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初めての戦い

 途中、通路は何本も枝分かれしていた。

 だが通路が複雑であるならそれでいい。

 その分、勇希からこいつらを引き離すことができる。


「はぁ……はぁ……」

「グガアアアアア!!」


 小柄なゴブリンたちの動きは、想像以上に速い。


(……こいつら、どんな体力してやがるんだ!)


 無尽蔵のようで、ただ走っているだけでは直ぐに追いつかれてしまう。


炎の矢(ファイアアロー)!」

「ゴブアアアアアアアアア!!」


 何度目かわからない魔法を放つ。

 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるなんて言うが、ゴブリンたちは高い身体能力と直感で炎の矢を避ける。


「……デタラメすぎるだろ!!」

「グガアアアッツ!!」


 ゴブリンが俺の服を掴み力の限りに引っ張ってきた。


「うおっ!?」


 俺は態勢を崩し、その場に倒れ込んでしまった。


「ゴブ、ゴブゴブッ!!」


 ゴブリンが顔を歪ませ笑った。

 命を摘み取ることが、楽しいと言って仕方ないと言っているみたいに。

 そして、四体のゴブリンが一斉に俺に飛び掛かってきた。

 逃げ場はない。

 だが、


「それはお前らも同じだよな」


 俺は至近距離で炎の矢を放った。

 しかも一本だけではない。


炎の矢(ファイアアロー)! 炎の矢(ファイアアロー)!!」


 出来るかはわからなかったが、魔力の限りのまとめ撃ちだ。


「ゴッ――グゲエエエエエエエエ!?」


 閃光がゴブリンに直撃すると同時に爆風が広がる。

 ゴブリンたちは吹っ飛び、全身を通路の壁に打ち付けた。

 そのまま崩れ落ちるゴブリンたち。

 すると、ゴブリンたちの身体は粒子を放ち、

 倒した……いや、気絶しているだけかもしれない。


「――いっつっ~~~~~~~~」


 一難は去ったが、俺自身も強烈な痛みに襲われる。

 爆風の熱で、制服のブレザーは焦げ落ち肌が焼かれていた。


(……あの至近距離で魔法を使ったんだから、当然か)


 念のため、とどめに炎の矢を放とうとしたが発動しない。

 どうやら、魔力切れのようだ。


「でも、なんとかなった……」


 なれない闘いで、死ななかっただけ、上出来だ。


「……今のうちに……」

『あなたはレベル2になりました。

 各ステータスが向上しました』

「は?」


 頭の中に声が響いた。


『あなたはマジックポイントを5点獲得しました。

 あなたはスキルポイントを5点獲得しました』


 れ、レベルアップ?

 ゲームで良くあるあれ?

 しかもポイントを獲得って、何かに使えるってことか?


「いや……考えるの後だ。

 今は教室に戻らないと……」


 いつまた、モンスターに襲われるかわからない。

 まだ全身は痛むが、立ち上がれないわけじゃない。

 身体は動く。


「……よし」


 後は来た道を戻って教室に戻ればいい。

 そう思いながら重い身体を動かした。

 が……。


「……ぁ……」


 しまった。

 考えなしに行動し過ぎていた。

 あの場から離れることに必死で、俺は枝分かれする通路を適当に進んでいたのだ。


「はぁ……」


 思わずため息が出た。

 身体はかなり消耗している。

 もしこのままモンスターと遭遇すれば、逃げる力すら残っていないだろう。


(……少しだけ休もう)


 魔物の声は聞こえない。

 俺はその場で座ると、通路の石壁に背中を預けた。


「いっ……」


 全身鞭打ち状態だ。

 さらに、火傷も痛む。


(……勇希たちは助かったかな)


 あのフロアから教室までなら、直ぐに戻れたはず。

 余程の不運が重ならなければきっと無事だろう。

 出来れば無事な姿を一目みたいが……俺が無事に戻れるかが一番の問題だ。

 そういえば、


(……さっき、ポイントがどうとか聞こえたよな?)


 確認できるのだろうか?

 そう思った瞬間、頭の中にゲームのような画面――スキルツリーと言われるものが浮かんだ。

 その中には二つ――白く光ったものと、黒く染まったものに分かれている。

 どうやら、白く光ったものが現状でも覚えることが可能……ということらしい。

 試しに白い画面に触れ――たわけではないが、触れるという意識をしてみると。


『マジックポイントを5消費して、魔法――雷撃ライトニングボルトを覚えますか?』


 頭の中に声が響いた。

 そして――Yes or No の画面が出ている。

 俺は一旦、NOを選択した。


「……なるほどな」


 レベルアップでポイントを獲得。

 そして自らの持つ魔法やスキルを覚えられると。

 何を選択するかはかなり重要になるだろう。

 このダンジョンには本当にモンスターがいた。

 戦いで死ぬことだってあるだろう。

 慎重に行動しなければならない以上、クラスメイトたちと話し合って役割を決めた方がいいかもしれない。

 前衛、中衛、後衛、攻撃型、補助型、回復型――ダンジョンを攻略するのであれば、パーティを組んで行動するのが理にかなっている。

 得られる魔法やスキルは個々人によって差があるのだろうか?

