day7 串焼きブーム?
兄ちゃんの作ったパスタを食べてログイン。
ロゼさんの事を伝えると何やら楽しそうに笑っていた。
あの後、ロゼさんの露店を離れてからは、ギルドに行っていくつか討伐依頼を受けてひたすら狩りをした。
時計の針が真上を過ぎても狩りを続けたお陰でレベルは4上がった。ジオンは2。
依頼のためにホーンラビットも少し狩ったけど、1回分の依頼達成分を倒した後はポイズンラビット、夜になったらワイルドウルフ。
途中からは昼にポイズンラビットが出現するポイントで『ブラックボア』という猪のモンスターを倒した。
やっぱり強いモンスターのほうがレベルが上がりやすい。
STRは1上がった。見た目に変化はない。
達成報酬と売却で所持金は宿泊代を引いて24,233CZとなった。
売却だけしていた時と違い達成報酬のお陰でお金が貯まりやすい。
持っていたポーションは《初心者用マナポーション》以外なくなってしまったけれど、収支はプラスだ。
遅くまで狩りをしていたため、宿屋の食堂は空いておらず、近くの酒場で夕食を取ることにした。
値段は2人分で1,000CZとこれまでに比べてちょっと高かったけど、美味しかった。
鑑定してみると☆5。美味しいはずだ。
「店主さん、角持ってきたよ」
「よう、早速か。ありがとうな」
「いくつ渡したらいいのかな? 一応、13個あるけど」
「なかなか取れねぇ素材なのにすげぇな」
「たくさん倒したからね」
角はレアアイテムなのだろう。
他の《ポイズンラビットの爪》や《ポイズンラビットの肉》と比べるとほとんど出ない。
「あればあるだけいい。全部貰えるか?」
「もちろん。そのために持ってきたんだからね」
「そっちの兄ちゃんは使わねぇのか?」
店主さんの視線がジオンへと移る。
言われてみればそうだ。
武器で使えるって言ってたからジオンも使うのではないだろうか。
「そういえば、そうですね。忘れてました」
「ジオンってたまに抜けてるよね」
「まさか。そんなことはありませんよ。
ふむ……ライさん、3個は取っておいていただいても?」
「いいよ。店主さんもいい?」
「当然だ。
こっちからしちゃ達成報酬もねぇのに回してくれるってだけで万々歳だからな」
取引ウィンドウに10個の《ポイズンラビットの角》を並べる。
「ギルドで普通に売却するよりは、ちょっとだけ上乗せしておく。
まぁ、達成報酬にゃ全然届かねぇけどな」
「気にしなくていいのに」
「そういうわけにはいかねぇよ。
希少とは言えこの辺りで出るモンスターだから買取額は安い。
しかし、その割に需要と供給が追い付いてねぇってんで、達成報酬が高くなってんだ」
「ふぅん。需要と供給、ね」
「特に今は異世界の旅人が集まってきてるからな。
異世界のやつらは自分達で武器やら装備やらアイテムやら作るだろ?
そうなると、素材が俺達にゃ回ってきにくくなるわけだ」
なるほど。俺は生産スキルを持ってないし、ジオンは忘れてたみたいだから素材は全部売ってたけれど、生産スキルを持っている人たちは売らずに自分で使うだろう。
俺も恐らく、ジオンが使うやつは売らなくなってしまうだろうし。
時間が経てばみんな次の国に移動するだろうから、元に戻るとは思うけれど。
「使わなくても、異世界の旅人同士で取引してることが多いみてぇだしな。
あぁそうだ。異世界の旅人相手に売りゃもっと良い値段になるんじゃねぇか?」
「どうかな。まぁ、売る相手もいないし……」
「そうか……まぁ、兄ちゃんがいいならいいんだけどよ」
「はは。気にしすぎだよ店主さん。
店主さんの頼みを俺が応えないわけないでしょう?」
「おっ……なんだ兄ちゃん、口説いてんのか?」
「そんなわけないでしょ。何言ってるの店主さん」
本当に、何を言ってるんだろうか。
じっとりとした目で店主さんを見れば、けらけらと笑っている。
「ありがとな。兄貴も喜ぶ」
2,000CZを受け取って所持金は26,233CZになった。
「今日もポイズンラビットを狩ると思うけど、また持ってくる?」
「いんや。思ってた以上に持って来てもらえたからな。
後は兄ちゃんが使うなり、異世界の旅人と取引するなり、依頼達成するなりしてくれよ」
「そっか。わかった。
あ、ポーションと解毒ポーション5個ずつ貰える?」
