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戦いの火蓋

20180207 更新しました。

 だが、俺は予感があった。

 羅刹と柊、どちらかが今回の犯人で間違いないと。

 襲撃者のように、人を平気で襲うことが出来るということ。

 それは他人に攻撃するのに慣れているということだ。

 柊からイジメを受けていた三枝の証言は、壮絶なものだった。

 ならばもう……襲撃者が誰であるか、答えは出たようなものだ。

 2組か5組。

 どちらかに襲撃者がいるのだとしたら、可能性が高いのは2組だ。

 少なくとも表面上は間違いなく善人である扇原が、クラスメイトに悪印象を与えるような行動を取るはずがない。 

 この襲撃者は、俺たちが困惑し争うのを楽しんでいる。

 性格の悪さが見えるのだ。


「おい! あれって――」

「扉発見!」


 鷺ノ宮が声を張った。

 進んだ先に扉を発見したのだ。


「はぁ……やっと3階層、攻略終了かぁ……。

 ボク、ちょっと疲れちゃった。

 ヤマト~、胸をマッサージしてくれない?」


 返事はしない。

 こういう馬鹿発言を、たまには無視するのもいいだろう。

 ちなみにこれはイジメではないからな。

 どちらかと言えば、俺がいつもセクハラ被害に合っているのだから。


「襲撃者をまだ見つけてはいないが……どうする?」


 俺は全員に確認を取った。

 このまま3階層を攻略してしまうのは手だろう。

 だが……。


「俺たちは襲撃者の発見を優先するつもりだ」

「あたらし5組の仲間が疑われてる以上は、ね……」


 これは5組全員の総意らしい。

 全くこのチームワークの良さは尊敬する。

 1組じゃあり得ないだろうな。

 これも扇原の求心力あってのことなのだろう。

 三間と扇原――リーダーとしての資質にそこまで大きな差はないと思うが……。


「勇希、俺たちは……?」

「みんなさえ良ければ……5組のみんなと協力して、襲撃者を探そう」


 反対意見は……。


「あたしはそれで大丈夫。

 宮真くんが良ければだけど……」

「ボクもヤマトに従うよ」

「オレも宮真くんに任せるぜ」


 完全に決定を委ねられた。

 こいつら、いつも俺任せ過ぎる。


「……このパーティのリーダーは宮真君なんですか?」


 樹が俺を見て、小さく首を傾げる。


「違う。パーティのリーダーは勇希だ」

「そうなんですか。

 ですが、皆さん随分と宮真君を頼りにしているようだったので……」


 頼り……ではなく、責任を押し付けていると言えなくもないが。

 それは口にしないでおこう。


「そういえばさ~、九重さんと三枝さんってどっちも勇希なんだよね」

「うん、そうだよ。

 名前が同じだった時は少しびっくりしたよ」

「女の子で勇希ってそんなにないもんね。

 どっちかって言うと、男の子の名前だと思うから……」

「それすっごくわかるなぁ……。

 小さく頃、名前のことでからかわれたもん」

「あたしもだよ……。

 それに完全に名前負けしてるし……」


 互いに同じ名前を持つ二人だからこそ、似た苦労をしてきたようだ。

 だが……勇希がそんな男っぽい名前だとは思わない。


「いい名前だと思うけどな……」


 はっ!? しまった!?

 声に出していた。


「ふふっ、ありがとう。大翔くん」

「宮真くんにそう言ってもらえるなら、嬉しいな。

 この名前で良かったって思えたかも」


 笑みを浮かべる二人。

 なぜか肯定的に捉えられたようだ。


「宮真くんって、結構軽い人?」

「……そうではなく、正直なだけなのだと思います」


 美鈴と樹にまで突っ込まれてしまう。

 く……5組の生徒がいる時に軽率な発言をしてしまった。


「……この話はもういいだろ。

 階層攻略しないなら、とりあえず襲撃者の捜索に行くぞ」

「だな。

 さっさと犯人を捕えなくては、他の生徒も心配だ」


 無理に話を切る。

 そして、俺たちがフロアを離れようとした時だった。


「……こんなところで立ち話とは、随分と余裕があるじゃねえか」


 不敵な笑みを浮かべる男が、フロアの入口に立っていた。


「……羅刹」


 鷺ノ宮が男の名を口にする。

 そうか、こいつが……。


「鷺ノ宮……だったか?

 ……他にも何人か知ってる顔があるが……」


 羅刹の視線が、鷺ノ宮たちから俺たちに流れる。


「見たことがない顔も混じってるみたいじゃねえか」


 この男が口を開く度に、場の空気が重くなっていく。

 強者特有の威圧感とでも言えばいいのだろうか?

 羅刹の持っている雰囲気は、久我のような慢心や強がりを感じさせるものではない。

 三間や勇希、扇原のように、羅刹もまたリーダーとしての資質を持っていることは間違いない。

 だが、その資質は大きく異なるように思う。

 たとえるなら――民を蹂躙し君臨する、支配者と言ったところではないだろうか?

 そう感じてしまうのは、羅刹に付き従うクラスメイトたちに生気がないからなのかもしれない。

 彼らの瞳は虚ろで意思もなく、主に付き従う人形のようだった。


「羅刹くん、初めまして。

 私は1組の九重勇希」

「九重か……俺のことはもう知ってるみたいだな」

「5組のみんなと情報交換をしている時に、羅刹くんの名前を聞いたよ」


 流石は勇希だ。

 憶することなく、羅刹と会話をする。


「ま、それはどうでもいいさ。

 しかし1組か……」


 そう言って、羅刹の瞳は三枝の前で止まった。


「よう、三枝。

 俺を覚えているか?」

「……っ」


 三枝が後ずさる。

 羅刹の雰囲気に気圧されたようだ。


「1組には面白いことを考える奴がいるみたいだが……」


 それが誰なのか? と、羅刹は聞こうとはしなかった。


「……あの時の礼を、今してやってもいいんだが……」


 礼――というのは、三枝を引き抜いたことについて言っているのだろう。


「羅刹、何があったか知らないが、もし1組と戦うと言うのなら、オレたちは黙っていない」

「あん? 同盟でも結んだか?」

「襲撃者を探す上で協力関係を結んでいる?」

「襲撃者……か、ははっ……」


 短く笑う羅刹。


「……そうか、襲撃者ねぇ……」

「何か知っているのか?」

「さぁな。知っていたとしても話す理由はないさ」


 間違いなく、何かを知っている。

 だがそれを問い詰めたところで、答えるつもりもないだろう


「……とにかく、ボクたちは襲撃者を探す為にここを離れる」

「扉に向かうのなら好きにしてください」

「はっ、言われなくても好きさせてもらうさ」


 そう言って、好戦的な笑みを浮かべた。

 その瞬間、


「こいつらをやれ――」


 2組との戦いの火蓋が切られた。

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『ダンジョン・スクールデスゲーム』
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