此花と情報交換
2017/1123 更新しました。
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あれからFは姿を見せることはなかった。
俺は夢でも見ていたのだろうか?
そんなことを思ったが、残念なことに目はすっかり覚めていた。
何より、
(……1組を辞める……か)
オリジナルスキルをレベル2にする為の条件は、変わらず提示されたままだった。
(……どうしたもんかな)
辞める……というのは、つまり別のクラスに所属しろ。ということだろう。
しかし、担任の言葉通りであるのなら俺の引き抜きには15万ポイント。
とんでもない額が必要になる。
現状では、そこまでポイントを増やすのは不可能だ。
そもそも担任が、俺が1組を抜けることを許可するだろうか?
(……本人に確認するしかないか)
結局そう結論を出して、この件に関しては一旦放置することに決めた。
考えなければならない問題は山積みだ。
まずは解決できそうな事から片付けよう。
――コンコン。
部屋をノックする音が聞こえた。
「ヤマト、いる?」
「……此花か」
丁度、話したいと思っていたところだ。
俺はベッドから立ち、扉を開いた。
「どうした?」
「……少し話せない? 聞きたいことがあるんだ」
いつもの軽い感じではない。
どうやら、真面目な話の用だ。
恐らくだが……。
「お前も会ったのか?」
「……やっぱり、ヤマトもなんだね」
言葉の意味を、此花は直ぐに理解した。
どうやら此花も【F】ど同様の存在が接触してきたのだろう。
「もしかしたら……って思ってたんだけど、ヤマトも会ったんだね」
「ああ、少し前にな。
F……とふざけた名前を口にしていたが、俺にオリジナルスキルを与えたと言っていた」
「じゃあ同じような話をしたんだね。
ただ、ボクのところに来た女の子は、クラウンって名乗っていた」
「クラウン?」
「どう考えても本名じゃないよね」
クラウン――王冠か。
だが、俺の所にきたFよりも名前としてはまともな気がする。
「……直ぐに消えちゃってまともに話も出来なかったけど、ボクたちの敵ではないみたい」
「俺のところも似たようなもんだな」
「……隠していること、沢山あるみたいだったよね」
「ああ……だが、直ぐに敵になるという事はなさそうだ」
「うん。いくつか情報を提供してもらったよ」
「なら情報交換といくか」
そして俺と三枝は互いの情報を伝え合った。
その中で、
「オリジナルスキルを持っている生徒は全部で7人だって」
俺の得ていない情報はこれだった。
「7人……思っていたよりも少ないな」
「ちなみにクラウンたちは、選んだ一人にしかオリジナルスキルを与えられないんだって」
「つまり、Fやクラウンのような存在も7人というわけか」
「そういうことになるよね」
現在判明しているオリジナルスキル所持者は3人。
1組が俺と此花、そして5組の扇原だ。
後4人……か。
各クラスに1人は、オリジナルスキル所持者がいるのだろうか?
「7人が与えられる力の詳細については?」
「そこまでは聞かせてもらえなかった。
ただ、クラウンは7人の中では、自分の力は弱い……とも言っていたよ」
対してFは自分の力は強力だと言っていた。
7人の中には序列のようなものがあるのだろうか?
「力を与える本人の力に、オリジナルスキルの強さは依存するのか?」
「……ボクはそうなのか? って思った。
実際、ボクのオリジナルスキルは強いというよりは便利な感じだしね」
此花の力は便利……であり、多様性がある。
俺の力は戦いでしか利用価値がない。
まぁ、この世界で生き抜く為には戦う力こそ必要とも言えるが……。
「……もしかしたら、近いうち此花に力を借りることになるかもな」
オリジナルスキル所持者を探すのなら、此花の力はきっと役立つ。
「それは嬉しいな。
ボクとしては早く頼って欲しいくらい
あ、ヤマト――よく見たら、キミの部屋にはベッドがあるね!」
唐突に何を言い出すんだこいつ。
「誰の部屋にでもベッドはあるだろ!」
「あ~なんだか少しだけ休みたいなぁ」
「出ていけ」
「あうっ……も~う! ヤマトの意地悪!」
俺は此花を部屋から追い出して扉を閉めた。
勿論、鍵もしっかりとかける。
(……さて、食事の時間までもう少し休むか。
それと、魔法とスキルの獲得もしておきたい)
俺が扉から離れると、再びコンコンとノックの音が聞こえた。
また此花だろう。
そう思い無視していると、続けてノックの音。
「ヤマト~、あけてよ~」
「……あけない」
「あ~いいのかなぁ? そんなこと言って?」
「……?」
「ココノエ~、ヤマトは忙しいってさ。
きっと怪しいことをしているのかもね」
「あやしいこと……?
ごめんね、大翔くん。
そろそろ夕食が出来るから、呼びに来たんだけど……」
「勇希……!?」
どうやら、さっきノックしたのは勇希だったようだ。
ていうか此花!!
怪しいことって何を言ってやがるっ!
俺は良からぬ誤解が生じる前に、慌てて扉を開いた。
「疲れている時にごめんね。大丈夫……だった?」
「いや、呼びに来てくれて助かる」
「う~ん……?
ヤマトはココノエとボクたちじゃ随分と態度が違う気がするよ」
「気のせいだろ?」
「そうかなぁ……? どう思う、ココノエ?」
「私には二人がとっても仲良しに見えるよ」
膨れる此花に、勇希はそんなことを言った。
その言葉に嘘偽りがないのは、彼女の曇り一つな笑みを向ければ一目瞭然だった。
「さ、この話はもういいだろ?
他の生徒には、もう声を掛けたのか?」
「うん。もうみんなに声を掛けたから。
5階にいる大翔くんが一番最後だよ」
順番に2階~5階までの生徒を呼んでいったわけか。
こういう連絡も通知か何かで一斉に出来れば楽でいいんだがな……。
もしくは時計を用意して食事の時間を明確に決めておくか……だが、それはポイントにもっと余裕が出来てからだろう。
「じゃあ行くか」
「うん!」
「……あ、待ってよヤマト!」
こうして俺たちは食堂に向かい足を進めるのだった。




