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彼女に与えた救い

2017/1119 1回目の更新です。

「え~と……じゃあ、最終確認。

 三枝さんの引き抜きには、クラス全員賛成でいいんだよね~?」

「はい。

 僕たちは宮真くんの提案に賛成し、クラスポイント300を支出します」 


 クラスを代表して、三間が担任に答えた。

 正確には俺の持つ個人ポイント1700と合わせて、合計2000ポイント。

 これで俺は素寒貧すかんぴんだが、三枝を救うという約束の第一段階は達成だ。


「よ~し! じゃあポイントを貰うよ~。

 ポイントトレードのやり方は知ってる?」

「……ポイントはトレードできるんですか?」

「できるよ~。

 クラスや個人でポイントの受け渡しは可能。

 やり方は簡単、アイテムトレードの画面を開いて渡すポイントを入力するだけ!」


 トレードはアイテムだけでなく、ポイントを渡すことも出来る。

 実際、俺も勇希相手にポイントを渡しているからな。

 知らない生徒も多かったろうから、こうして認知されるのはいい機会だろう。


(……さて)


 俺はアイテムトレード画面を出した。

 そして担任を対象に選択して1700ポイントと入力する。


(……うん? 待てよ?)


 俺が1700ポイント。

 そしてクラスで300ポイントを払うのはいい。

 だが、


「先生、300ポイントと入力しました。

 これを送ればいいのでしょうか?」

「くれる(・・・)なら、ちょうだ~い」


 いや、今渡してはダメだ。

 

「三間、少し待ってもらっていいか?」

「どうしたんだい?」


 不思議そうな顔をする三間には答えず、俺は担任に目を向けた。


「あんたに質問がある」

「むっ、あんたじゃなくて先生!

 もしくは美々ちゃんでもOKだよ~!

 あ、先生の名前忘れてないよね? 春日美々ちゃんだぞ~?」」


 完全に忘れてた。

 が、今はそんなことどうでもいい。


「こういった生徒の引き抜きに渡すポイントは、全額まとめて渡す必要があるのか?」

「……はぁ~気付いちゃったかぁ」


 気付いた……この言葉の意味を理解しているのは、この場で俺だけだろう。

 何せクラスメイトたちは、三枝の引き抜きは300ポイントで可能だと思っているのだから。


「聞かれたからには答えるね。

 分割や一部だけ渡すというのは不可」

「それはつまり、僕がポイント数を誤ったとすると渡し損になるということですか?」

「多く渡せば先生は返せないし~、少なかったとしたら全ポイント払い直しだよ!」


 とても軽いノリで言ってやがるが、とんでもないことを言ってやがる。


「詐欺師かよ」

「むぅ……酷いなぁ~。

 こうして聞かれたからルールを教えてあげたでしょ?

 先生はイジワルしてるんじゃないからね。

 これでもみんなの味方なんだから!

 でもルールには従わなくちゃいけないの~」


 だったらそのルールを最初から教えろ。

 言ったところで教えるつもりはないだろうけど。

 いや、教えられない理由があるのかもしれない。

 情報開示の許可……とか、こいつが言っていたことがあったもんな。

 担任の上にいる存在――黒幕のような奴らがいるのは、やはり間違いなさそうだ。


「三間、確認の意味でも俺に一度300ポイントを渡してもらってもいいか?

 そこからポイントに間違いがないか確認した上で、担任に渡すというのはどうだ?」

「わかった。

 万一のミスもあるかもしれないから、それがいいね」


 まず、俺が三間から300ポイントを受け取った。

 これで手元にあるのは個人ポイント1700、そしてクラスポイント300。

 そして間違いなく、2000ポイントと入力した。


「先生、送るぞ」

「は~い。ポイントに間違いはないよ。

 ちゃ~んと受けとりました~」


 最後に面倒があったが、これで引き抜きの条件を達成した。


「後は先生に任せていいのか?」

「うん。今から三枝勇希さんを1組に転移させま~す!」


 その発言の直後――


「え……?」


 教壇に立つ担任の隣に三枝が現れた。

 目をパチパチさせて室内を見回す。


「あ、あれ……? ここって……? 宮真くん……がいる」

「俺たち1組が2組からお前を引き抜いた」

「引き、抜き……?」


 意味がわからない。

 そんな顔をしていたけれど。


「これからお前は1組の生徒ってことだ。

 ここには2組の連中は一人もいない」


 お前をイジメていた奴はここにはいない。

 それを伝える為の言葉。


「……あたしが1組の……宮真と同じクラスに……」


 まだ唖然としていた。


「あたし……ここにいていいの?」

「当たり前だろ」


 脅えたように口にする三枝に対して、俺は即答した。


「大翔くんだけじゃなくて、私ともよろしくね!」

「あとで自己紹介をしないとね」

「よろしくね! 三枝さん!」

「なんだか凄いスキル持ってるんでしょ! 一緒にがんばろうね!」


 三枝は1組の生徒たちに温かく迎え入れられた。


「……あ、えと……あたし、あれ……」


 三枝の目から涙が零れる。

 生徒たちはそんな三枝に戸惑っている。

 俺にはこの涙の意味はわからない。

 嬉しいのか、ほっとしたのか。

 それともまた別の感情があるのあk。


「ご、ごめんなさい!

 ちょっとだけびっくりしちゃった」


 ごしごしと目を擦って、


「宮真くんや九重さんから聞いているかもしれないけど、あたしは三枝勇希です!

 皆さん、これからよろしくお願いします!」


 みんなに知ってもらう為の自己紹介なのに、三枝の視線は俺に向けられていた。

 そして満面の笑顔の花を咲かせる。

 その笑顔はまるで『ありがとう』と語っているかのようだった。

 俺は三枝に、逃げ道――という救いを用意した。

 彼女の過去を知る者は、ここにはいない。

 自分を変えたいと言っていた三枝が、本当になりたい自分になれるか。

 後は本人の努力次第だろけれど……。


「改めてになるが、これからよろしくな!」

「うん!」


 こうして三枝は、俺たち1組のクラスメイトになったのだった。

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こちらが書籍版です。
『ダンジョン・スクールデスゲーム』
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