「おう。3,750CZだな。毎度あり。
ああそうだ。弐ノ国に行った時は兄貴にも顔見せてやってくれねぇか?」
「店主さんのお兄さんか。俺も会ってみたいな」
「はっはっは。そりゃよかった。
次に来た時に手紙渡すから、それ持って会いに行ってくれ。
兄貴にも言っておくからよ」
「ありがとう、店主さん。
それじゃあまたね」
ギルドへ行って依頼を受ける。
最初に会った受付の女性はやはり夜勤のようで、夜に行った時にしか会うことはできなかった。
昼はプレイヤーも多く、並ぶ必要があるため、順番に空いている受付に行くことになるが、夜はその女性に対応してもらっている。
今日はポイズンラビットとブラックボアの討伐依頼だけでいいかな。
受付で依頼を受領して、次は露店広場に食べ物を探しに向かう。
ちなみに、今日の朝ご飯は宿屋の食堂で2人分400CZを払って食べた。
俺がいない間、ジオンはそこで朝食を取っていたそうだ。
味は夕食と同じで可もなく不可もなく。至って普通だった。
「あの店大繁盛だね。凄い並んでる」
「そうですね……おや? あれは昨日買った串焼きの露店では?」
「そうなんだ? 美味しかったからねぇ」
今日のお昼は何にしようかなと食べ物の置いてある露店を眺めていると、串焼きを売っている露店が多いことに気がついた。
この辺りで入手できる食材が限られているからだろうか。
どうせなら違うものが食べてみたいけれど……。
「街の市場に行きますか?
外で食べやすいものもたくさんありましたよ」
「そうなんだ? それじゃあ行ってみよう」
ジオンの言葉に頷いて、市場へ向かう。
ボリュームたっぷりのサンドイッチがあったのでそれを2つ買って、フィールドへ向かう。
モンスターの攻撃を受け流すのも慣れてきたように感じる。
ジオンの足を引っ張ることも最初に比べてなくなってきているように思う。
まぁ、攻撃力が低いのは相変わらずだけれど、そこは技術でカバーするしかない。
狩りに集中しながら、時折ジオンの姿を眺めて、まだまだ頑張らなければと気合を入れ直して狩りを続けていく。
辺りが暗くなりポイズンラビットが出現しなくなった時、解毒ポーションが2つ残っていることに技術の向上を実感できた。
それからは、ブラックボアをジオンと協力しながら倒していく。
猛スピードで突っ込んでくるだけという単調な攻撃しかしてこないため、受け流すのは無理だが回避はしやすい。
ただ、HPが非常に高く、防御力も高いようで、倒すのに時間がかかるモンスターだ。
俺のレベルが15、そしてジオンのレベルが10になった頃街へと戻り、昨日と同様にギルドで依頼達成と売却をする。
《ポイズンラビットの角》は数個残しておいた。
その後、宿屋の近くの酒場でご飯を食べて宿屋へと向かう。
「ツイン1部屋お願いします」
「了解しました。2名様のご利用で、500CZです」
夕食を取ろうが取るまいが、宿泊代は500CZだ。
そう考えると、500CZの内訳はほとんどが部屋代なのではないだろうか。
そういえば、他のプレイヤーはどうしているんだろう。
他の建物と比べて大きいとは言え、全てのプレイヤーがここに宿泊できるほどの部屋は当然ない。
もしかしたら見た目の通りの広さではなく、中は異空間で広いなんてこともゲームだからあるかもしれないけれど。
「この街って他にも宿屋があるの?」
「ええ、ございますよ。この街は異世界の旅人の皆さんが最初に訪れる場所ですから、宿屋だけでなく、武器屋や防具屋等の商店もあちこちにありますよ」
「そうだったんだ。俺いつも同じ武器屋に行ってるから知らなかったな」
「とは言え、宿は商店と比べて少ないですね。
テイマーの方以外は宿を取らない方も多くいますから」
「あ、そうか。なるほど」
毎日泊まっているからすっかり忘れていたけど、テイマーじゃないなら街でログアウトしてもなんら問題はないんだった。
そう考えるとテイマーってお金がかかるな。
いない間のことはもちろん、テイムモンスターの装備だって必要になる。
まぁ、俺としては、仲間と楽しく冒険できているのだからお金のことなんて気にならないけれど。
受付の女性にお礼を言って、部屋に向かう。
ベッドに横になりながら、ステータスを確認する。
