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5階層のモンスター

更新しました。

         ※




「なかなか見つからねぇなぁ……」


「ノジマってやっぱり馬鹿なの?

 まだ5分くらいしか探索してないんだから当然でしょ?」


 此花が呆れたように言葉を返すと、短気な不良はイラっとしたのか彼女を睨み付けた。 てっきり怒り任せに声を荒げるのかと思ったが、ダンジョンの中ということもあり自重していた。


(……ま、そう簡単に見つけられるわけないよな)


 探索を続ける俺たちだが、今回の最大目標は5階層の攻略ではない。

 ダンジョン内にいる2組の生徒を見つけ一時的に拘束。

 その後、此花が柊からコピーした変身能力を使用して2組に潜入――七瀬を救出して1組に帰還……というのが、勇希の提案した作戦の大まかな流れだ。

 この他にも第二、第三の目標は設定されており状況に応じて優先順位も変更される。


「運の要素が大きいから、これって【扉】を見つけるより難しいよね?」


 三枝の言う通りだ。

 扉はダンジョン内に固定されており動くことはない。

 しかし、探索を続ける生徒は動き回っているのだから、見つけることはより困難になるだろう。


「だからこそ、根気強く探し回るしかないと思う」


 勇希が三枝の意見を肯定した。

 気配察知を使っているので、現在の進行方向に進んでいけば【何か】に遭遇可能であることは間違いないが……それが2組の生徒である可能性は低いだろう。


「そろそろ……もう少し進んだ先に【何か】いるぞ」


 俺が伝えると、パーティメンバーの表情が引き締まる。

 敵との遭遇を念頭に、俺たちは慎重に足を進めていくと……明らかに人間のものではない軽い無数の足音が俺の耳に届いた。


「来るぞ――モンスター……数は二体だ!」


 俺が声を上げると、皆が一斉に武器を構える。

 前方の敵は間違いなく4階層の敵よりも強くなっているようだが、俺自身はそれほどの脅威を感じない。

 今回も倒したところでレベルアップに必要な経験値は手に入らないだろう。

 これならサポートに徹したほうがよさそうだ。


「全員に補助魔法を掛ける!」


 速度強化3、攻撃強化3、魔法強化3を使用して各能力が10%向上させる。

 ステータスの底上げをすることはモンスターとの戦闘に置いて大きな効果を発揮する……というのはここまでの実戦で経験済みだ。

 そこからさらに物理防御3と魔法防御3を掛けた。

 これにより見えないシールドが敵の攻撃を防いでくれるので、余程強力な攻撃を受けぬ限り即死するということはないだろう。


「ありがとう、大翔くん!

 5階層最初の戦いだから、みんな慎重にいくよ!

 敵影確認後――後衛は攻撃魔法を!

 前衛は待機!」


 勇希から指示が飛ぶ。

 直後、サササササ――と気味の悪い音と共に、黒い蜘蛛が姿を現した。


「ぇ!? お、おっきな蜘蛛!?」


 怯えと戸惑いを合わせた三枝の声が響き渡る中、


「――雷撃ライトニングボルト!」


「――氷槍アイスランス!」


 勇希と此花が同時に魔法を放つ。

 しかし、素早い動きで蜘蛛が魔法を避けた。

 でかい図体の割にかなり俊敏なモンスターのようだ。

 身体中に無数の目が付いており、かなりグロテスク……というか、本能的な恐怖を誘う見た目をしている。


「モンスター名――ヒュージスパイダー。

 種族はアラクネ。

 レベル6で土属性だよ!」


 三枝が敵の簡易詳細を伝えた。

 初めて戦うモンスターなので油断はできない。

 土属性ということは水が弱点のモンスターだろう。

 敵の特徴を理解した上で俺は属性耐性付与を全員に掛ける。


「蜘蛛野郎がっ! ぶった切ってやるよ!」


「野島、待て!」


 威勢よく叫ぶ野島の服を掴み俺は行動を制止した。

 瞬間――二匹の蜘蛛が口から太い糸を噴き出す。

 それは明らかに野島を狙ったものだった。


「なっ!?」


 三白眼を見開きながら、猪突猛進な不良は身体を強張らせる。

 これでは回避行動は不可能だろう。

 そう判断して、俺は野島の身体を引っ張った。


「うおっ――」


 そのまま体制を崩し野島は通路に崩れた。

 が、狙った対象を失った糸はそのまま地面に落ちて、ぬっちゃ……と張り付くようにくっ付いている。

 どうやらかなり粘着力があるようだ。

 あの糸が身体に絡みつけば引きはがすのに苦労するだろう。


「な、なんだこりゃ!?」


 熱戦を見た野島が再び驚愕に目を見開いた。

 だが、のんびりしている暇はない。

 モンスターが再び動き出している。


「野島、さっさと立て!」


「う、うっす!」


 倒れる不良男に手を伸ばして立ち上がらせた。


「此花さん!」


「OK!」


 再び勇希たちが蜘蛛の化物に魔法を放とうと手を向けた。

 だが、こちらの攻撃を察知していたモンスターは不規則に動きまわることで攻撃の焦点を定めさせない。


「あ~もう! なんなんだよこいつら!

