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平然と答えやがった!?

20180206 更新しました。

          ※




 軽い自己紹介の後、俺たちはダンジョンの中を進んでいく。

 合計15人。

 これまでの最大人数での行動になった。

 が、今のところ問題は起こっていない。

 それどころか探索がかなり楽になっている。

 それも5組のメンバーが優秀なことにある。

 一人一人の能力に大きな差があるわけでないと思うのだが、パーティ間での連携が段違いだ。

 モンスターを発見時も焦らず、それぞれが自分の役割をしっかりと理解した上で行動して敵を殲滅する。

 同じ1年……まだ知り合ったばかりである点は、1組も5組も変わらないはずだが、どうしてこうも差があるのだろうか?


「しかし、三枝さんのマッピングスキルは素晴らしいな!」

「ほんとな!

 扇原さんから便利なスキルがあるとは聞いてたけど、これがあるとないじゃ、ダンジョンの攻略難易度が随分と変わってくるぞ」


 探索を続けて行く中で、5組の生徒たちは三枝のマッピングスキルを絶賛した。


「ほんと羨ましいよ~。

 うちらはダンジョン内で迷うことも良くあるからさ~……」

「2階層を1組が1位通過できたのも納得だよね」


 互いの能力がバレるのが、協力のデメリットだな。


「あたしの力が、少しでもみんなの役に立ってるなら嬉しいよ」

「ちょ~役立ってるぜ!

 三枝さん、うちのクラスにほしいくらいだ!」


 マッピングスキルについて広まれば、三枝を欲しがる奴は増えていくだろう。

 最悪、引き抜いてでも手に入れる……という奴が現れてもおかしくはない。


(……ポイントは有限とはいえ、引き抜き合戦が始まらないとも限らない)


 これに関しては、どうにか対処を考えなくてはな。

 最悪、クラスの有力メンバーを全部引き抜いて……一つのクラスに集める、なんてことも不可能ではないのだから。


「あの……宮真君」


 いつの間にか隣に立っていた少女――5組の樹結花いつきゆかが話し掛けてきた。 彼女は5組のパーティの中ではサポーターのような役割だ。

 うちのパーティで言うと、役割は三枝に近い感じだな。

 戦闘中目立った役割はなかったが、補助系魔法やスキルで仲間を的確に補助していたのを確認している。


「どうしたんだ?」

「改めてになりますが、さっきはありがとうございました」

「ああ……さっきのことか?

 別に気にしなくていいぞ。

 というか、余計なお世話だったよな?

 いつきだって、治癒魔法を取得してるみたいじゃないか?」


 俺が尋ねると、彼女は小さく頷いた。


治癒エイドを使おうとしたんだけど、痺れと痛みで魔法を使うことができなかったから、本当に助かりました」

「そうか……。

 余計なお世話でなかったのなら、良かった」

「……はい」


 その後は沈黙が続いた。

 もう話すことがないのなら、俺の隣にいる必要はないと思うのだが……。


「ちょっとヤマト!

 他クラスの子を口説いてる暇があるなら、ボクとラブラブすればいいじゃないか!」

「く、口説――!?」


 此花がちょっかい出してきた。

 樹は顔を真っ赤に染める。


「今の会話のどこに口説いてる要素があった。

 樹……気分を害したらすまない。

 此花は誰に対してもこんな感じなんだ」

「い、いえ……ただ、突然のことで少しびっくりしてしまいました」


 控えめな笑みを返してくれる樹。

 なんというか品がいいこともあってか、深窓の令嬢といった言葉が似あう少女だ。


「ヤマト、やっぱりこの子に対して優しくない?」

「優しいかどうかはわからないが、わざわざ非友好的な態度を取るつもりはないぞ」

「むうううう……ボクというものがありながら、ヤマトはこういう子が好みだったんだね!」

「いや、だからどうしてそうなるなんだ……」


 此花からすると、俺はとんでもなく気が多い男に見えるのだろうか?


「ふふっ……二人とも、仲がいいんですね」


 非建設的な会話を繰り広げる俺たちの隣で、樹は柔和な笑みを浮かべた。


「そうか?」

「そりゃもう運命の二人だからね!」


 互いに熱量が全く違う。

 かみ合ってない。

 が、


「ふふふっ、やっぱり仲良し」


 樹は楽しそうに俺たちを見守る。


「……結花~、なんだか楽しそうじゃない!」

「あ、美玲ちゃん。

 少し二人と話をさせてもらっていたんです」


 美玲と呼ばれた生徒は、姉御肌な印象の少女だった。

 活発で少し気が強そうではあるが、嫌味な感じはない。

 かといって、うぇーい! みたいな軽い感じもなく、いい雰囲気を持っている少女だと思う。


「人見知りの結花が、こんなに直ぐに仲良くなれるなんてねぇ……」


 そして美玲は、俺と此花に目を向けた。


「宮真、仲良くなったからってうちの結花を襲っちゃダメよ」

「ヤマト、そんなことしたらボクも許さないからね」


 いや待て。

 だからなんで俺がそういうポジションになってるんだ。


「もう……二人ともやめてください。

 宮真君が困ってます……」


 結花が言うと、此花と美玲が苦笑してみせた。


「なんだかボク、キミとは仲良くなれそうだな」

「アタシも此花さんとは相性いいかも」

「此花さんじゃなくて、彩花でいいよ。

 ボクもミレイって呼ぶから」

「なら彩花、これからよろしくね!

 こんなわけわかんない状況だけど、少しでも友達が増えるのは嬉しいよ」


 冷静に考えれば友達など作っている場合ではない。

 だが……少しでも信頼できる相手が欲しい。

 そう考えるのはこの状況を考えればおかしいことではない。

 全クラス協力してダンジョンから脱出……というのは理想的だ。


(……だが、ポイントという制度がある以上は、どこかで綻びが生まれるだろう)


 この世界でのポイントは生命線だ。

 奪い、奪われ……という状況がいつ発生してもおかしくはない。

 世界のルールが全て把握できているわけでもない。

 最悪、生き残れるのは一クラスだけ……などという条件が発生しても、なんらおかしくはないのだ。

 だからこういった状況で、親しい人間を増やすというのは……自分の決断を鈍らせることにも繋がるだろう。

 ハグを交わす二人の少女の笑顔を見ながら、俺はそんな悲観的な事を考えてしてしまう。


「……そういえば、少し聞いてもいいか?」

「何かな?」

「答えられればで構わないんだが、5組の現在の平均レベルとかってわかるか?」


 答えにくいことは承知で俺は尋ねた。

 すると、


「今回の探索で8レベルになりました」

「うちらは扇原さんのオリジナルスキルのお陰でレベルアップも楽なんだよね」

「……ああ、扇原のスキルについて聞いているよ」


 こいつら、平然と答えやがった!?

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こちらが書籍版です。
『ダンジョン・スクールデスゲーム』
もしよろしければ、ご一読ください。
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