野島、倍返しを誓う!
2018124 7時更新
「悪い、待たせた――」
「ヤマト~~~~~~~! 無事でよか――って、ぎゃああああ、何してるのさ!」
駆け寄ってきた此花が、いきなりの大ブーイング。
頬を膨らませ如何にも不満ですという顔をしている。
「俺が何をしたって言うんだ?」
「こんなおかしいよ!
なんでどうして、ノジマをお姫様抱っこしてるのさ!」
「は……?」
お姫様抱っこ……? って、これがか?
動けない野島を抱えて連れてきたのは事実だが……確かにそう見えなくもないのか?
「て、テメェー、妙なこと言ってんじゃねえよ!
オレが拘束されてっから、宮真くんは抱えてくれただけだっての」
「それはわかるけど、ノジマは頑丈そうだから引き摺って連れていけば十分だよ」
「それは、確かにな……」
確かに抱えてやる必要はなかったかもしれない。
「宮真くんまで!?」
「野島、とりあえず下ろすぞ……」
「お、おう」
俺は野島を地面に下ろした。
野島は動けない為、その場に座り込んでいる。
「大翔くん、野島くん、怪我はない?」
「ああ、とりあえずな。
向こうでとんでもないのに襲われたが……」
「お、襲われたって――じゃあ、まだ向こうに敵がいるの?」
「三枝、そりゃ大丈夫だぜ。
宮真くんがぶっ倒してくれたからな」
「そうなんだ。
流石は宮真くんだね」
三枝が安心したような笑みを浮かべる。
俺を信頼しきったような顔だ。
「ああ、流石は宮真くんだぜ」
「流石はボクのヤマトだよね!」
此花、俺はお前の物になった記憶はない。
「はぁ……二人が無事でよかったぁ……。
とりあえず、野島くんの拘束を解かないとだよね」
「そうだな」
敵を倒せば拘束も解けるのでは? と思っていたが、今もまだ拘束具は消えることはない。
恐らくだが、この岩の拘束具は魔法で作られたもの……でいいんだよな?
「三枝、拘束具に鑑定スキルを使ってもらってもいいか?」
「う、うん!」
何故か? とは俺に尋ねず、三枝は直ぐに鑑定スキルを使ってくれた。
「……え~と……あ、これは土の魔法で生み出された拘束具みたい」
予想通りか。
こういう拘束魔法みたいのもあるんだな。
俺はまだ使用できないが、もし獲得できたなら便利そうだ。
「……魔法でってことは、叩いたりしても壊せないってこと?
「実は何回か地面に叩きつけてみたんだけどよ……傷一つ付きやがらねぇんだ……」
「そっか。ノジマ、短い付き合いだったね」
「おい! 見捨てる気満々みたいな発言するんじゃねえ!」
わざわざ助け出してここに放置は、後味が悪い。
見捨てるなら最初から助けてないからな。
「大丈夫だよ、野島くん。私たちは野島くんを見捨てないよ」
「九重……お前はマジでいい奴だな。
最初の階層でもわざわざオレを追いかけて来てくれてよ……今更だが、あん時はマジで助かったぜ」
「友達を助けるのは当然でしょ?」
「まぁ、ダチを助けるのは当然だけどよ。
あん時は見ず知らずも同然だったからよ……」
以前、勇希に助けてもらったことは、野島なりに感謝しているようだ。
勇希は間違いなく善人だ。
が、見方を変えれば異常でもある。
他者の為であれば、自らを犠牲にすることをいとわない。
現実に存在するはずがない、本当のヒーローを体現しているのだから。
クラスメイトたちは、そんな勇希の本質にいつか気付くだろうか?
「ボクならノジマのことなんて見捨てたけどなぁ~。
自分の身が一番大切だしね」
勇希と対照的なのは此花だ。
彼女は自らを守ること……それを一番に考えている。
その為には俺も含めて全てを利用する。
この女はそう明言していたくらいだからな。
普段の軽い発言のせいで、そのことを忘れてしまいそうだが……。
「勿論、自分が一番大切なのはみんな一緒だよ。
それは私だってそうだもん」
「……ココノエは、自分さえ犠牲にして人を助けちゃいそうだけど」
短い付き合いなのに、此花の奴は勇希のことをよくわかってるな。
人を良く見ているのかもしれない。
「でも、誰かを進んで助けられるって、凄いじゃん!
あたしは憧れちゃうな……」
「ふ~ん、サエグサはそう思うんだ……」
パーティを組んではいるが、俺たちは互いをそこまで深く理解しているわけではない。
こういうちょっとした会話は互いを知る機会になるのだろう。
それがいい方向に働けばいいのだが……。
「盛り上がってるとこ悪いが話は終わりだ」
「そうは言ってもさ~ヤマト。
ノジマがこれじゃ動くに動けないし……」
「だから直ぐに解錠するさ」
言って、俺は野島に歩み寄った。
「え? 大翔くん、何か方法を思い付いたの?」
「ああ。ついさっき、三枝に鑑定スキルを使ってもらった時にな」
「あれで何かわかったの?」
三枝の視線が俺に向く。
答える代わりに俺は頷いた。
「この拘束具は魔法なんだよな?
だったら――魔法解除」
俺は野島の拘束具に触れると、これまた新しく獲得しておいた魔法を使用した。
すると音もなく拘束具が消滅していく。
「おおおっ! マジかよ! 拘束具が消えやがった!?」
「この魔法解除は、発動状態の魔法を消滅させることが出来るんだ」
スキルレベルは1。
効果発動条件として、直接手で触れる必要がある。
触れられない魔法に大しては効果を発動できない為、使える場面は限られる魔法だ。
(……だが、こんな早く役立つとはな)
何がどう役立つかわからないものだ。
昨日は大量に新しい魔法とスキルを獲得してしまったから、3階層探索中に他の力も使っていこう。
「宮真くんって、本当になんでも出来ちゃうんだね」
「……なんでも出来ない。たまたま、そういう魔法を持ってただけだ」
なんでも出来るなら、俺はとっくに元の世界に戻ってる。
出来ることをしただけだ。
「でも、大翔くんのお陰でなんとかなった!」
「おう! 宮真くん、マジで感謝だぜ!
助けてもらった恩も含めて、いつか必ず倍返しすっからよ!」
鋭い三白眼で、野島は俺を睨んだ。
感謝されてはいるのだろうが、倍返しとか言われるとお礼参りでもされるのかと思ってしまう。
「期待はしないでおくよ。
さ、時間を取られ過ぎたな。
探索と、三間たちの捜索の続きに戻ろう」
他の班はどうしているのだろうか?
それに、他のクラスの動きも気になる。
注意して先に進むとしよう。




