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命懸けの戦い

―――――――――――――――――――――――――――




 ○ステータス



  名前:三枝 勇希

  年齢:15歳


  レベル:1

 

  体力:23/23

  魔力: 0/0



  攻撃:12

  速さ:11

  守備: 7

  魔攻: 0

  魔防: 3


 ・魔法

  なし


 ・スキル




―――――――――――――――――――――――――――




 一言でたとえると……雑魚だった。

 全ステータスが俺以下。

 魔法もなければ、オリジナルスキルもないらしい。(本人談)

 俺以外に比較できる者はいないが、これが普通なのか?

 そうなるとなぜ、俺は最初から魔法とオリジナルスキルを覚えていた?

 この世界でのステータスというのは本人の現実の能力が、何か関わっているのだろうか?


(……今考えても仕方ないか)


 この辺りは、もしまた教室に帰ることが出来たな情報を共有していけばいい。


「ねぇ、宮真くん。

 あの兎みたいなモンスターを倒す時に使っていたのって、もしかして魔法?」

「ああ」

「やっぱりそうなんだ! 凄いよね!

 一撃でモンスターを倒しちゃったもん! あたしも使えるようになるの?」

「レベルを上げて、マジックポイントを獲得していけば使えるようになると思うぞ」

「レベル? どうやってあげるの?」

「モンスターを倒すことで上がるみたいだ」

「え? も、モンスターを……」


 三枝は顔を伏せた。

 モンスターに襲われた時の恐怖を思い出したのかもしれない。

 怖いからこの場から動きたくない……などとは言わないと思うが……。


「……怖いとは思うし、リスクもある。

 だが、生き抜く為には、レベルをあげていく必要もあると思うんだ。

 俺も一緒に戦うから……頑張ってみてくれないか?

 勿論、危なそうなら逃げられるようにサポートもする」

「……そ、そうだよね。

 怖いけど……宮真くんと一緒ならあたし、がんばってみる!」


 よし。

 とりあえず納得してくれたようだ。

 これで探索を続けられる。


「俺たちの行動目的は、ダンジョンを探索をしつつ教室を見つけること。

 次に出来ればモンスターを倒してレベルを上げること。

 このダンジョンには道具屋と装備もあるらしいから、見つけたら報告してくれ」

「わかった、がんばろうね!」

「ああ」


 そして俺たちはダンジョンの探索を開始した。

 しかし、通路は無駄に広く闇雲に進んでいても迷うだけだ。

 武器でもあれば、石壁に傷でも付けて目印にするんだが……。


(――あ、そうだ!)


 ホーンラビットの角……だったか?

 俺はアイテムを手に入れてたよな?

 意識すると、アイテムメニューが視界に映った。


(……やっぱり、意識すると表示されるのか)


 だんだんと、この世界のルールがわかってきた気がする。

 そして、アイテムメニューから、ホーンラビットの角を選択すると。


『このアイテムを装備しますか?』


 俺が Yes を選択すると、ふわっとした光と共に右手に一角獣のような角が召喚された。


「え!? そ、それも宮真くんの魔法なの?」

「いや、これはアイテムだな。

 さっき倒した兎がいただろ?

 あいつを倒した時に手に入れたんだ」

「そ、そうなんだ……」


 ホーンラビットの角――その先端は見るからに鋭利だ。

 俺はダンジョンの壁に適当な印を付けた。


「何してるの?」

「こうやって印を付けておけば、ここが通った道だってわかるだろ?」


 それに、もしダンジョンの構造が変化しているのだとしたら、来た道を戻った時にこの印も消えているはずだ。


「そ、そっか! それ凄くいい!

 宮真くんって、頭いいんだね!」


 誰でも思いつくだろ、こんなこと……と思ったが、口に出しては言えなかった。

 同時に俺は一つ試してみたくなった。


「三枝、これを持ってみてくれないか?」

「い、いいけど……?」


 俺は三枝にホーンラビットの角を渡そうとした。

 が、なぜかホーンラビットの角がどこかに消えてしまった。


『ホーンラビットの角を譲渡じょうとしますか?』


 システム……と敢えて形容させてもらうが、システム上、どうやら渡すことは可能らしい。


「Yesを選択してもらっていいか?」

「う、うん……」


 戸惑いつつも、三枝は俺の指示に従ってくれた。


『譲渡が完了しました』


 つまり、所有権が移ったという意味だろう。

 これなら、自分の所持品を勝手に奪われる心配はないようだ。


「え、えと……今の角みたいなのは、どこに要ったの?」

「アイテムメニューを開いて選択すれば取り出せる」

「あいてむめにゅー?」


 実際にやり方……というほどでもないが、取り出し方を説明した。


「え、え~と、この画面からホーンラビットの角を選択して……っ!?」


 三枝の手にはホーンラビットの角が召喚されていた。


「できたな」

「う、うん……なんだか不思議な感じだけど……」

「一応、そのアイテムは武器としても使えると思うから、それは三枝が持っていてくれ」

「え……で、でも……それだと宮真くんの武器がなくなっちゃうんじゃ……」

「俺は魔法を覚えてるからな。

 護身用って意味でも、これは三枝が持っていてくれ」

「わ、わかった……ありがとね、宮真くん」

「それと頼みがあるんだが、ある程度進んだら通路に印を付けておいてくれ」

「わかった。

 それくらいなら、あたしにもできると思う」


 寧ろ、それも出来なかったら足手纏いどころの話ではない。


「じゃあ行く――」

「ゴブアアアアアアアアアア!!」


 前方から怒りを孕んだような咆哮が聞こえた。


「な、なに……!?」

「……――ゴブリンだ!」


 ダダダダダダと俺たちを見つけ、一目散に駆けてくる。

 気配遮断を獲得しているはずだが……効果が発揮されていないのだろうか?