 いや――そんなことを考えるのは後でいいか。

 俺の場合はまずこの場を切り抜けなければならない。


「……その為には、悩んでいる暇も余裕もないわな」


 俺は獲得可能な魔法とスキルを確認した。




―――――――――――――――――――――――――――




○獲得可能な魔法


・雷撃1(ライトニングボルト)

 雷属性の魔法。

 敵に小ダメージ。

 光速の雷撃が対象を射貫く。


・治癒1(エイド)

 対象者の体力を小回復。

 軽度の状態異常も治癒することが可能。


・速度強化1(ギア)

 対象の速さを強化。

 ただし、効果は重複しない。


○獲得可能なスキル


・自己回復1

 自動回復速度向上。

 ただし回復できるのは軽度の傷のみ。

 スキルレベルで効果向上。


・気配遮断1

 自らの気配を絶つ。

 スキルレベルで効果向上。


・剣技能1

 剣を装備時に効果を発揮。

 装備者の剣術を向上させる。

 このスキルを獲得した場合、他の武器スキルを獲得できない。


・槍技能1

 槍を装備時に効果を発揮。

 装備者の槍術を向上させる。

 このスキルを獲得した場合、他の武器スキルを獲得できない。


・斧技能1

 斧を装備時に効果を発揮。

 また装備者の斧術を向上させる。

 このスキルを獲得した場合、他の武器スキルを獲得できない。


・弓技能1

 弓を装備時に効果を発揮。

 装備者の弓術を向上させる。

 このスキルを獲得した場合、他の武器スキルを獲得できない。


・盾技能1

 盾を装備時。

 盾の耐久力がアップ。


・格闘技能1

 格闘技術が向上。

 素手の戦闘も可能となる。

 格闘技能は武器スキルには含まれない。


・風属性抵抗1

 風属性に対する抵抗。

 ただし効果は低い。


・鑑定技能1

 対象の鑑定が可能。

 対象のステータスや効果の確認ができる。

 対象が自分のレベル以上の場合は鑑定はできない。


――――――――――――――――――――――――――――――





 現状、俺が獲得できる魔法と技能はこんな感じだ。

 その中で俺が重視すべきは何かと言えば、現状を『生き抜く』為に最も適したスキルだ。

 そうなると、武器技能、格闘技能、盾技能はいらない。

 今は装備がない。

 属性抵抗も候補から消す。

 風属性の攻撃を使うモンスターには効果的かもしれないが、もっと使い勝手がいいスキルを選択すべきだろう。

 残ったものから選択するとなると……。


「魔法は、治癒エイドがいいな」


 攻撃魔法は既に炎の矢を獲得している。

 補助魔法は便利かもしれないが、対象を選択できるのであれば利便性も高い。


「スキルの方は……気配遮断もありか?」


 治癒エイドは軽度の状態異常を回復することが出来るらしい。

 火傷が状態異常に含まれるかはわからないが、おそらく回復することが可能だろう。


「よし、魔法は治癒エイドにしよう。

 後はスキルの方だが……」


 自己回復、気配遮断、鑑定……どれも便利ではあるだろう。

 しかし、今回は自己回復は選択しから消そう。

 回復魔法の治癒エイドを獲得するからな。

 とはいえ、魔法は魔力を使う。

 自己回復なら魔力を使わない点は大きい。


「って……待てよ」


 そういえば俺は、ゴブリンとの戦闘で魔力を使い切ってしまったよな。

 そうなると治癒を獲得しても、魔法が使えないんじゃ……。

 気になってステータスを確認してみた。

 だが、魔力は10と表示されていた。


(……あれ?)


 確かに魔力切れしたはずなのだが……。

 そう思って暫くステータス画面を確認していると、


「あ……なるほど」


 魔力が11に増えた。

 いや、回復したのだ。

 よくみると、ゆっくりではあるが体力も回復している。

 自動回復……という奴か。

 って、あれ!?

 体力がまた減った!?

 なぜかと思ったが……恐らく、火傷のせいか?


「だとすると、速く治癒エイドで直した方がいいな」


 俺はスキルツリーを表示。

 治癒エイドを選択した。


『マジックポイントを5消費して、魔法――治癒エイド1を獲得しますか?』


 再び Yes or No の選択肢。

 俺は Yes を選択した。


『あなたは治癒エイド1を獲得しました。』


 頭の中に声が響いた。

 実際に使ってみる。

 火傷している胸の辺りに手をかざして……。


「――治癒エイド


 魔法を口にすると同時に胸の辺りが光に包まれ火傷が徐々に癒えていく。

 数秒のうちに傷が消えていた。


「……凄いな……」


 痛みもほどんど引いている。

 これなら直ぐに動けそうだ。

 ステータスを確認してみると、体力もすっかり回復している。

 代わりに魔力は3減っていたが、また暫くすれば回復するだろう。


「獲得して正解だったかもな。

 後はスキルだが……」


 気配遮断か鑑定か……。

 いや――迷うことはない。

 『今』を生きる為に必要な力と考えれば――モンスターと遭遇しないこと、教室まで逃げ切る為の力が必要だ。

 俺は気配遮断を選択した。

 使用するスキルポイントは5。

 構わず獲得する。


『あなたはスキル――気配遮断を獲得しました』


 よし。

 これで敵に察知されにくくなっているはずだ。

 だが、気を緩めている暇はない。


「行くか……」


 体力も回復した。

 考えたいこともあるが、それは歩きながらでもいい。

 俺は周囲の様子を窺いつつ、慎重にダンジョンの中を進んだ。

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