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売却ポイント

20180428 更新1回目

             ※




 転移石:売却価格10000ポイント。

 売却しますか?


 Yes or No




             ※



 勇希に続き俺も売却券を使用してみた。

 すると、目前にはこんな画面が表示される。

 この『10000』という数字に嘘がないなら、売却することでとんでもないポイントを得られるようだ。


「それで、いくらだったの?」


 気になったのか、此花が尋ねてきた


「10000ポイントだよ」


 返事をしたのは勇希だ。


「え……?」


 きょとんとする此花。

 同時に教室内がシーンと静まり返る。

 皆、耳を疑っているのだろう。


「やっぱり驚くよね……」


 沈黙するクラスメイトたちを見て、勇希が苦笑した。


「い、今のって、ボクの聞き間違えじゃないよね?」


「もちろんだよ。

 ね、大翔くん」


「ああ。

 正直、信じられないがくだけどな」


 階層を1位通過で手に入るポイントが1000ポイント。

 その10倍のポイントが、転移石を売却することで手に入るのだ。

 売ってしまえば、ポイント不足は一気に解消されるだろう。


「じゃ、じゃあ……本当に転移石の売却価格は……」


 三枝が真偽を確かめるように口を開く。


「正真正銘――10000ポイントだよ」


 勇希は即答した。

 瞬間――


「「「わああああああああああああああああああっ!!」」」


 生徒たちの大歓喜が食堂に響いた。


「マジで!?

 マジで10000ポイントで売られるのかよ!?」


「やった~~~~!

 これでもうポイントで悩まずに済むね!」


「今まで必要最低限の物しか買ってなかったけど、少しは物資を購入してもいいんじゃない?」


 あれが欲しい、これが欲しい……と、生徒たちから声が上がる。

 なんとか食事にはあり付けているが、それでも多くの生徒が我慢を強いられている現状だ。


「お風呂用のシャンプーや石鹸は買おうね!」


「出来たらわたし、着替えがほしいかも……」


 特に女子生徒は……着替えや生理用品など、必要な物も多いだろう。

 ここぞとばかりに、生徒たちは欲求を解放させた。

 だが、


「みんな、少し落ち着いて」


「そうだよ。

 物資を購入する前に、まだ決めないといけないことがあるんじゃないかな?」


 勇希と三間の呼び掛けで、徐々に生徒たちは落ち着きを取り戻していく。


「三間、なにを決めるってんだよ?」


 野島が聞き返して、凶悪な三白眼で男子のリーダーである好青年を睨む。

 戦闘面では頼りになりつつあるこのヤンキーだが、やはりオツムは相変わらずだ。


「まだ私たちの手元には、まだ10000ポイントがあるわけじゃないの」


「あん? どういう意味だ?」


 遠回しな発言ではあるが、察しの良い生徒たちは直ぐに理解しただようだ。


「まずは転移石を売却するかを決定しなければいけない。

 そういうことよね?」


 箒星ほうきぼしの言葉に、勇希は頷く。


「そんなの売却一択だろ!」


「そうそう!

 10000ポイントだよ!」


 誰からともなく声が上がり、売却賛成の生徒たちはうんうん頷く。


「でも、転移石の効果は貴重だよ。

 これがあればダンジョン内でピンチになっても、教室まで戻って来れるんだから」


「モンスターとの戦闘や、危険なトラップに引っかかった際、助かるってわけだな」


 ダンジョンの攻略班にとっては、これは喉から手が出るほど欲しいアイテムだろう。

 何せ命を買えるようなものだからな。


「でも、クラス全体のことを考えれば売るべきっしょ?

 ポイントは共通の財産なんだからさ」


「直ぐに売る必要はないんじゃないか?