 いや、考えるのは後だ。

 ゴブリンの数は二体。


「三枝は自分を守ることだけを考えてくれ」

「う、うん……!」


 距離のあるうちなら、勝算は十分ある。

 それに、今後の為に確かめたいことがいくつかあった。

 いいぜ、モンスター。

 こっちを殺すつもりで来るっていうのなら――容赦しない。

 俺は手を突き出し、ゴブリンに魔法を放とうした――その瞬間、真っすぐに疾駆していたゴブリンたちがジグザグに動きながらこちらに迫って来る。


(……なんだ?)


 まるで俺が、魔法を使うと知っているみたいな――!?


(……こいつら、あの時のゴブリンか!?)


 遠目からで気付けなかったが、二体のゴブリンは火傷を負っていた。

 どうやら気絶させただけで、倒すには至っていなかったようだ。


「ガアアアアアアアアアアアアア!!」


 そうか。

 お前らは、俺に対して怒り向けているのか!!」

 だったら、


「――炎の矢(ファイアアロー)!」


 今度こそ倒すまでだ。

 俺は二連続で赤い閃光を放った。

 そのうちの一矢は、ゴブリンを貫く為に突き進む。

 が、予測不能な動きが功を奏したのようだ。

 炎の矢はゴブリンを捉えることなく、暗闇の奥に消えてしまう。 

 だが、あいつらは気付いていない。

 俺が放ったもう一本の矢の行方を――


「落ちろ!」


 天井目掛けて放っていた炎の矢は消失することなく、宙でとどまり俺の言葉に従うように高速落下してきた。


「ゴブッ――ッ!?」


 閃光はゴブリンの胸部を貫いた。


(……よし! 上手くいった!)


 どうやら放った後の魔法は、ある程度はコントロールできるらしい。

 倒れたゴブリンが、光の粒子と共にゴブリンの姿が消えていく。

 今度こそ確実に仕留めたようだ。

 もう一体――


「ッ――ガアアアアアアアアアアアア!!」


 仲間が殺られようともう一体は足を止めない。

 さらに怒りを発露させ俺に迫ってきた。

 まだ距離はある――俺はゴブリンに手を向け、炎の矢(ファイアアロー)を連続で放った。

 二本の炎の矢がゴブリンの腕と肩を貫く。

 だが、致命傷には至らない。

 確実に致命傷となる一撃を与えなくては――こいつは止まらない。

 だったらまた――


「こい!」


 絶対に避けられない、至近距離で炎の矢をぶっぱなしてやる!


「グガアアアアアアアアアッ!!」


 ゴブリンの咆哮――それは、俺を殺すと叫んでいるようだった。

 だが殺されてやるつもりなんてない。


「死ぬのはお前だ!」


 この距離なら確実に当たる。

 そう確信して、


「ファイア――」


 だが、


「っ!?」


 予想外の事態が発生した。

 ゴブリンの手に光が溢れたと思うと――盾が召喚されていたのだ。

 俺たちだけじゃない。

 モンスターも装備を召喚することが出来るのか!?

 なぜ、その可能性を考えなかっ――いや、今は考えてる暇はない。


「――アロオオオオオオオオッ!!!!!」


 思考は一瞬だった。

 だが、その一瞬の迷いが勝機を逃すことになった。

 ゴブリンは盾で急所を庇う。

 放たれた閃光はゴブリンの盾に防がれるも、炎の閃光は盾ごとゴブリンを貫く。

 しかし、


「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアッツ!!」


 盾が炎の矢の効果を弱めたのだろう。

 ゴブリンを倒すまでには至らなかった。

 その瞬間、ゴブリンはニヤリと歪んだ笑みを浮かべた気がした。

 全身が総毛立つ。

 これが死の恐怖……今までに感じたことのない感覚に全身が硬直した。

 そして、ゴブリンの強靭な爪が振り下ろされ――。


「――宮真くんっ!」

「!?」


 三枝の叫びが聞こえた。

 そして、俺の身体に痛みはない。

 攻撃を受けた感覚もない。

 ゴブリンの腕が、振り下ろされることのないまま止まっていた。


「……?」


 ゴブリン自身、何が起こったのかわからない。

 そんな顔をしながら――首を下げる。

 三枝の持っていた一角獣の角が――ゴブリンを貫いていた。

 そして、


「……ぁ……」


 バターン――地面に倒れたゴブリンの身体は、光の粒子を放ち、ゆっくりと消滅していったのだった。


「……た、倒した……の?」


 全身の力が抜けたみたいに、三枝はその場に座り込んだ。

 俺自身……勝った気はしない。

 心臓は爆発しそうなほどに鼓動を打っている。

 俺は……三枝に助けられたのだ。


「三枝……」

「な、なに?」

「……助かった」


 それだけ言って、俺もその場にへたり込んだのだった。

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