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交戦するクラス

ダンジョンカーストの書籍版『ダンジョン・スクールデスゲーム』本日発売です!

既に2巻の発売が3月に決まっています!

2巻は7割以上書き下ろしでWEB版以上に面白くなっていますので、1巻と2巻とも合わせてお楽しみください!

            ※




 近付くにつれて、通路に響く喧騒が大きくなっていく。


「戦う気がねえなら、黙って死ねよ!」


「そうしてくれたほうが、オレらは楽だしな」


「ほんと、ほんと……。

 羅刹くんの命令とは言え、無駄なカロリー消費したくないもんね~」


 好戦的な声が三つ。

 羅刹の名を口にしているということは2組の生徒だろうか?


「っ……応戦するぞ!」


「了解!」


 対して緊迫感に満ちた声は二つ。

 どうやら、生徒間で戦闘が発生しているのは間違いないらしい。

 少し様子を窺うべきかと思ったが、これではそんな余裕はなさそうだ。


「みんな、襲われた生徒に加勢して!」


 直ぐに勇希から指示が飛んだ。

 その声に交戦中の生徒たちが反応する。

 勇希は注目をこちらに向ける為、わざと聞こえるように言ったのだろう。


「ちっ……こいつらの仲間か?」


 三人組の一人――黒髪の男が戦いを止め距離を取ると、忌々しそうに俺たちを見た。


「……どうする? 一旦、引くか?」


「もしかして、ビビッてんの?」


「は? んなわけねえだろっ!」


 続けて襲撃者たちは言い合いを始めていた。

 パーティを組んではいるが、仲がいいというわけではないようだ。

 その間に、俺たちは襲撃を受けた生徒たちに声を掛ける。


「怪我はない?」


「あ、ああ……助かった。君たちは?」


 助けが来ると思っていなかったのか、襲われていた二人組の男女が困惑した様子で尋ねる。


「1組の九重勇希、あなたたちは?」


高無祥吾たかなししょうご……3組だ」


「……矢那瀬悠乃やなせゆの


 高無と矢那瀬は警戒するような眼差しを俺たちに向けた。

 この状況であれば当然だろう。

 出会って直ぐに他者を信頼できるはずがない。


(……しかし3組の生徒とは)


 4組と共に現時点では最下位争いをしているクラスだ。

 ポイント的も少なく、常に余裕のない状況を強いられているだろう。

 この機会に3組内の状況を核にしておきたい。

 が、まずは――。


「オレらを無視してのんびり話してんじゃねえよ!!」


 2組の生徒の対処が優先だろう。

 叫びながらナイフを持った茶髪の男が俺たちに接近してくる。

 喧嘩慣れしているのかもしれないが、その動きは直線的でレベル差がある為かやけに遅く感じる。

 この程度の相手なら、無力化することも容易だろう。


「やるってんなら相手になってやんぜっ!」


 俺が考えている間に、いの一番に野島が飛び出した。

 自衛の為とはいえ血の気が多いのは、2組の生徒だけではないようだ。


「上等だ!! ぶっ殺してやるよ!」


「やれるもんならやってみろや!」


 好戦的な二人の不良ヤンキーの交戦が始まった。

 他の生徒はどう動くだろうか?

 俺が残る二人の生徒に視線を送ると――。


「ちっ……」


「あ、おい、府屋!! うちらを置いて逃げんなし!」


 仲間を置いて、2組の生徒――高身長の男が一人逃げ出した。

 窮地に陥れば、他人のことなど平気で見捨てる……人間の心理としては当然かもしれないが、どこか見苦しさを感じてしまう。

 残された女のほうは苛立ちから表情を歪め……。


「あいつ……戻ったら羅刹くんに言いつけてやる!」


 逃げずに立ち向かうことを決めたようだ。

 というよりも、2組を暴力で支配している羅刹に歯向かえないだけなのかもしれない。

(……まぁ、どちにせよ)


 全員、逃がすつもりはない。

 こいつらを拘束できれば2組への潜入が可能になるのだから。


「大翔くん、逃げた生徒を!」


「――ああ。

 勇希たちは他の二人を拘束してくれ!」


 そう告げて俺は走り出した。

 そして、迷いなく全力で逃げていく男に俺は直ぐに追いつき、


「拘束させてもらうぞ」


「っ!? もう追いつきやがっ――


 男が振り向いた直後、顎の辺り殴りつけた。


「がっ……」


 かなり加減はしているが、その一撃を受けて男の身体はぐらつき……。


「悪いな」


 続けて、動きが止まった男の腹部を蹴りつけた。


「ごはっ!?」


 軽く蹴っただけ地面に崩れ落ち……そのまま気絶していた。

 俺は振り返り仲間の状況を確認する。

 野島は茶髪と、勇希たちは2組の女子生徒と交戦中だった。

 だが……直ぐに決着は着くだろう。

 こちらのほうが人数が多いこと、そして単純にレベルの差が明白だった。


「くたばりやがれっ!」


「ぐうっ……」


 野島が片手剣を振り上げる。

 ギン! と鈍い音と共に、男の持っていた武器が宙を舞った。

 剣スキルを獲得している野島相手に、どうあがいてもナイフでは勝ち目がなかっただろう。


「どうすんだ? まだ続けるのかよ?」


「ざけんなっ! ――武器がなくなったらって……この程度で終われるかよ!」


 勇ましい……が、あまりにも無謀だ。

 武器を持っている相手に、茶髪の男は素手で襲い掛かっていくが――。


「馬鹿野郎がっ!!」


「――がっ!?」


 ボゴッ――野島の拳が男の顔面に叩き込まれ……茶髪は力なく崩れ落ちた。


「伊達っ!? ッ……やってくれんじゃん」


 こちらを睨み付けながら、少女は仲間の名前を呼ぶ。


「これ以上の戦闘は無駄。

 わかるよね?」


「無駄かどうかはあんたじゃなくて、うちが決めることだよ」


 どうやら降参するつもりはないらしい。

 仲間想いな面はあるようだが……まだ続けるというのならさっさと無力化してしまうべきだろう。


「続けるなら命の保障はできない。

 それでもいいんだね?」


「こ、九重さん!?」


 勇希の非情な宣告に、三枝が驚愕の声を上げた。


「て、テメェ……脅すつもりか?」


「脅しじゃなくて、最後通告。

 二度は聞かない」


 勿論、本気でそんなことをするつもりはないだろう。

 だが……色を失ったその瞳と、感情を感じさせない声音からは、彼女が何かを考えているのか全く読めない。

 不気味な威圧感は、狂気すらも感じさせるものだった。

 まるであの男――羅刹修のように。


「……な、なんなんだ、あんたは……」


 身を竦ませる少女。

 対して勇希は表情一つ変えぬまま、


「大翔くん、野島くん……」


 質問に答えようとすらせず――拘束してる二人の男子生徒を殺すよう命令してきた。


「わ、わかった……! 降参する……うちらの負けだ……だから、やめて……」


 そして、脅えたように懇願する少女を見て勇希は優しく笑った。

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こちらが書籍版です。
『ダンジョン・スクールデスゲーム』
もしよろしければ、ご一読ください。
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