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世界を騙す

20180217 更新1回目

           ※




 勇希には俺の持つ力の全てを伝えた。

 能力だけではなく、Fの存在について、彼女から得た情報も。


「……担任の持つ転移の力を私たちも獲得できるの?」


「ああ、Fが嘘を言っていなければな」


 勇希は黙って、何かを考え込んでいるようだった。


「そのFさんっていう人に、私は会えないのかな?」


「どうだろうな?

 俺自身、いつ会えるかわからないくらい――」


「――私にようか?」


 しれっとした顔で、唐突にFが現れた。


「なっ!? お前……」


「あなたが……Fさん?」


「そうだ。私がF――こいつにオリジナルスキルを与えたものだ」


 Fは妖艶に微笑んだ。

 なぜ、勇希の前に姿を現したんだ?


「それで九重勇希、私に話したいことがあるのか?」


「あなたの力、私にもらえませんか?」


 平然、淡々と、勇希は言った。


「ふっ、ふははははっ!

 何を言うのかと思えば――まさか力を寄越せとは……。

 聞いたか小僧? この娘、なかなか笑かしてくれるな」


 心底愉快そうに、Fは笑い声をあげる。

 これは彼女にとっても予想外の言葉だったのだろう。


「もらえるんですか? もらえないんですか?」


「率直に言えば無理だ。

 『私たち』が力を与えられる人間は自分が選んだ一人のみだ。

 そして『私たち』が選ぶのは、この人間ならこの世界を生き抜く事が出来ると判断したもののであり、『私たち』が気に入った者だけだ」


「そうですか。

 もらえないなら仕方ありませんね」


「が――例外はあるぞ」


 Fの瞳が妖しく光った。


「たとえば……だが、私が選んだ宮真大翔けいやくしゃが死ねば、別の誰かに力を与える……という選択はあるかもしれぬな」


 まるで力が欲しいなら、俺を殺してみせろ。と、勇希に言っているみたいだった。

 だが、勇希はその言葉に動揺することすらない。


「……なるほど、それはありがたいヒントです。

 力を得る事のできる可能性が出来ました」


「ふふっ、あははははははっ!

 小僧よ、この女……ただの狂人かと思っていたが、意外と使い道があるやもしれぬぞ? 寧ろ、少し前よりも人間らしくなったではないか!」


 大笑いするF。

 この様子では、どうやら勇希のことが気に入ったらしい。


「他に話せる情報があるのなら全て教えてください」


「……と、言われてもな?

 何が知りたいか話してくれねば?」


「この世界を生み出したのは誰ですか?」


「生み出した……と来たか。

 それは私も答えられぬ……」


「情報開示許可が出ていないからですか?」


「違う。それを知らぬのだ。

 一つ教えてやろう。

 その存在については、『担任』たちですらわかっていないぞ」


「なに……?」


 担任の背後にいる奴が、黒幕じゃないのか?


「さて、私はそろそろ消える。

 少し干渉過ぎた……。

 暫く出てこれなくなるかもしれぬが、大翔……10階層に到着するまでに少なくともオリジナルスキルのレベルを2にしておけ。

 お前らがこの世界を生き抜く力を示せるのなら、その時は私の知っていること話してやろう」


 言いたいことだけ伝えてFは消えた。


「……担任も知らないか」


「Fが嘘を吐いている可能性もあるさ」


「そうだね。

 でも、どちらにしても担任の背後に何かいるの間違いない。

 それと……一つ可能性に行き当たったよ」


「可能性?」


「うん。でも、それは本人に聞いてみないとわからないかな」


 その本人が担任たちを指しているのか、Fたちを指しているのか、それとも別の誰かなのか……。


「大翔くん。

 Fさんは10階層までにレベル2なんて悠長なことを言っていたけどさ。

 もっと早い段階で上げちゃおうか」


「何か方法を思い付いたのか?」


「うん……簡単な方法があるよ。

 一瞬でもいいから、世界を騙せばいいんだ」




         ※




 それから時間は過ぎ。


『第4階層の攻略許可が下りました。』


 そして、4階層の攻略許可が下りた。

 苛立たしいほどにふざけた感じの担任の声ではなく、システム的な通知だった。

 ありがたくもあるが、違和感を覚える。

 何か不吉な事が起こるのではないか?

