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理想主義者と支配者

20180208 更新1回目です。

 支配者の冷徹な声に従い、2組の生徒たちが武器を取り出す。

 そして迷いなく彼らは襲い掛かって来た。

 2組の生徒は10人――数の上ではこちらが有利。

 が、警戒はしていても、襲い掛かってくると思っていなかったのか、1組、5組共に身体を硬直させた。


「面白れぇ! やってやろうじゃねえかっ!」


 1うちにも好戦的な奴が一人いた。

 襲い掛かって来た2組の生徒たちに、野島は欠片の躊躇もなく応戦する。

 ヤンキーやるじゃねえか。


「おらっ!」


「はああああっ!」


 ――ギン!


 剣戟が響く。

 今の攻撃は牽制ではない。

 2組の生徒は、明らかに野島に致命傷を負わすつもりで剣を振った。


「どうして、なんで生徒同士で……」


 勇希は複雑な表情を受かべる。

 2組は生徒同士の殺し合いも厭わない。

 そのことがショックだったのだろう。


「勇希、戸惑ってる場合か!」


「……で、でも……」


 自分の行動を決めかねている勇希。

 だが、相手は待ってはくれない。


「ああああああああああっ!」


 絶叫が聞こえた。

 2組の生徒の一人が、勇希を狙い剣を振る。


「――!?」


 だが、その斬撃は勇希に届くことはなかった。

 敵の振った剣を、俺は右手の平で受け掴み取ったからだ。


「大翔くん!?」


「……決めなくちゃ俺たちがやられる」


「っ……」


 ポタポタと、刃からつかを血がつたい、地面に零れ落ちていく。

 その光景を見て、勇希は言葉を失った。

 だが、驚愕したのは剣を振った男も同じだった。

 自分の行動が生んだ結果に動揺したのか、小刻みに震えている。

 俺は空いているほうの手で、


「良かったな……手を汚さずに済んで」


「おがっ――」


 言って、男の顔面を殴り付けた。

 ボゴッ――鈍い音が鳴り、男が吹っ飛び、地面に倒れ伏した。


「大丈夫か? 勇希」


「大丈夫かって……大丈夫じゃないのは大翔くんでしょ!」

 どうして……なんでこんな無茶なこと!?」


「勇希の目を覚まさせる為だ……」


 切られた掌は、泣きたいほど痛みが広がる。

 だが、これでいい。

 この状況化でも勇希が理想を追うならば、致命的な――勇希自身の死という結果に繋がるかもしれない。

 それを避ける為には、誰かの血が必要なのだ。


「わかっただろ、勇希。

 これが今、現実で起こっていることだ」


 フロア内では生徒同士で殺し合いが続いている。

 どちらも自分が生き残る為に、大切な人を守る為に必死なのだ。

 自分たちの為ならば、誰が犠牲になっても構わない。

 多くの者たちがそう考えかねない状況で、理想を追い求められるはずがない。


「2組がいる以上、全生徒と協力して階層を攻略する。

 その理想を追うことは不可能だ」


 敢えて口にする。

 それが現実だと改めて伝える為に。


「――ごめん、大翔くん」


「わかってくれたなら――」


「私は、戸惑っている場合じゃなかった」


「え……?」


「目標と目的は決まっている。

 私の考え方は理想なのかもしれない。

 でもだからこそ――迷っている場合なんかじゃなかった」


「ゆ……勇希……?」


「私が羅刹くんを説得する」


 理想を追い求めらる状況ではない。

 だが、こんな状況でも彼女は――俺のヒーローは理想を口にする。

 あの男を……羅刹を説得?

 不可能だ。

 俺はあいつのことをほとんど知らない。

 それでも、わかる。

 わかってしまう。

 あの羅刹という男は――生まれながらの支配者であることを。


「……なら、もしここで説得できなければ、諦めると誓えるか?」


「誓えない!」


「馬鹿! なんでお前はいつもそんな頑ななんだ!」


 本当に、馬鹿なくらい真っ直ぐ過ぎる。


「出来ないって最初から思っていたら、何も出来ない!

 出来るって信じてるから、叶えることが出来るんだよ!」


 無理だと思っているのに、勇希の言葉を信じたい。

 そう思ってしまう自分がいる。

 理想は人を引き付ける。

 勇希自身が信じて理想を口にしているからこそ、俺はどうしようもなく引き付けられてしまう。


(……ああ、俺は相当、勇希に毒されてる)


 するべきことは決めた。

 だから、


「……なら、約束しろよ。

 何があっても、諦めないって!

 必ず羅刹を説得するって!」


「最初からそのつもり!」


 OK。

 聞くまでもなかったな、マイヒーロー。

 だったらその無謀に、今回は付き合ってやる!


「なら、まずは2組の生徒を殺すことなく無力化する。

 俺たちの安全を確保する。

 羅刹の説得はその後、それでいいな?」


「うん! 今のままじゃ話も聞いてもらえないからね!」


 そう言って、勇希は武器を手に取った。

 数はこちらが多い。

 1組と5組の混合チームだ。

 冷静に数で対処していけば、鎮圧は可能だろう。

 が、敵は何かに恐怖するような……それこそ俺たちを倒すことに命懸けになっているような無茶な戦い方が目立つ。

 死を覚悟した強さ……とでも言えばいいのだろうか?

 なぜこうまでして戦うのか、その理由はわからない。

 だが、その原因を生み出しているのは間違いなく――あの男、羅刹 修に違いない。

 俺は男を見る。

 すると支配者は、ニヤッと方頬を吊り上げて皮肉で、挑発的な笑みを浮かべる。


『俺を楽しませろ』


 まるで、そんな風に言っているようだった。


(……だが、そのふざけた態度がどこまで続くか)


 お前の自信の源はなんなのか、確かめてやる。

 俺は敵の無力化に動き出した。

ご意見、ご感想お待ちしております。

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『ダンジョン・スクールデスゲーム』
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