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守るって約束したから

           ※




○現在判明している情報、状況。




1 スマホの電波は通じない。

  このことから、俺たちは何かしらの要因で異世界に転移している可能性がある。

  もしくは何らかの実験的な施設?




2 ダンジョンの攻略は競争?

  ダンジョンは全部で100層。

  各階層を攻略したクラスという発言から、ダンジョン攻略に参加しているのは、このクラスだけではない可能性が高い。




3 ダンジョンにはモンスターがいる。

  モンスターは人を襲う?

  【特別な力】を使うことで倒せるらしい。

  この世界では、何かしらの力が生徒たちに芽生えている。

  ステータスを確認すると、その詳細がわかる。




4 特別ポイント。

  各階層を攻略するとポイントが支給される。

  攻略順に応じてポイントの増減あり。

  用途はまだ不明。




5 ペナルティの存在。

  ダンジョン攻略が最下位となったクラスは、何らかのペナルティがあるらしい。




6 教室内は安全。

  モンスターが入って来られないらしい。




            ※




 という感じで、一つ一つ現在判明している情報を共有していった。

 どこまで役立つかは不明だが、この状況で頼れる可能性がある情報を知られたことで、クラスメイトたちが徐々に落ち着きを取り戻していく。


「えと……ごめん、きみの名前は?」

「自己紹介が遅れたけど、私は九重勇希」

「ありがとう、九重さん。

 こんな状況だけど、君のお陰で少しだけ考えが整理できたよ」

「ぁ……その……」


 勇希がちらっと俺を見たのがわかった。

 事実を伝えるべきか、一瞬悩んだのだろう。


(……頼むから余計なことは言わないでくれよ)


 そんな俺の想いを察したのか。


「……うん。

 みんなの役に立ったなら良かったよ」


 勇希は人当たりのいい笑みを浮かべた。

 こんな状況だと言うのに、男子生徒たち勇希に見惚れている。

 徐々にだが、三間と勇希を中心にクラス内のヒエラルキーができつつある気がした。


「ごめんね……大翔くん」

「いや、助かった」


 小声で謝罪されたが、寧ろ感謝だ。

 こんな状況でも、俺は出来る限り他人と関わりたくはないのだから。

 だが……本当に扉の先――ダンジョンを攻略する事になるのだとしたら、俺一人では出来ることも限られている。

 他人と協力していくことは必須かもしれないが、クラスメイトたちが裏切る可能性もある。

 そうならない為には……。


「みんな……こんな状況でなんだけど、まずは自己紹介をしないか?

 僕らはまだ、互いの名前も知らないだろ?」


 クラスメイトが落ち着いてきたのを見計らって、三間が口を開いた。


「なに呑気なこと言ってんだ!

 そんなことしてる場合かっての!」


 さっき扉を開いた三白眼の男が言った。

 その言葉には呆れと焦りが混じっている。


「今が異常な状態だってことはわかってる。

 でも、僕らを攫った首謀者は、ここが安全ポイントだと言っていたよね?

 つまり、ここで僕らは話し合いも含めて様々な準備をする時間を与えられていると思うんだ」

「話し合い? 準備? 笑わせんなよ。

 こいつらの事を信用しろってのかお前は?

 もしかしたら、オレらを攫った犯人が紛れ込んでるかもしれねえだろ?」


 三間と三白眼は互いの意見をぶつけあう。

 どちらの発言にも一理ある。

 だが、無謀な行動が命取りになるのは間違いないだろう。

 モンスターがいるかどうかの真偽はともかく、ここにいる全員――教室の外に広がる異常な光景を目にしているのだ。

 その異常を各自がどう捉えているかが、この会話に現れているようだった。


「……そうかよ。だったらオレは一人でも先に行かせてもらうぜ。

 モンスターなんて出るかっての」

「待ってくれ。一人で行くのは危険だ」

「三間くんの言う通りだよ。

 もし本当にモンスターがいたら……」


 勇希も三白眼のクラスメイトを引き留めようとしたが、


「うるせぇよ。オレは勝手に行かせてもらう」


 二人の静止を振り切るようにして、男は扉の外に出ていってしまった。


「……お、追いかけないと……!」

「ダメだ、九重さん。

 君にまで危険が及ぶかもしれない」


 先に動くメリットは確かにある。

 紙にはあえて記入していなかったが、ダンジョン内には装備やアイテムがあると言っていた。

 もしそれが事実なら道具の類は有限と考えられるのではないだろうか?

 それを先に手に入れることが出来るのなら、ダンジョンの攻略を有利に進めるようになるかもしれない。

 だが、モンスターが出る出ないはさておき、見知らぬ場所にいる以上、せめて外に行くのなら、数名で行動を起こすべきだ。

 あの男の行動はあまりにも軽率過ぎただろう。

 何があっても自業自得。

 たとえ後味の悪い結果になろうと、割り切って考えるべき――。


「……でも、見捨てられないよ!」


 勇希の発言に、思わず偽善者と言う言葉が頭に過る。

 実際に行動を起こすわけない。

 リスクが高すぎる。

 それがわからないわけ――。


「九重さん!」


 勇希が飛び出すように教室を出て行った。

 止める暇すらもなかったようだ。


(……マジか?)


 いや、当然だ。

 俺の知っている九重勇希なら、他者を見捨てられるわけがない。

 しかし、あまりにもお人好し。

 考えなし。

 危険を犯してまで他人を救おうとするなんて……俺には考えられないことだった。

 本当に……変わらない。


「……っ!」

「なっ!? キミ、ちょっと待って――」


 気付けば俺は、三間の静止も聞かず教室を飛び出していた。

 馬鹿な行動だ。

 自分でもそう思う。

 他人を見捨てる事なんて簡単だ。

 心は痛むかもしれない。

 でもそれだけだ。

 何も行動しなければいい。

 それが賢い選択のはずだ。

 そんなこと、わかってるはずなのに。


(……ああ――くそっ!!) 


 俺はあいつのことだけは――見捨てることなんて出来ない!

 守るって約束したから、だから――。

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『ダンジョン・スクールデスゲーム』
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