 現時点でポイントに困ってるわけじゃないだろ?」


 意見は真っ二つに割れている。

 勇希は黙って皆の意見を聞いていた。


「三間くんはどうかな?」


「どちらでもメリットはあると思う。

 ただ、直ぐに売る必要はない……という意見には賛成かな」


 勇希の言葉に、三間は答えた。


「必要になったら売ればいい。

 そいうことでいいかな?」


「うん。

 転移石の効果を考えれば、今直ぐ手放すのは勿体ないよ」


 三間の考えは非常に単純な話だった。

 だが、だからこそわかりやすい。

 売るだけならいつでもできる。

 一時の満足感や快楽の為に、アイテムを売る必要はないと言いたいのだろう。


「私も三間くんと同意見。

 それに、今後の探索ではもっとレアなアイテムも手に入るかもしれない。

 そういう時にこそ、このアイテム売却券を使うべきじゃないかな?

 アイテム売却券は5枚しかないんだから」


 続けて勇希が自分の意見を口にした。

 クラスのリーダー二人は、長期的に物事を見極めて行動すべきだ……と、クラスメイトたちに伝えたいようだ。


「先のことを考えれば……確かに今使う必要はない気がするよね」


「共通ポイントだって結構溜まってるもんね。

 最低限、生活には困らないから」


 次々にクラスメイトたちが同意していく。

 とはいえ、生徒たちに不満が募らないかと言えばそうではない。

 如何に合理的な発言をしたとしても、心の奥底に鬱憤は溜まっていくだろう。

 最初は小さな亀裂でも、ちょっとしたことでクラスの結束を瓦解させることに繋がるかもしれない。

 だかこらこそ、


「ボスを討伐したポイントもあるから、少しだけ必要な物資を補充しようか」


 勇希はクラスメイトに対して、わかりやすい配慮をした。


「え!?

 いいの、九重さん!?」


「勿論だよ。

 みんながんばってくれてるんだもん。

 今日はちょっとだけだけど……贅沢しちゃおう!」


 再び生徒たちは歓喜に湧き立った。

 この程度のことでクラスが纏まるなら安い投資だ。

 こうして話し合いの末、生活雑貨をいくつか補充した。




           ※




 食事を終えた俺たちは、ダンジョンで手に入れたアイテムの保管先について話し合っていた。


「リストを作って、後は手に入れた生徒が持っていればいいんじゃないか?」


「……万一、ダンジョン内で死亡した際にアイテムも失うことになるんじゃない?」


「それは……」


 会議中に重い発言が出て、生徒の一人が言葉を詰まらせる。

 だが事実だ。

 貴重なアイテムを手に入れたなら、管理はしておくべきだろう。


「なら、ミャーたちが保管しようか?」


 提案してきたのは鍛冶屋の桜咲だ。

 彼女は武器生成スキルという貴重なスキルを持っている。


「いいよね、大峰っち」


「そうだな。

 特に素材関係ならこちらに渡しておいてもらった方が都合もいいだろ?」


 確かにアイテムを管理してもらうには適材適所かもしれない。


「二人がこう言ってくれているけど、みんなはどうかな?」


 クラスメイトに勇希が尋ねる。

 生徒たちは頷き、肯定の意を示した。


「なら、決定だね。

 桜咲さん、大峰くん……今後はアイテムの管理もお願い」


「OK! 任せてよ!」


「責任を持って全うさせてもらおう」


 それから簡易的なルールを決めて、今日の会議は終了となった。




              ※




〇アイテム管理について


 探索後の会議にて各班は手に入れたアイテムを報告する。

 会議でアイテムのリストを作成後、桜咲、大峰の両名がアイテムを保管。

 保管されたアイテムを引き出す際は、九重、三間、両名の許可を得る。

 装備可能なアイテムに関しては、手に入れた人物が優先的に使用権を得る。




〇アイテム売却券の使用について


 アイテムを売却する際は、必ず会議を開く。

 その会議で、生徒の7割以上が賛成した場合のみ売却が許可される。




              ※

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こちらが書籍版です。
『ダンジョン・スクールデスゲーム』
もしよろしければ、ご一読ください。
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