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価値

2017/1115 更新

2017/1116 主人公の持っている個人ポイントの値を修正しました。

            ※




 担任は階層を進むごとにモンスターの数は増加すると言っていたが、確かにモンスターとの遭遇率は向上している。

 ここまで5度の戦闘で、パーティメンバーのレベルは全員4まで上がっていた。

 俺がモンスターたちを引き付けている間に、他のメンバーが攻撃を加えて倒す。

 それを繰り返しただけなのだが、今のところ怪我一つなく進んでいた。

 既にかなりの時間探索をしていると思うが、まだマップは五分の一ほども埋まっていない。

 今日中に3階層の扉を見つけるのは無理そうだ。

 などと思いながら通路を進んだ先に、大きなフロアがあった。


「あ……扉があるよ!?」


 勇希の顔がぱっと明るくなった。


「ああ、3階層に繋がる扉だ」

「す、すごいじゃん! あたしたち、もう扉を見つけたんだ!」


 びっくりしつつも、三枝は嬉しそうだ。

 それは、1階層の苦労を知っているからこその反応だろう。


「ミャーたち、もう2階層を攻略しちゃったの?」

「……思っていたよりも順調だったな」


 鍛冶屋組は、想定よりも楽な攻略ができたことで拍子抜けしていたようだ。


「それはヤマトたちのサポートがあったからだよ」


 そんな中、此花だけが状況を理解しているようだった。

 だが1階層に比べて余裕があったのは事実だ。


「このままゴールすればボクたちが一番だよね?」

「ああ、間違いなくな」


 2階層攻略の通知はまだない。

 他のクラスはまだここを見つけてないのだろう。

 これならもう少し俺たちも探索を続けて、アイテムを探したり、モンスターを討伐してレベルアップを……とも考えたが、俺たちがここを離れている間に他のクラスにゴールされては意味がない。

 誰かをこの場に残して探索……というのも、勇希が納得はしてくれないだろう。

 多分、全員で行動しようって言うよな……。 

 ポイントを多く獲得しておけば、様々な点で優位に立てるのは間違いない。

 今回は十分な結果を得られた。

 これ以上は欲張るべきではないだろう。


「それじゃあ、行こうか」


 勇希が扉に触れた。


『1組の生徒が、3階層に繋がる扉を発見しました。

 よって1組は第1階層攻略完了となります』


 直ぐにダンジョン全体に攻略の通知が流れ、俺たち1組は2階層を1位通過したのだった。

 ――ただ1人、2組の三枝をダンジョンに残したまま。




             ※




 2階層を攻略した俺たちは、教室に転移していた。


「はぁ……無事に戻って来れたね」

「ああ。他のパーティは……」


 俺と勇希は室内を見回す。


「あ、あれ……戻って来てる?」

「こっちは丁度、モンスターを倒したところだぜ」

「レベルアップと同時に通知があったよね」


 思っていたよりも穏やかなムード。

 見た感じ、クラスメイト40人――誰も欠けてはいないようだ。

 しかも、


「みんな~! おっめっでっと~~~~!」


 担任クマが教室にいた。

 着ぐるみにも関わらず、ニヤッと笑っている。


「まさか1位通過するとは思わなかったよ~。

 先生、本当にびっくり!

 しかもしかも~、ボス討伐のMVPもゲットしちゃうなんてね~」


 ボス討伐――という言葉に、生徒たちからは驚きの声が漏れた。

 一体、誰が? などと憶測が飛び交っている。


「1位通過の報酬はなんとびっくり1000ポイントだよ!」


 1000ポイント――その数字に、さらに教室内はざわめいた。

 2位の時は半分の500ポイントだったのだから当然だ。

 1位と2位でこれほどまでに差がでるのか。


「ちなみに~、3位は250、4位は100、5位は50。

 順位によるポイントの割り振りはこんな感じだよ。

 連続で5位とか取っちゃうと、本当に悲惨だからね~!」


 50ポイントじゃ、日々の食事にすら困るレベルだ。

 もし連続で最下位なんてことになれば、生徒間での食料の取り合いすら起こりうるんじゃないだろうか?

 いや、だからこそ悲惨という意味なのかもしれない。


「……さて、次はボス討伐のMVPについてなんだけど……――これはそうだね。

 二人で話そうか――」


 担任が俺を見た。

 同時に室内のざわめきが消えていた。


(……なんだ?)


 疑問に思ったのも束の間。


「キミ以外の、みんなの時間を止めたんだよ~!

