新たなトラブル
20180603 更新1回目
※
2組の寮は――他クラスとは全く違う。
大量のポイントを消費することで、タウンの中に高級ホテルのような施設を設置していた。
それらは支配階級の生徒にのみ使用を許されている。
クラスの共通ポイントは、実質的に羅刹の個人ポイント。
何をどう使おうと自分の自由――それが支配者たる彼の考えだった。
「――っ……あぁっ……」
ポイントだけではない。
クラスの人的資源すらも全ては彼の支配下にある。
その証拠というわけではないが……施設の一室では複数の男女がまぐわっていた。
「ははっ! ははははっ!」
酒か薬――いや、その両方かもしれない。
通常では考えられないほどにハイになっている。
「や、やめっ……」
これは望まれたものではない。
無能な奴隷階級は奉仕を強制されているのだ。
奴隷階級には人権すらも与えられず……ただ消費され続ける。
これが2組の現状であった。
「……気持ち悪い」
部屋の外にまで響く声を聞きながら、凛々しい顔立ちの女子生徒が不快感を示す。
彼女が今向かっているのはこの施設の中にある一室だ。
「……」
そして、扉の前に立ちノックをする。
「羅刹……入るよ」
返事はない。
それを最初からわかっていたように、彼女は扉を開いた。
ここは羅刹のプライベートルーム……のような場所だ。
ただ、特別豪華というわけではない。
室内には机や椅子という最低限の物だけが備えられている。
「……【連絡】がきた」
「そうか」
3階層で羅刹は種を蒔いていた。
宮真大翔をはじめ、彼のその発言は数人の生徒に伝わっている。
それは一種のゲームだ。
この世界に存在するクラスの生徒が阿鼻叫喚し争い合う。
生徒間での殺し合い――そんな最高のエンターテイメントを楽しむ為の布石。
だが――彼の蒔いた種はその一つだけではない。
「あれはどういう意味なの?」
「お前が気にすることじゃない」
羅刹は質問に答える気はないようだ。
が、少女はそれで納得できるわけもなく、さらに口を開いた。
「あんたは結果を出した。
3階層も4階層も上位通過……この結果は、あたしたちだけじゃ無理だった。
素直にそれは認める。
だけど……あんたのやり方じゃ……このクラスは勝ち残ることなんて――」
「クラスが勝ち残る? 何を言ってるんだ?」
平然と口を開く支配者に、少女の凛々しい表情が崩れる。
「……勝つ為に――この世界で生き残る為に、あたしたちは戦っている。
それはわかっているだろ!?」
羅刹に臆することなく発言する。
2組の生徒にとって、それが出来る人材は貴重だった。
「勝つ? 生き残る? はははははっ、そいつは傑作だ!」
「な、何がおかしいんだ?」
「そんなことはどうでもいい。
俺は――俺が楽しむ為に動く。
ただ、それだけだ」
片方の頬だけを吊り上げ、皮肉な笑みを浮かべる羅刹。
その言葉と表情に嘘はない。
正義感の強い少女の心には最初から疑念はあった。
この男のやり方は正しいのかと。
それでも、勝つ為には生き残る為には仕方ないと、自分に言い聞かせてきた。
だけど――。
「泉美……不満があるなら実力で俺を支配してみせろ」
「……っ」
「出来るわけないよな? お前らには何の力もない」
「っ……失礼する!」
バタン!
泉美と呼ばれた生徒は、強く扉を閉めた。
(……私は勘違いしていたのか?)
羅刹のやり方……弱者を切り捨て強者を残す。
それは生き残る為の最善の策だと思っていた。
理屈としては理解も出来た。
仕方ないことだと思っていた。
でも――。
(……このままではクラスは崩壊する)
その上で……あいつは一人で勝てると考えているのか?
それとも――
(……自分の命すらもどうでもいいと思っているのか?)
どうしたらいい?
羅刹の力は絶大だ。
彼に付いくことで勝利を得られる。
結果を出し続けていれば、今の段階で命は保障される。
(……だけど)
葛藤を続けながらも、泉美は答えを出すことが出来なかった。
※
部屋に戻り、俺はベッドで休憩しながら状況を整理していた。
当面の問題は羅刹修が率いる――いや支配している2組への対処だ。
変身能力を持つ生徒は意図的にトラブルを招こうとしている。
このまま放置しておくわけにはいかない。
見つけ出す手段があればいいのだが……。
(……厄介な能力があるものだ)
直接、能力を使用するところが見れれば早いのだが、余程のバカでもなければそんなヘマは犯さないだろう。
現状の対策は会議で話し合ったルールを守ることだけ……か。
しかし、勇希の統率力があればクラス内でのトラブルは防げるはずだ。
――コンコン。
扉がノックされた。
「どうぞ」
言葉の後、扉が開かれた。
「宮真くん……少しいいかな」
やって来たのは三間だった。
その表情は重々しい。
「どうかしたのか?」
「少し面倒な問題が起こったんだ」
「どういうことだ……?」
「……申し訳ないけど、食堂に集まって欲しい」
一体、何が起こるのか。
言われるままに俺は食堂に向かった。
するとそこには――
「うちらはあんたを見たんだから!」
「だから、僕は知らないと言ってるだろっ!」
複数の女子生徒に迫られる久我の姿があった。