 そんな予感がしてならない。




         ※




 全てのクラスメイトが教室に到着した。

 しかし、そこに担任の姿はない。

 暫く待ってみたが、現れる様子もなかった。


「待っていても仕方ないね。

 4階層の攻略を開始しよ――」


「お待たせお待たせ~~~~!」


 唐突に担任が現れた。

 教卓の前に立ち、俺たちに手を振っている。


「いやいや、会議があってね~~~!

 遅くなってごめんよ~。

 こう見えて先生は忙しいのだ!

 あ、それと三階層攻略の後、顔を出せなくてごめんね~」


「――先生」


 担任がしゃべっているところに、勇希は言葉を割り込ませる。


「ありゃ? 大活躍中の九重さん、なんでしょうか~?

 先生たちの評価は現在、急上昇中ですよ?

 会議でも大評判! 先生、鼻高々です!」


「ありがとうございます。

 一つお願いがあります」


 無感情に淡々と勇希は口を開く。


「ポイントを使用させてください」


「何に使うの?」


「このクラスの表記を変えたいんです」


「表記を? つまり1組を6組にしたりってこと?

 それは無理だよ~。

 この世界にはルールがある。

 仮に出来たとしても強制力が働いて元に戻ってしまいます~」


「組を変えたいわけじゃないんです。

 1の数字を一の漢字に変えてください」


 勇希の言っている事の意味を、多くのクラスメイトは理解できなかっただろう。

 だが、俺だけは彼女の意図がわかった。



――――――――――




 オリジナルスキル:一匹狼ロンリーウルフ


 スキルレベル2:解放条件――1組を辞めること。




―――――――――――――――――




 画面上の表記はこうだ。

 ゲーム画面のように……俺たちはこういった画面を頭の中に意識することが出来る。

 この世界がもし、ゲームのようなシステムにより構築されたものであるのなら、1組が一組になったとしても、俺は『1組』を辞めたことになる。

 なぜなら『1組』が存在しなくなるからだ。

 勿論、1組というクラスが変わることはない。

 はっきりいって、無謀な策かもしれない。

 だが、……それでも勇希は試す価値があると考えたようだ。


「そんなことでいいの?」


「それで構いません」


「たったそれだけの事でも、100ポイントは貰うよ?

 一瞬で一が1に戻る可能性もあるよ?」


「構いません」


 最悪、勇希は失敗しても構わないとすら思っているのだろう。

 だが可能性があるのなら全てを試すつもりなのだ。

 それだけ、オリジナルスキルの力の重要度を勇希は重く考えているのだろう。


「わかった。

 じゃあ――100ポイントを頂戴」


「ボス討伐で得たポイントがありますよね?

 あれをまだ譲渡されていませんが?」


「ややっ!? ごめんごめん。

 本当にこの間は忙しかったんだよ~。

 ていうか、九重さんのせいで忙しくなったんだけどね。

 キミはもしかしたら……あ~いや、これはまだ言えない!」


 勇希のせいで忙しくなった?

 会議をしていたと言っていたが、何があったのだろうか?

 嫌な予感がするが……。


「はい! では100ポイントを消費しました。

 1組が一組に変わりま~す!」


 担任が声を上げた瞬間――


『オリジナルスキル、一匹狼ロンリーウルフ――レベル解放条件達成しました。

 レベルが2に上がります。』


 通知が届き、スキルレベルがアップしていた。

 そして同時にこれは――この世界に何らかのシステムが、明確に存在する事を証明した瞬間でもあり、俺たちがこの世界システムのルールを一つ理解した瞬間でもあった。

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こちらが書籍版です。
『ダンジョン・スクールデスゲーム』
もしよろしければ、ご一読ください。
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