最上級のトラブル!?
2017/1201 更新しました。
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「はぁ……」
部屋に戻って来て、思わずため息が漏れた。
やっと一息つける……のだが、次の階層攻略が始まるまでに、まだやらなくてはならないことがある。
俺はスキルツリーを開いた。
「さて、何を獲得するか……」
オリジナルスキルの効果で得た、マジックポイントとスキルポイント。
俺はその使い道を考えていた。
1組の方針では生徒ごとに役割を決め、それに応じて魔法やスキルを獲得していくことになっているが……。
(……これだけポイントがあれば、気にする必要なんてないかもしれないな)
全ての役割を自分でこなせるようになるのなら、それが一番いいはずだ。
単独で生き抜くだけの力があるのなら、必要以上に群れる必要はない。
(……どちらにしても、1組を抜けても問題ないだけの力を得なければな)
俺が生き抜く為には――オリジナルスキルのレベルを上げるのが絶対条件だろう。
そして、オリジナルスキルのレベルを上げる為には、俺自身がこのクラスから抜け出さねばならない。
その為にもまずは、
(……最低限――勇希と三枝を守り抜けるだけの条件を満たせたなら……)
その時は、クラスから抜け出す為の手段を考えよう。
俺は現状の方針を決めた後、スキルツリーに表示されている魔法とスキルの詳細を確認し、単独でも『生き抜く』ということを重視して力を獲得していった。
※
「……こんなもんかな」
どれくらい試行錯誤していただろう?
俺はようやく全てのポイントを使い切った
後はモンスターとの戦闘で、新しく得た力を試すのみだ。
実戦で使ってみなければ感覚がわからないこともあるだろうからな。
(……しかし、今何時くらいだ?)
随分と遅くなってしまったかもしれない。
(……このまま休んで……いや、その前に風呂に行くか)
そう決めて俺は部屋を出た。
他の生徒はもう眠っているのだろうか?
廊下からでは物音一つ聞こえない。
(……これならゆっくりと風呂につかれそうだな)
1階まで下りて、俺は真っ直ぐ風呂場に向かった。
脱衣所に入ったが、やはり誰もいないようだ。
温泉――とはいかないが、タウンの風呂は広い。
多分、現実の学生寮の風呂も多分こんな感じなのかもしれない。
(さて、入るか)
俺はささっと服を脱ぎ、風呂場に足を踏み入れた。
温かくもやっとした空気が肌を包む。
「広い風呂を一人で使えるってのはいいも――」
「……え?」
声が聞こえた。
それは男の声ではなく。
「なっ……!?」
女の子の声で――。
「さ、三枝!?」
幻……じゃない。
視界の先には三枝がいた。
「みみみみみみ宮真くん!?
どどどどどどどどうして、ここに!?」」
「そそそそそそそれは俺のセリフだ!」
俺は間違いなく男湯に入ったはずだ。
「こ、ここって、女の子のお風呂でしょ?」
「違う。ここは男湯だ!」
「う、嘘だよ!」
「嘘なんて吐くか! お前は俺を変態扱い――っ……」
俺は思わず目を逸らした。
白いもやで三枝の姿がしっかり見えたわけじゃないが、それでも直視は出来ない。
「っ!? み、見ちゃダメだからね!」
バシャンとお湯が揺れる音が聞こえる。
「み、見るか! 俺は一度出る。
他の奴が入ってこないか見張っておいてやるから、お前もさっさと出てこいよ」
「ま、待って!」
「待てるか!」
こんなところを誰かに見られたら、俺はおしまいだ。
意図せずともクラスを追い出されることになるだろう。
だが、それはいまではない。
「で、出ていくならあたしが出るよ。
あ、あたしが間違って男湯に入ったかもしれないし……」
「かもじゃなくて、間違いなくお前が間違ってるからな」
「だったら余計だよ! ほ、他の人も入って来ちゃうかもでしょ?」
「ま、待て! 万一だが、誰かが入って来かもしれないだろ!
先に俺が出て誰も入らないように見張っておくから……」
「だ、大丈夫だよ! こんな遅い時間に誰か入ってくるわけないし!
とにかく宮真くんは目を瞑っていて……!」
バシャ~ンとお湯が跳ねる音が聞こえて、三枝が勢いよく立ち上がったのがわかった。 もうダメだ。
俺に出来ることはない。
諦めて俺は目を瞑った。
が、その直後のことだった。
「あ――きゃ!?」
「は?」
思わず目を開く。
嘘みたいなことが起こっていた。
すってころりん。
三枝が俺に向かって倒れ込んで来たのだ。
滑ったのか、それとも石鹸でも転がっていたのかはわからないが……。
「いたたたたた……」
「痛いのは俺だ……」
「え……はっ!?」
「言っておくが、俺は悪くな――」
「きゃあああああああ――もがっっ!?」
「馬鹿! 俺の人生を終わらすつもりかっ!」
慌てて三枝の口をふさぐ。
柔らかい二つの感触が俺の胸の辺りにある……のはきっと気のせいだ。
「いいか、謝罪はする。
この件に関しては俺が悪くていい。
それと言っておくが、わざとではない。
勿論、平手の一発二発は覚悟してる。
いや気が済むまでやってくれ。
とにかく、このことを他の生徒たちに伝えるのはやめろ!」
早口で言葉を紡ぐ。
最早、自分が何を言っているのかも理解してない。
だが、徐々に三枝は落ち着きを取り戻したようで、
「……ご、ごめん。
なんかあたし、めちゃくちゃ動揺しちゃって……」
「それはいい。
とりあえず俺は目を瞑っているから、その間に湯船に戻れ」
「……う、うん」
今度はちゃんと俺の言うことを聞いてくれて、
「よし。俺は浴室を出る。
暫く外で見張っていてやるから、少ししたら外に出てこいよ」
「わ、わかった。ご、ごめんね、宮真くん……」
風呂場来て疲れを癒すはずが、ダンジョンの攻略以上に心も身体も疲弊したのだった。




