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捕縛の為の事前準備――と、生まれる新たな疑問

20180720 更新しました。

          ※




 話し合いの後。

 タウンを出た俺は、教室である人物を待っていた。


(……そろそろか?)


 思ったのと同時に、ガラガラ――と扉が開く。


「……いきなり教室に呼び出すなんて、なんの用かな?

 もしかして告白とか?」


 やってきた此花が冗談交じりで口を開いた。


「思ってもないことを口にするな。

 お前に頼みがある」


「へぇ……ならまずは内容を聞かせてよ」


 まぁ、何も聞かずに二つ返事とはいかないよな。

 此花は適当なことを言うようで慎重な奴だ。

 真意は見えてこないことは多いが、自分に利益があるのなら協力を得られるだろう。


「実はな……」


 俺は事件の犯人が七瀬に姿を変えた2組の生徒であることと、捕縛する為の作戦について伝えた。

 協力を求めた理由は単純で、三枝の持つオリジナルスキルがこの状況に対して非常に効果的だからだ。


「……そういうことね。

 犯人がわかっているなら、ボクに協力を求めてくるのも頷けるよ」


「ここでお前の力を使うのは……悩ましくはあるが……」


 此花の力にはある制限がある。

 だからこそ――使うべきタイミングをもう少し見極めたかった。


「問題ないでしょ?

 それに……あくまで【保険】なんだよね?

 三枝さんが裏切った時のさ」


「ああ、そんなことにはならないと思うが……」


 俺は三枝を信じたい。

 だが――他人に期待するのはただの押し付けだ。


「最悪を想定して動くのは当然だよ。

 それにこれはボクの安全を確保する為でもある。

 だから協力するよ。

 ボクは……」


 続く言葉を此花は口にすることはなかった。

 ただその時、彼女の瞳には何かを恐怖するような――そんな脅えが見えた気がした。


「……此花?」


「あ……ううん。

 ごめんね、とにかく協力はするから。

 一応……ココノエやミマには内緒で、七瀬さんの部屋の近くで待機しておくよ」


「そうしてくれると助かる」


 当然、保険は使うことにならないほうがいい。

 だが今が仕掛けるべきタイミングでもあるだろう。


「じゃあ、話が終わりならボクは行くね。

 それとも……ここでもう少しおしゃべりするかい?」


「悪いが……もう少しだけここにいてくれないか?

 まだ教室で確かめたいことがあってな」


「確かめたいこと?

 まぁ……ボクはキミの奴隷だから当然お願いは聞くけどさ」


「あのな……前から言っているが、いい加減それはやめてくれ。

 俺たちは協力関係――それ以上でも以下でもない」


「でもさ……たとえ主従関係だとしても、繋がりがないよりはマシじゃない?

 こんな状況なら特にさ……」


「極端すぎるだろ。

 ならせめて――」


 友達くらいにしておいてくれ……と、口にしようと思ったが、こんな状況で気軽に作るものではないだろう。

 それをわかっているから、此花は主従関係でもいいから深い繋がりを求めたのだろうか?

 信頼できる人間が欲しかったのだろうか?


(……いや……考えすぎか)


 深読みはやめよう。

 相手の気持ちなど考えてもわかるわけがない。


「ねぇ……ヤマト。

 たとえばだけど……ボクがもしダンジョンの中でピンチになっていたら、キミは助けてくれるかい?」


「唐突になんだ?」


「答えて……ボクにとっては大切な質問なんだ」


 此花は真っ直ぐに俺を見つめる。

 嘘をつくこともできるが、その表情があまりにも真剣すぎたから、


「……時と場合による。

 助けられるなら助けるが……無理なら見捨てる」


 はっきりと伝えた。

 俺にとって此花の存在はその程度のものだ。

 過剰な期待をされたくはない。


「……キミは正直なんだね。

 でも綺麗ごとを言わないのは好きだよ。

 今の言葉を信じるから、もし何かあったら助けられる範囲でボクを助けてね」


「わかった。

 そのくらいなら約束する。

 代わりに、冗談でも今後は奴隷発言は禁止だからな」


「うん。今はそのくらいの繋がりで満足。

 で、もう一つのキミの用件っていうのは?」


「……ああ」


 確かめに来たのは、階層攻略後にもダンジョンに入れるかだ。


 以前、担任は言っていた。

 次の階層攻略が始まるまでは休憩だと。

 だが……その間に攻略した階層に行けないとは一言も口にしていなかった。


 あの性格の悪い担任のことだ。

 聞かれなかったことには答えないだろう。

 情報開示制限があるのも担任の口振りからは明らかだ。

 なら、リスクを承知でも行動するしかない。


「今からダンジョンに繋がる扉を開く」


「扉……?

 でも今は階層攻略許可は出ていないんじゃ?」


「だから何が起こるかわからない。

 俺にもしものことがあったら……その時は勇希たちに報告してくれ」


「え、ヤマト、ちょっと待っ――」


 此花の静止を振り切り俺は扉を開いた。

 すると、


「っ!?」


「え……ここって……」


 ダンジョンは消えていた。

 変わりに視界の先にあったのは、


「……教室、だよな?」


 だが誰もいない。

 さらに室内は古びた感じだ。

 老朽化している……というのとは違う。


「ヤマト……どうするの?」


「此花はこっちにいてくれ。

 俺は何か手掛かりがないか探してくる」


 迷いつつも俺は教室に入った。

 ミシミシ……と床が軋む音がする。

 まさか崩れたりしないだろうな?


