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救いと希望

20181211 更新しました。

             ※




 3組の生徒と情報交換――というよりも1組からの情報提供がメインとなったが、ポイントの有用性や、魔法やスキルの効果、短い時間の中で俺たちが培ってきた生き抜く為のノウハウを伝えていく。


(……本来は教える必要などないことだが)


 窮地に陥っている3組の状況を考えれば、この程度の情報なら俺たちの優位性を崩すことはないだろう。

 タウン内を見た限りでは生活基盤もまともに揃っていない。

 1組では当たり前のように使うことのできる浴室やトイレもなく、彼らは人間の尊厳すらも失うような生活を強いられているのだろう。

 そのせいもあってか、生徒たちの顔色は優れない。

 いや……根本的な問題として、彼らは理解しているのだろう。

 このままでは、自分たちは生き抜くことすらできないと。

 しかし、


「話を聞いてわかったと思うが、1組は僕たちよりも遥かに多くの情報を持っている。

 打算的な話をするなら、彼らと協力することは必ずクラス全員が生き抜くことに繋がるはずだ」


 彼らにとって、俺たちの存在は間違いなく一縷の希望となっただろう。

 その証拠に、タウン内は喜びの声に包まれたのだから。

 そんな中、


「……待ってくれ。

 もう少しクラスで考える時間を持つべきじゃないかな?

 この協力関係を本当に結ぶべきなのかを」


「わたしも同意見。

 とてもありがたい話ではあるけど……」


 二人の生徒が否定的――いや、本来なら必要であるはずの意見を口にした。

 言葉を濁してはいるが、彼らは何らメリットがない状況で、1組が3組に協力することに違和感を覚えているのだろう。

 この絶望的な状況に置いても冷静な判断力を失っていない者がいる。

 だが、彼らの発言により場の空気は酷く重苦しいものに変化した。

 言葉にされたわけではないが、余計なことを口にするな……と、多くの生徒が苛立ちを感じているのだろう。


「二人の意見はわかるよ。

 でも、九重さんたちは2組に襲われた悠乃たちを救ってくれた。

 打算なんてなく助けてくれたんだ」


 感情に訴えるような矢那瀬の言葉に生徒たちは耳を傾ける。


「そもそも……今の僕たちに選択の余地はないんだ。

 ポイントも少なく、ダンジョンを攻略しなければならないのに、レベルも低い……。

 このままじゃ3組は……」


 対して理論立てて物事を考える傾向になる高無は、冷静にクラスの状況を分析しているからこそ、高無は協力関係を結ぶ必要性を説いた。

 理論と感情。

 二つの視点から説得されては、声を上げられる生徒はいない。

 最初に意見を口にした二人も状況は理解しているのだ。

 その上で――【立場】が上のクラスとは平等な協力関係を築けるはずがないと、そう訴えたかったのだろう。

 平等でない関係性など、本来は成り立つはずがない。

 そして、生き抜く為の代案を出せない以上……彼らの意見はクラスメイトたちに暴論と思われても仕方ないだろう。


「……わかった。

 余計なことを言ってすまない」


「それがみんなの総意なら……わたしも受け入れるよ」


 結果、反対意見を口にした二人はそう答えるしかなくなっていた。


「二人の名前を聞いてもいいかな?」


 重々しい雰囲気が和らぐ中で、勇希が穏やかな声で質問を向ける。


「……初瀬歩はせあゆむだ」


「七峰リーシャ……」


 長身痩躰ながら精悍な顔立ちの男と、スタイルが良く純粋な金髪を持った少女がそれぞれ名前を伝える。


「初瀬くんに七峰さんだね。

 二人がこの協力関係に懐疑的になる気持ちはわかる。

 でもね、1組にも大きなメリットはあるんだよ」


 真摯な眼差しを二人に向けながら、勇希は自らの気持ちを口にした。


「それは生徒間での戦闘――殺し合いを避けられること。

 私は全クラスで協力してこの世界を生き抜きたい」


 それは信じ合うことができなければ、到底なしえない理想。

 だが勇希はそれを実現しようとしている。

 力のない理想はただの夢に過ぎない。

 だがそれでも――。


「私たちが結ぶのは主従ではなく対等な立場での協力。

 だから、みんなの力を貸してほしい」


 理想を語る者にこそ人は引き付けられる。」


「……全クラスで生き抜く……それを、本当にできると思ってる?」


 疑問を口にしたのはリーシャだ。

 だが、決して馬鹿にしているわけじゃない。

 その証拠に、リーシャの瞳には熱い火が灯っている。


「それがどれだけ困難であるかわかってる。

 でも私はみんなを救いたい。

 一人の力は小さくても――みんなの力を合わせれば、きっとできる!」


 理想という熱が伝染するように広まっていく。

 悲観と絶望を繰り返していた3組の生徒たちの心に、希望が宿っていくように。


「キミの理想はあまりにも夢物語だが……この世界で生き抜こうというなら、そのくらいでちょうどいいのかもしれないな」


 話を聞き終えたあと、初瀬がそう口にした。

 1組と3組の協力関係に反対する生徒はもういない。


「……決議をしよう。

 1組との協力関係に反対の生徒は?」


 タイミングを見計らうように高無が口にした。

 反対意見を口にするものはない。

 それを見て、勇希の口元は微かに緩んでいた。




         ※




 協力関係を成立させた後、俺たちは3組にある状況提供を求めた。

 一つは攻略最下位だった際のペナルティの内容。

 だが、やはりこれに関しては答えることはできないらしい。

 おそらく担任から禁止されていることなのだろう。

 そしてもう一つ確認したのは、1組が未だに遭遇できていない4組についての情報。

 3組が明確な情報を持っていたわけではないが、高無や矢那瀬の話では、3組以上に危険な状況にあるのではないか……ということだ。

 どうやら3組と4組は探索中にも、何度か揉めているらしく決して穏やかな関係ではないらしい。


(……1組と3組が協力関係を結んでいるという話は、4組と良好な関係を築くまでは伝えるべきではないかもしれない)


 最悪、争いの火種になるだろう。

 そして情報交換を一通り終えた後、


「他に質問がなければ探索を再開しようと思うんだけど……3組の生徒たちの中で、私たちのパーティに同行できる生徒はいるかな?」


 勇希が3組の生徒に提案をした。

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こちらが書籍版です。
『ダンジョン・スクールデスゲーム』
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