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襲撃者発見!

20180202 更新

「ココノエ、まさか追うの?

 もうあんな奴は放置でいいでしょ?」

「放っておけないよ!」


 勇希が駆け出した。

 俺たちもその後を追う。


「勇希、一人で先行するな!」

「……ご、ごめん。

 でも、この状況じゃ久我くんを一人にできないよ。

 襲われたって言ってたのも気になるし……」


 話しながらも歩みは止めない。

 先を歩く久我を追いながら、俺たちは話し始めた。


「久我くんとその生徒の間で、何かトラブルがあったのかな?」


 トラブル……果たしてそうなのだろうか?


「ただの喧嘩じゃねえのか?」

「ノジマってさ、やっぱ馬鹿なの?」


 野島に大して、此花は気持ちのいいくらい遠慮がない。


「あぁん!? テメェ、喧嘩売ってんのか?」

「ねぇ、わかるノジマ?

 理由や原因があって初めて喧嘩は起きる。

 でも、久我は急に襲われたって言ってたでしょ?」

「あ……言われてみりゃ、そりゃおかしな話だな……」


 理由も原因もなく人を襲うなど、真っ当な人間であればありえない。

 久我の言っていることが事実なら、無差別攻撃を行っている生徒がいるということになる。

 ただ、その行動自体に狙いがあるのかもしれないが……。


「私、久我くんを襲った相手を見つけて理由を聞きたい。

 もし理由もなく人を襲っているのなら、絶対に止めたい!」


 勇希の正義感――というかヒーローとしての強迫観念に近い使命感に火が付いてしまった。

 俺としては面倒事に巻き込まれたくはない。

 が、久我を襲った生徒を野放しにしておくことの方が、今後のリスクが大きくなる気もする。

 その二つを天秤に掛けた場合……。


「……生徒を襲う生徒がいるってのは、穏やかじゃないか」

「あたしたち、常にみんなを疑っていなくちゃいけなくなるよね……」

「猜疑心に苛まれ続けるのは、ボクもイヤかな」


 生徒同士の猜疑心が深まれば、互いに利用することすら出来なくなる。

 自分に害を成す相手の傍にいたい。

 そんな風に思う人間は、余程変わった趣向を持つ者以外にはいないだろう。

 最悪、見知らぬ生徒は全て敵……くらいの気持ちでいないと、安全は確保できなくなりそうだ。


「……大きな問題が起こる前に、対処しておいた方がいいかもしれないな」

「対処って、でも、どうやって?

 あたしたち、相手の顔もわからないんだよ?」

「だな。

 顔も知らない俺たちじゃ見つけようがない。

 だからそこは久我に頼るしかないだろ」


 俺が言うと、此花と野島は嫌そうな顔をした。


「え~……ボク、あいつと一緒に行動したくないんだけど?」

「オレもだ。

 久我を襲った相手を捕まえんのはいいんだけどよ……」


 もしこのまま久我と行動すれば、パーティ内の空気は間違いなく悪くなりそうだ。


「でも、もっと大きな問題になる前に私たちが止めないと!」

「被害に合う人が増えちゃうもんね……」

「ココノエとサエグサの言い分もわかるけどさ……」


 パーティメンバー4人が俺の顔を見た。

 どうやら俺は決断を委ねられたようだ。


「一緒に行動する必要はないだろ。

 ただ後を追っていけばいい。

 もし犯人……と断定するのはまだ早いが、そいつに遭遇したら久我が勝手に反応するだろ?

 俺たちは慎重に進むよしよう」


 俺は自分の考えを伝えた。


「……まぁ、ヤマトがそう言うなら……」

「久我の野郎は気に入らねえが、オレは宮真くんに従うぜ」


 反対派の二人も渋々納得してくれた。

 そのタイミングで――


「この先――気配察知が反応してる。

 数は10以上だ」

「またそんなに!? 久我くん待って! 一人で先行しないで!!」


 折角の勇希の呼びかけも、


「うるさい! ぼくに命令するな!」


 高慢な男には届かず、久我は歩みを止めることなくバタバタと進んでいった。

 これではモンスターに自分を見つけてくださいと言っているようなものだ。


(……本当に愚かな奴だ)


 この先にモンスターがいたら、下手すれば死ぬだろう。


(……そういえば、なんで久我はコボルドたちに殺されなかったんだろうな)


 コボルドたちはいつでも久我を殺すことが出来たはずだ。

 なのに、まるで生贄に捧げるように久我を捕えていた。


(……話を出来ないモンスターに、その理由を尋ねることは出来ないが……)


 少しだけそれが気になった。

 今後も人を捕えようとするモンスターが出て来るのだろうか?

 久我の件も含め、厄介なことが増えそうだ。


「――貴様、見つけたぞ!!」


 突然、久我が大声を上げた。

 怒り心頭な高慢男の視線の先には――


「……久我くん!? 良かった、宮真くんたちと合流出来ていたんだ」

「え……? 宮真くん……」


 聞き覚えのある声が聞こえた。

 そこには1組のリーダーである三間のパーティと、扇原子猫の率いる5組の生徒たちがいた。


「三間! なぜこの女と一緒にいる!」


 久我の激怒に三間は戸惑いを見せた。


「え……なぜって、探索中に扇原さんたちと顔を合わせて、話し合って一緒に行動することになったんだけど……」

「今すぐ離れろ! お前もこの女に襲われるぞ!」

「お、襲われるって……え? 扇原さんにってことかい?」


 眉根を顰めるながら、三間が扇原を見た。

 が、その時だった。


「宮真くん!」

「なっ!?」


 久我に襲撃者扱いされている扇原子猫が、なぜか俺に抱き着いてきたのだ。

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『ダンジョン・スクールデスゲーム』
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