 こうなったら当たるまで撃ち続けてやる! ――氷槍アイスランス! 氷槍!」


 此花は苛立ちながら魔法を連射した。

 かなり魔力を使用してしまったと思うが、この本数の氷槍アイスランスを全て交わすのは難しい……と思っていると、蜘蛛たちは飛び上がった。


「なっ!? 嘘でしょ!?」


 そして、壁にくっ付いて天井まで這い上がっていく。


「クソがっ! これじゃオレの剣が届かねえじゃねえか!」


 剣をぶんぶんと振り回すヤンキーに蜘蛛の目が向く。

 そんな隙だらけの野島に向けて、ヒュージスパイダーは口から糸を噴出した。


「うお、ととととと……クソっ!」


 慌てて後方に下がる野島。


「こいつ好き勝手しちゃってさ! 氷槍アイスランス!」


 蜘蛛に向けて此花が再び魔法を放った。

 が、もう一匹のヒュージスパイダーが糸を放出して飛んでくる氷槍を絡め取ってしまう。


「あ~もう! その糸ずるくないかな!」


 此花のムッとした様子など気にもせず、大蜘蛛は氷槍が粘着した糸を勇希に向けて叩きつけるように振った。

 だが、彼女はまるで動じることなく蜘蛛に向けて手を向けると、


「――雷撃ライトニングボルト!」


 魔法を放った。

 高速の雷撃が一瞬にして大蜘蛛に迫る中――勇希に向かって振り下ろされた氷槍の先端が彼女の頭部に命中して、パン! と、硝子の割れるような音を響かせて砕け散った。


「九重さん!?」


「――大丈夫」


 だが勇希は全くダメージを負っていない。

 俺が掛けておいた物理防御と魔法防御――二つの魔法のシールドが彼女を守ったようだ。


(……なんて戦いかたするんだ)


 今のは計算の上だったのか、それとも――自分の身を顧みず攻撃を加えたのか。

 勇希の真意はわからないが、


「!?!?!?!?!?!?」


 ヒューズスパイダーが、人の耳には聞き取れないような叫び声を上げる。

 勇希の放った諸刃の一撃は見事、ヒュージスパイダーに命中したのだ。

 雷撃を受けほうの蜘蛛が天井から地面に落下した。


「……あ、今の雷撃で麻痺したみたい!」


 鑑定スキルを使用した三枝が蜘蛛の状態を伝える。


「よっしゃ! ――オレに任せとけっ!」


 野島は剣を構え落下する蜘蛛に向かい疾駆した。


「三枝! 野島の剣に属性付与を!」


「わかった! 属性付与――ウォーター!」


 俺の指示に従い三枝が野島の持つ武器に属性付与を掛ける。


「死にやがれっ!!」


 勢いを利用して野島は剣を突き出すと、大蜘蛛の頭部に切っ先がめり込み――そのまま剣を振り上げると、


「おらああああああっ!!」


 紫色の血を拭き散らしながら蜘蛛の身体が切り裂かれた。

 それが致命傷になったようでモンスターが消滅する。


「しゃあ!!」


「!? ――野島くん急いで下がって!」


 左手でガッツポーズを取る野島に、勇希が指示を飛ばす。

 天井に張り付いていたもう一匹の大蜘蛛が、野島に向かって糸を吐き出していたのだ。


「っ!?」


 野島の足に糸が絡まる。

 そして大蜘蛛は糸を手繰り寄せるように引っ張った。

 とんでもない怪力のようで野島の身体が地から離れる。


「うおおおおおお!?」


 重力に逆らいながら野島が叫び声を上げた。

 糸を引き寄せながら、ヒューズスパイダーは獲物の身体をぐるぐる巻いていく。


「ノジマ!!」


 此花が氷槍アイスアローを放つと、大蜘蛛の背中に命中する。

 が、その程度のダメージなどお構いなく、ヒューズスパイダーが大口を開いた。

 身動きの取れなくなった野島を喰らう為に。


(……ここまでだな)


 俺はモンスターに手を向け、


「――ファイアアロー!」


 真紅の矢を放った。

 そして、一直線に駆け抜ける赤い嚆矢が大蜘蛛の頭部に突き刺さった。


「※※※※※※!?」


 強制的に口を閉ざすことになったモンスターが痛みに悶えた。

 続けて俺はより強い魔力を込めて同じ魔法を使用した。


「――炎の矢!」


 同じ魔法とは思えないほど火花を迸らせた炎の矢がヒューズスパイダーを貫き、全身を炎が覆う。

 のたうち回りながら燃え上がる大蜘蛛だが、次第に力尽きたように動きを止めて白い粒子を舞い散らせながら消滅した。


「っ――ぐおっ!?」


 バタン――蜘蛛に捕らえられていた野島の身体が、地面に落下する。


「ノジマ、生きてる?」


 此花が野島に近付き生存確認をした。


「……マジで喰われるかと思ったぜ。

 こりゃ度胸比べどころじゃねぇ……」


 顔面蒼白な野島が率直な感想を口にした。


「た……倒した、んだよね?」


 三枝はまだ気を抜けないのか、周囲を見回しながら不安そうに尋ねてきた。


「ああ、もう大丈夫だ。

 直ぐ近くに気配はない」


「そ、そっか……良かったぁ」


 安堵したように息を吐く三枝に続いて、此花が口を開いた。


「……結構強かったよね。

 本当、ノジマが食べられるんじゃないかって思ったよ。

 命拾いしたね」


「うるせぇぞクソ女! にしても……面倒なクソモンスターだったな」


「今のでレベル6……か……」


 勇希は何か考え事をしているようだ。

 が、俺も思うところはあった。

 皆が感じているように、レベル6のモンスターにしては厄介な相手だった。

 モンスターの脅威度は種族で随分と違うようなので、探索を進める上で自ら経験を積みながら調査していく必要があるだろう。


「……野島くん、怪我はない? 治療が必要なら遠慮なく言って」


「……わりぃ。

 体力が少し減っちまってるみたいだ……」


 その後、野島の体力を回復してから、俺たちは再び2組の生徒の捜索に向かった。

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