「ヤマト、どう? 何かあった?」


 周囲を見回す……が、やはりただの教室だ。

 しかし……。


「……うん?」


 机の上にノートが置かれていた。

 文字が掠れている部分もあるが、【1年1組】と書かれているのが目に入った。


「これは……?」


 同じクラス……?

 俺はそれを手に取った。

 瞬間――ビリッと脳裏におかしな感覚が走った。


「だ、誰だ?」


「!?」


 男の声が聞こえた。

 それは明らかに、俺に向かって掛けられたもので――振り返る。

 すると数人の生徒がいた。

 その中には見覚えのある少女が一人いて、


「お前……F……?」


 俺に力を与えた――あの少女……かと思ったが、かなり容姿は似ているが髪や瞳の色が違う。


「F……って、わたしのこと?」


 首を傾げる少女。

 当然と言えば当然だが、俺のことなど全く知らないらしい。


「どこから来た!? 人間……なのか?」


 Fの隣に立つ男に言われた。

 俺よりも少し年上だろうか?


「どこからってそこの扉から――」


 俺は顔を向ける――と、入って来たはずの扉が閉まっている。


「他のクラスの生徒? まだ生き残りが――」


 だが、その声は遠くなっていく。


「お…………た…………あ……!!」


 周囲の景色がゆっくりと消えていった。

 まるで俺だけこの世界から隔離されていくような――なんだ?

 何が起ころうと――


「……これは予想外のことが起こったなぁ~」


「!?」


 また景色が変わり、一面が黒い空間。

 そこに担任が立っていた。


「は~い! 美々先生だよ~!

 全く、びっくりしちゃたよ~。

 まさか……別の【教室】と繋がっちゃうなんてね~」


「教室? あれは別のクラスなのか?


「ちょっとエラーが起こっちゃったみたい。

 クラスを【一組】に変えた影響かな……?

 それとも……キミがオリジナルスキル保持者だからなのか……?

 他の可能性もあるけど……でも、これは初めてのケースだよ。

 貴重なデータが取れちゃって、先生ハラハラドキドキだ」


「今のは……なんだったんだ? あいつらは誰だ!?

 俺たち以外にもこの世界に転移している奴がいるのか!?」


 叫ぶように質問を続ける俺を見て、担任は不気味な笑みを見せる。


「今のはエラー。

 不慮の事故みたいなもので、この階層を統制する管理側のミスでもあります。

 だから制裁は加えません。

 でも、これ以上のことを聞くなら――キミを今直ぐに処分するよ?」


「っ……」


 クマの赤い瞳が見開かれる。

 その色は何かに取り付かれたような狂気に染まっている

 同時に感じたことのないような殺気が漏れていた。

 ボスモンスターと相対した時の比ではない。

 心臓を鷲掴みされるような感覚にガクガクと膝が震える。

 自分が死んだとわらかぬままに殺される――目の前の相手が、そんな異次元の存在だと嫌でも理解してしまった。

 勝てない。

 今戦えば――俺はここで殺される。


「あははっ、ごめんね~。

 そんなに怖がらないで~。

 ただ、ちょっとキツく言っておかないと……先生もマズいんだよ。

 なので暫くの間、指定時間以外にダンジョンへ繋がる扉を開けることは禁止します。

 入ったら死ぬよりも苦しい罰を与える……って、放送も入れておくよ。

 でも……キミがあのまま呑み込まれなくて良かった~。

 ……戻って来られなくなるところだったから……って、先生がべちゃくちゃしゃべっちゃダメですね」


 クマは笑う。

 そして俺の頭をポンポンと撫でた。


「あと、それはこっちで回収します」


 担任が言うと手に持っていたノートが消える。

 何かの手がかりになると思っていたのに……。


「もしもこれが見たかったら……そうだな。

 もっともっとキミが強くなることができたなら……その時は見せてあげるよ」


 まるで無理矢理奪い取ってみろ……と、言われているみたいだった。


「さぁ、それじゃあ元の場所に戻るよ~。

 長いことここにいると……時間の感覚が狂っちゃうからね」


 そして担任がパンと両手を叩いた瞬間――俺は教室に戻って来ていた。


「ヤマト!? 大丈夫? 怪我は?

 さっき急に扉の先が消えちゃって、それでボクどうしようかって……」


「……此花、落ち着いてくれ。

 俺は大丈夫だ」


「一体……何があったの?

 あの教室は一体……」


 わかったことなど何もない。

 ただ――情報が増えたことで推測することは出来る。

 恐らくあの教室は、俺たちよりも前にこの世界にきた生徒たちが利用していたもの。

 つまりこの世界には、俺たち以外の生徒がいる可能性があるのではないだろうか?


「ヤマト?」


「いや……すまん。

 俺が消えてからどのくらい経ってる?」


「多分……1時間くらいだと思う。

 そうだ!

 少し前に担任から放送が入ったよ。

 ダンジョンに繋がる扉は暫く開くなって、破ったら大きなペナルティがあるって」


 どうやら、さっき起こったことは夢ではないようだ。


「そうか。

 なら――急いで戻ろう。

 そろそろ待機しておいたほうがよさそうだ」


 疑問は増えるばかりだが、今は俺にできることをしよう。

 この世界で生き続ける為にも――。

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