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疑念

2018201 更新

「宮真くん、九重さん、怪我はない!?」


 少し遅れて、三枝たちが駆け寄って来た。


「俺も勇希も大丈夫だ。

 それと多分、クガも生きてる」

「へぇ……あのモンスターたち、殺してなかったんだ……」

「なんでなんだろうな?」


 言われてみれば確かに気になる。

 正直、生かしておくメリットがあるとは思えない。

 あのモンスターたちは、久我を使って何かをしようとしていたんだろうか?


「久我くん、大丈夫?」

「……っ、ここは……?」


 勇希の呼びかけに、久我は目を覚ました。

 意識がはっきりしないのか、ぼんやりとしている。


「待ってて! 今、縄を解くから……!」

「縄……? ――って、なんだこれは!? お前らがやったのか!? どういうつもりなんだ!?」


 こいつ、完全に錯乱してやがる。

 見当違いな久我の発言に、俺は呆れかえってしまった。


(……一人で探索に出た結果がこれか)


 想像以上にがっかりな奴だ。


「お前、馬鹿なのか?」


 俺は思わず真顔で尋ねてしまった。


「ば、馬鹿!? ぼくが馬鹿だと!」

「馬鹿じゃないなら少し落ち着いて考えろ。

 お前、何も覚えてないのか?」

「覚えて……?」


 久我は眉を顰めた。


 自分の身に何があったのか考え込んでいるようだ。 


「私たちは久我くんを探してたんだよ?」

「……探す……ぼくを?

 ……そうか、ぼくはダンジョンに入って、それで……――あいつらがぼくを――!」


 あいつら?

 コボルドのことだろうか?


「久我くん、安心して。

 モンスターなら、大翔くんが倒してくれてるから」

「モンスター? なんの話だ?」


 うん? おかしい?

 話が繋がっていない


「久我くんは、モンスターに襲われたんだよね?

 それで気を失っていたんじゃ?」

「何を言っている?

 このぼくがモンスター遅れをとったといいたいのか?

 そんなふざけたこと言ってる暇があるなら、さっさと縄を解け!」


 こいつ、マジで何様なんだ?


「勇希、俺はこいつをこのまま放置する提案をしたい」

「却下! それはダメ!」


 提案は即棄却された。


「ボクはヤマトに賛成」

「オレもだ。この態度は流石にイラっとくるぜ。

 三枝もそう思わねえか?」

「で、でも……流石に放置は……モンスターだっているんだし」


 多数決なら賛成三、反対ニで放置決定なのだが……流石に命に関わることだ。

 流石に放置することはないにしても、せめて一言礼くらいはあってもいいように思う。

「ごちゃごちゃ言ってないで、早く解け!

 ぼくはあいつらを探さなくちゃならないんだ!」

「……お前がさっきから言ってるあいつらってのは誰のことだ?」

「名前なんて知るか! どのクラスの生徒だったのかもわからない。あんな奴らにこのボクが……」


 どこかのクラス?

 ダンジョンにいる可能性があるのは、1組を除けば2組と5組だけだ。

 そして久我がダンジョンの中に入ったタイミングを考えれば……。


「まさかお前、5組の生徒とトラブルになったのか?」

「クラスなど知るか!

 だがあいつら、数に任せてぼくを攻撃してきやがったんだ!

 まさかぼくが――いや、違う。

 まともに戦えばぼくが負けたりするわけがないんだ!

 そうだ……絶対にそうだ……」


 ぶつぶつと何かを口にしている。

 こいつは相当プライドが高そうだ。

 敵に回すと面倒なタイプだな。

 しかし、ようやく何があったかわかってきた。


「なんだ?

 つまりテメェはモンスターに負けて気絶してたんじゃなくて、生徒に負けて気絶してたのか?」

「ままままま負けてなどいない!」


 久我が激しい動揺を見せた。

 どうやら間違いないようだ。

 そして誰かに負けて気絶しているところを、モンスターに囚われたわけか。


「……生徒同士で戦闘になった原因はなんだ?」

「知るか! 姿を見るなりいきなり襲われたんだ!」

「……本当か?」


 疑わしい。

 寧ろ、久我から5組の生徒に喧嘩を売った……と考えるほうが自然だ。

 そう思っているのは俺だけではないだろう。

 この場にいた全員(勇希を除く)が、訝しむような眼差しを向けていた。


「なんだその眼差しは! ぼくが嘘を言う理由があるか!?」

「勘違いって可能性はないのか?」

「あるわけないだろっ! どうやったら人間とモンスターを見間違うんだ!」


 そりゃ最もだ。

 だがそうなると、生徒同士の戦闘を平然と行える者が現れた……ということになる。

 久我の言っていることが事実なら、その人物は5組の中にいる可能性が高い。


「……時間がかかっちゃってごめんね。ほどけたよ」

「やっとか! クソっ!」


 助けてもらったにも関わらず、久我は悪態をついた。

 こいつ、やはり放置しておいたほうが良かったんじゃないだろうか?


「って――おい! お前、どこに行くんだ?」

「決まっているだろ! あの女を探すんだ!」

「女……って、キミが負けたのは女の子なの?」


 相手は5組の女子生徒?

 そう聞いて最初に連想されるのは1階層で世話になったあの女――『扇原子猫』だ。

 だが、もしあいつが相手で本当に久我を始末しようとしていたのなら、そのまま放置するようなミスはしないだろう。

 そうせざるを得ない事情があったとも考えられるが……。


(……疑念は増すばかりか)


 考えなくてはいけないことが無駄に増えたな。


「っ――う、うるさい! とにかく、ぼくはもう行く!」

「ま、待って、久我くん! 一人じゃ危険だよ!」


 勇希の静止を無視して、久我はダンジョンを進んでいく。

 今回の件で、1組のトラブルメーカーは何も反省していないようだった。

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こちらが書籍版です。
『ダンジョン・スクールデスゲーム』
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