるほど」


商売人はすごい。とりあえず4倍で出品している俺とは大違いだ。


「あの、えっと……あんまり高くなると、申し訳なさが……」

「やー……あー、それじゃ、5倍にちょっと色付けて、全部で150万CZで、お願いします」

「たっか。やっぱり、3倍とか4倍で……」

「最近、店に食材を置いて行くやつがいるんだが」

「……珍しいこともあるんだね」

「身に覚えは?」

「あります」

「ライが置いて逃げた食材の分も合わせて、もっと値段を吊り上げても良いんだぞ」

「……150万でお願いします……」

「カヴォロさん、交渉上手っすね」

「ライ相手ならな。押せばなんとかなる」


それはカヴォロも同じな気がする。

今回は……いや、今回も、か。黙って食材を置いて逃げていたせいで、分が悪い。


取引ウィンドウが開き、150万CZが入力される。

生産職の人は、皆大金を持ち歩いているのだろうか。


一気に増えた所持金にぱちりと瞬く。

イベントではデスペナルティでお金が減る事はないけど、大金を持ち歩く度胸は俺にはないので、ログアウトするまでに預けておかなければ。


「うーん……ユニークの装備って、あんまり売られてないのかな」

「全くないわけじゃないっすけどね。

 俺も2回、作れた時はあったけど……なんで出来たのかはさっぱり」

「今付けてるアクセサリーを全部オークションに出そうと思ってるんだけど」

「それも、全部ユニークなんすか?」

「うん」

「全部って言うと……」

「えーと……シアとレヴのピアスはそのままかな。

 イリシア以外……全部で16個だね」

「16個のユニークアクセサリーを一気に放出する気っすか!?」

「うん……どうなんだろうって。

 あと、魔道具も売るつもりだよ」


《光魔石》の残りで作った《魔除けの短剣》4本だ。

《彩光魔石》を使った《魔除けの短剣》は2本作って1本は俺達の分、もう1本は売ろうと思っていたけど、秋夜さんの手に渡っている。


「……2つ、お願いがあるんすけど」

「良いよ」

「内容聞いてから了承してくれません!?

 あー……そのアクセ、俺らが使って良いっすか?

 使えるやつあるなら、っすけど」

「うん、構わないよ。ピアス以外だよね」


作って貰った時の俺達のレベルに合わせたアクセサリーなので、一番高い装備条件で35、低いのが5だ。

指輪が6個、腕輪が5個、ネックレスが1個。ちなみにピアスは4個ある。


「今外すよ。皆も良い?」


俺の言葉に頷いた皆は、リーノに作って貰ったアクセサリーを外して、俺の元へ持ってきてくれた。


「結局、ライ達が付けてたアクセサリーだとわからないか?」

「んー……そうなんすよねぇ」

「なるほど、そういう……リーノ、宝石変えてくれる?」

「んあー良いけどさ、俺、せっかくなら全員に合ったアクセサリー作りたかったなぁ」

「やめてくれ……滅多に狩りなんてしないんだから、宝の持ち腐れだ」

「んじゃ、せめて少しは弄らせてくれよ」


銀の洞窟で乱獲した宝石はまだまだある。兄ちゃんが凝固してくれた魔法宝石もたっぷりだ。

兄ちゃんは銃を作る時にしか使わないからと言うけど、俺ばかりが得している。

せめてイベント前に兄ちゃんにアクセサリーをプレゼントしたいところだ。

こそりと兄ちゃんのアクセサリーも作って欲しいとリーノに耳打ちすると、リーノは小さく頷いて了承してくれた。


宝石のことはカヴォロ達には一切話していない。

魔法宝石で数値が上がっているかどうかなんて分からないし、薄らと色が変わっている魔法鉱石と違い、魔法宝石は見た目では分からない。リーノは色が違うと言うけれど、さっぱりだ。


「カヴォロさん、お金あります?

 さっきので手持ちなくなっちゃったんで、立て替えてもらえません?」

「ああ、わかった」

「俺達が使ってたやつだし、安くするよ!

 買取価格でも良いし、2倍とかでも」

「3倍。街で売られる値段は払う」

「む……わかった」


オークションウィンドウで買取価格をピアス以外のアクセサリーを全て確認していく。

指輪と腕輪とネックレスだ。使っている鉱石の量が多いからか、腕輪が一番高い。


「全部で……1,051,500CZだね」

「ああ、わかった」

「ねぇ、カヴォロ。どうしてそんな大金を持ち歩いてるの……?」

「預けてないだけだ」

「そうなんだろうけど……」

「まぁ……何渡してくるかわからないから、ライに会う時は多めに持つようにしている」

「なるほどぉ……」


さすがに100万以上もする何かを押し付けたりはしない……と、思ったけど、石窯とカトラリー、冷蔵庫で400万を越えた前科があるので何も言えない。


確認したアクセサリーはリーノに渡しておく。

宝石の色を変えるだけでも、別物に見えるだろう。それ以外にも少し手を加えるみたいだし。


「やー……俺ももっと持ってきてたら良かったっすね……。

 カヴォロさん、すみません。すぐ返します。

 それと……ピアスと魔道具、俺らの誰かの露店で売って良いっすか?」

「良いけど……面倒じゃない?」

「全く。誰かしら露店開いてるんで、そこに一緒に並べるだけっすよ」

「それじゃあ……お願いします」

「んーロゼさんとこで売ってた時って、お金どうしてたんすか?」

「渡した装備が全部売れた時に貰ってたよ」

「俺らもそれで良いっすか?

 まぁ、レンさんらと比べると信用はないでしょうけど……」

「そんな事ないよ。色々、俺の事で迷惑かけてるし……有難い限りだよ」


机の引き出しに入れておいた《魔除けの短剣》4本を取り出し、ベルデさんに渡す。

ピアスはリーノに手を加えてもらってからだ。


「これは……?」

「《魔除けの短剣》だよ。地面に刺したら、簡易安全地帯ができるよ。

 この短剣は岩山脈のワイバーンまで対応してる」


最初に作った時と魔法陣は変えていない。

以前と比べるとスキルレベルも上がっていたし、変えていたらワイバーン以上の敵にも対応できただろうけど、まぁ良いかとそのまま作った。


「ワイバーン!? え、じゃあ、これ使ったら、岩山脈の鉱石取れるってことっすか?」

「うん、その為に作ったんだ」

「なるほど……強いとこの素材が集められる……。

 これ、俺が買っても良いっすか?」

「もちろん。ああでも、あと1本だけなら、もっと効果が高いやつも作れるよ」


《彩光魔石》を使う短剣だ。

進化属性の魔石を使っている上に、魔法陣も変えてあるので、凄く効果が高いはずだ。多分。


「や、充分っすよ! あんま強いとこ行くと、刺すまでに事故りそうですし。

 俺この辺りで狩りできるようなレベルじゃないっすからね。

 戦闘職の人らに連れてきてもらっただけなんで」

「生産してると、レベル上げできないもんね」

「正直、俺らじゃ壱ノ国のヌシすら倒せる自信ないっす」

「まぁ……俺もライ達がほとんど倒していたからな」

「あ、なるほど。カヴォロさんが防衛戦参加してたのって、ライさんときてたからなんすね」

「ああ。早く店の準備がしたいからと連れてきてもらった。

 あんな事が起きるなんて想像もしていなかったが」

「そうだねぇ……あはは」


俺がフラグを踏んだみたいだとは言えずに、誤魔化すように笑って、チョークを手に取る。

さぁ、魔法陣を描かなければ。

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