「あ、刀術のスキルが増えてる。【連斬】だって。
ジオン知ってる?」
「えぇ、知ってますよ。
敵を2回強く斬り付けるスキルです」
「へぇ、いいね。あれ? もしかしてジオンも前は使えたの?」
「はい。刀術の頃は使ってましたよ。
進化すると似た技であっても威力が高くなるため制御が難しくなり、扱えなくなってしまうんですよ」
進化したらスキルはなくなってしまうようだ。
恐らく、ジオンも氷晶魔刃斬のレベルが上がったら氷晶魔連斬を取得できるのだろう。
強くなる道のりは長いな。
「明日は、ヴァイオレントラビットにリベンジしようか」
「大丈夫でしょうか? 店主さんはレベル15が数人必要だと言ってましたが」
「きっと大丈夫だよ。ジオンがいるからね。
それに、2人だって数人、でしょう?」
「ふふ、そうですね」
「明日は……昼頃に戻ると思うから、朝ご飯は食べておいてね。
お昼は一緒に食べよう」
「はい。わかりました。
それではまた明日」
「うん。また明日。おやすみ」
「おやすみなさい」
◇
【ミーハー】女子会part21【上等】
531 名無しの旅人
はぁ……今日から暫く串焼きだな……
532 名無しの旅人
お目当ての人物には華麗にスルーされるわ、在庫抱えるわで散々だわ
533 名無しの旅人
串焼き好きなのではとか軽率な考えでした
534 名無しの旅人
串焼きばっかだと思ったらwww
ここかwww
535 名無しの旅人
半分くらいは串焼きが人気そうだからって露店出した商売人魂あるプレイヤーだよ
536 名無しの旅人
残りはミーハー把握
537 名無しの旅人
何も言い返せない
538 名無しの旅人
まぁ商売人達も、まさかあんなにいっぱい出てるとは思わず在庫抱えてんだけどねw
539 名無しの旅人
結局お目当てのあの人は街でサンドイッチ買ってたけど
540 名無しの旅人
そうだよねえええ色々食べたいよねえええ
541 名無しの旅人
やっぱり、βのあの人と同一人物なんじゃないの?
前もはじまりの街でこういうことあったよね?
542 名無しの旅人
そういやあったね。つくね
543 名無しの旅人
序盤で作れるものは少ないからねぇ
544 名無しの旅人
もしかして私達何も学んでない……!?www
545 名無しの旅人
でも、ロゼ嬢はログインしてないって言ってたよ?
546 名無しの旅人
あぁ~あの人ね……ぐぅ……気合入れないと妬んでしまう……
547 名無しの旅人
わかるけどwww
一緒のパーティとか何それ羨ましい
548 名無しの旅人
良い人なのよ!?凄く!!それはもう!!!
549 名無しの旅人
話しかける勇気がなくて離れたとこから見てるだけなのは私達の都合なわけですし!?
550 名無しの旅人
でもちょっぴり羨ましいかなぁ~なんて、ちょっとね!ちょっと!
551 名無しの旅人
実際めちゃくちゃ妬んだ結果迷惑行為でBANされた人いるしねw
552 名無しの旅人
ロゼ嬢と狩りに行ってないし違うんじゃない?
553 名無しの旅人
パーティ解散したとか?
554 名無しの旅人
ガタッ
555 名無しの旅人
ガタタッ
556 名無しの旅人
どうせ話しかける勇気ないんだから諦めろwww
557 名無しの旅人
てか、ロゼ嬢は名前なのに件の人物2人?はあの人呼びなのは何故?
558 名無しの旅人
βのあの人は名前一緒かわかんないし……
559 名無しの旅人
正式オープンのあの人は名前知らないし……
560 名無しの旅人
何スレか前に話しかけたって言ってた人いたよね?
名前聞けた?
561 名無しの旅人
私なんかが話しかけていい相手じゃなかったと全力疾走で逃げましたが?
562 名無しの旅人
すみませんでした
563 名無しの旅人
名前を知ってる人が増えてくると自然に掲示板でも名前出てくるようになるだろうけどね
564 名無しの旅人
そもそも彼ソロプレイヤーだから名前知ってる人いなさそう
知ってるのはロゼ嬢くらいじゃない?話してたし
565 名無しの旅人
ぐぅ……ロゼ嬢の心臓どうなってんの……
あの2人と話して無事なの凄すぎない……?
566 名無しの旅人
だからこそフレンドなんでしょw
正式オープンのあの人ともフレンドなのかは知らないけどw