再び聞こえた謎の声
2017/1119 2回目の更新です。
「それじゃあ先生の役割はこれで終わりだね~。
これで先生はそろそろ戻らせて……って、あ、しまった。
三枝さんの席がなかったっけ……。
まぁ、教室で使うものに関しては先生が用意してあげよう」
手をパンと叩いた。
途端に教室に一つ、机と椅子が追加された。
「OK!
三枝さんの席はそこね!
それじゃあ、3階層の攻略がスタートする時に連絡するからね~!
ば~~~~い!」
そして担任は教室の扉を開き、ダンジョンへと消えて行った。
(……あいつは、この後どこに行ってるんだ?)
気にはなるが……追いかけても無駄か。
向こうは転移を使える。
直ぐに逃げられてしまうだろう。
(……今の俺では敵わないかもしれないが……)
もっとレベルアップすれば、担任を超える力が手に入るのだろうか?
その時は――いや、その時のことは、その時考えればいいか。
とりあえずは、
「みんな、2階層の攻略で疲れているよね。
まずは部屋に戻って少し休んでほしい。
情報交換は、三枝さんの歓迎会を込めた食事の後にやりたいと思うだけどどうかな?
その時に、色々と話を出来たらと思う」
「は、はい! よろしくお願いしましゅ」
あ、噛んだ。
三枝は緊張でガチガチだった。
馬鹿にされる――と、身構える三枝だったが、
「ふふっ、【しましゅ】って、三枝さん緊張しすぎ~!」
「そうそう。
そんなガチガチにならなくても平気だって」
意外と肯定的に受け止められていた。
これなら早く馴染めるかもしれない。
「……あ、あははっ、ごめん。
まだちょっと緊張しちゃって……」
「三枝さん、食堂まで一緒に行こうか」
「え……えと……」
いや、そこで俺を見なくていい。
【そいつらと一緒に行け】という合図の意味を込めて、俺は一人タウンへと向かう。
「ぁ……」
「どうかしたの?」
「う、ううん。それじゃあ、一緒に行ってもいいかな?」
「もちろん、それじゃあ行こう」
クラス内で俺が出来ることはもうほとんどない。
が、三枝はこれで女子グループに入れるだろう。
孤立を避けることが出来たなら、このクラスでイジメを受けるということはないはずだ。
「大翔くん、私も一緒に行っていいかな?」
「も~う、ヤマト! ボクを置いて行かないでよ!」
「そうだぜ宮真くん! オレはどこにでも付き添うぜ」
俺に付いてきたのは、勇希に此花、野島だった。
「勇希……いいのか?」
「? いいって、どういう意味?」
勇希を慕う……というか仲良くなりたいとい生徒は大勢いるはずだ。
実際、今も俺たちに視線が集まっている。
なのにわざわざ俺と……というか、野島や此花もいたのでは、他の生徒たちが入って来れないだろう。
「良くわからないけど、とりあえず行こう」
だが、勇希はそんなこと気にしていないようだ。
「むぅ! ヤマト!
ココノエさんだけじゃなくて、ボクもいるんだからね!」
「見ればわかる」
「オレもいますよ」
「……だから、見ればわかると」
あ~いや、もう答えるのも面倒だ。
「とりあえず行くか?」
「うん、行こう!」
「はぁ~……部屋で休む前にお風呂に入りたいかも……。
ヤマトも一緒にどう?」
「此花、宮真くんを誘惑してんじゃねえよ」
「というかね此花さん、混浴は禁止だよ」
「っ……こ、ココノエさんから物凄いプレッシャーが!?」
勇希は笑顔だが目は笑っていなかった。
「……まぁ、あまり煩く言うつもりはないけど、風紀を乱さない程度にね。
他の男の子だっているんだから」
「はぁ……ヤマト、混浴はまたの機会だね」
「まだ言うか」
「此花、テメェは少し遠慮しろよ?
裸の付き合ってのは男同士でするもんなんだよ!
ね! 宮真くん!」
ね! じゃねえよ!
お前、マジでそっちの気があるんじゃないだろうな?
いや、流石にそれはないか。
野島多分、男臭いだけだろう。
任侠映画とか好きそうだよな、野島って。
就寝前は念の為、鍵を掛けるとしよう。
(……しかし、随分と親しく話してくるものだ)
いつの間にか俺は、勇希以外の生徒とも普通に話している。
野島や此花から接触を持とうとしてくる事が多いとはいえ、他人から見たらこれもグループのように見えるのだろうか?
だとしたら不本意ではあるが……。
(……一人でいると逆に目立つしな)
今はこれでもいいだろう。
そう納得して、俺たちはタウンへと向かった。
※
タウンに着き、俺たちはそれぞれの部屋へ向かった。
部屋に着くと、俺は流れるようにベッドに倒れ込む。
「……はぁ」
一人になると、疲れがどっと押し寄せてくる。
そして強烈な眠気が襲ってきた。
(……一度、眠ってしまおう)
そう決めた途端――意識は落ちていった。
※
『早速、私を使ったようだな』
また声が聞こえた。
艶めかしい女の声。
昨日も俺は、この女の声を聞いている。
『誰だ?』
『目の前にいるぞ』
『目の前……?』
視界は暗い。
何も見えない。
『それはそうだ。
目を閉じているのだから、何も見えないだろう』
そうか……俺は眠っているんだ。
起きないと……。
「ほら、早く起きるといい」
言葉に導かれ、俺は意識を覚醒させる。
すると、
「…………――!?」
「起きたか」
「な、ななななななんだお前は!?」
腹部の辺りの重み。
俺の腹の上に女の子が乗っていた。
そして、
「私か? 私は……そうだな。
F……とでも名乗っておくか?」
そう名乗った青髪の少女は、俺を見下ろし妖しく微笑したのだった。