 その方が都合がいいんでしょ?」


 担任は俺の考えを読んだのか、そんなことを言った。


「あ、言っておくけどキミを特別扱いしてるんじゃないからね。

 これはボスを連続討伐した際の特典のおまけ。

 みんなに聞かれたら、本当に叶えたい願いを口に出来ないでしょ?」

「……そういうことか」

「だからクラスのみんなに気兼ねする必要はないよ!

 担任として、キミのお願いを1組の生徒に伝えることはないから」


 そんな配慮するのなら、この世界に対する説明がほしいくらいだ。


「……願いを言う前に質問がある。それは許可してもらえるか?」

「いいよ~。なにかな? なにかな~?」

「元の世界に帰してくれ。という願いはありなのか?」

「あ~やっぱりそれを聞くよね~。

 でもでも~~~~ざんね~~~ん!! 無理で~す!

 覚えているかはわからないけど、叶えられない願いはあるって言っておいたよね」


 やはり無理か。 

 なら、元から決めていた願いを口にするとしよう。


「2組の生徒――三枝勇希を1組の生徒にすることは可能か?」

「へぇ~、引き抜きってこと? キミ、面白いことを考えるね」


 意外にも担任は感心したように腕を組んだ。


「出来るのか?」

「原則として引き抜きも難しいなぁ~。

 クラスの担任と相談しなくちゃならないからね」

「条件次第では可能か?」

「……う~ん? ちょっと待ってね」


 担任クマが唸った。

 何かを考えているようだ


「OK。2階層で1位を取ったキミたちへのご褒美に、情報開示が許可されたよ。

 実はね生徒たちそれぞれには、活躍に応じて価格が決められているんだ」

「価格?」

「そう。だからもし、誰かを引き抜きたいのなら価格に応じたポイントを払ってもらう必要があるんだ~。移籍金みたいなものだね! 支払ったポイントの半分が移籍する生徒のクラスに振り込まれるよ」


 俺が引き抜きを口にして面白いなどと口にしていた割には、最初から引き抜きを想定していたような発言だ。

 が、ポイントで引き抜けるならそれに越したことはない。


「三枝を引き抜くのにはなんポイント必要だ?」

「ちなみに、どんな無能な生徒でも最低500ポイント必要になるよ」


 高っ!?

 2位通過のクラスであれば、ポイントが全部消えるじゃないか。

 俺が個人的に持っているのは700ポイント。

 そして、


「今回のボス討伐の報酬は何ポイント入る?」

「今回も1階層と同じく1000ポイントだよ。

 ちなみに三枝勇希ちゃんの価格は~……2000ポイントだね」

「おい、嫌がらせじゃないだろうな?」


 俺の手持ちは今、1700ポイントしかない。


「これでも割引価格!

 ちなみに現時点で1番高いのはキミで15万ポイント」

「俺……?」

「そうだよ~。で、2番目は10万ポイントで扇原子猫さんだね」


 どういう基準で価格は設定されるだろうか?

 しかも現時点という事は、価格は常に変動するということだよな?


「三枝さんはさ~、能力自体は5クラスで最低。

 なんだけど、マッピングスキル持ちでしょ?

 だから価格設定が高いの! 5クラス合わせても、マッピングスキル持ちは彼女しかいないんだから!」

「は?」


 全クラスで三枝だけ?


「マッピングはオリジナルスキルなのか?」

「違うよ」

「おい! 言ってることおかしいだろ!

 固有技能オリジナルスキルでないなら、他の生徒だって使えるはずだろ?」

「……ワタシは嘘は吐いてないよ~?

 でも、これ以上は情報開示許可が出てないから答えられませ~ん!」


 こいつ、絶対に嫌がらせしてるだろ?

 どこまで言ってることが信用できるのか……。


「とにかく2000払えば許可してくれるんだな」

「うん。キミにそれが出来ればね」


 それは、クラスメイトを説得するなんてお前には出来ないだろ? と言われているようだった。


「……やってやるよ」

「へぇ~意外。自信ありそうだね~。ま、じゃあお手並み拝見とさせていただきましょう

 もしダメでも別のお願いなら叶えてあげられるかもだから、その時はまた相談してくれていいよ~」

「わかった」

「じゃあ、時間を戻しま~す!」


 担任の言葉と同時に再び世界は動き出し、教室は一気に騒がしさを取り戻す。

 クラスポイントから300出してもらわねばならない。

 これは非常に骨が折れることかもしれないが……俺には十分な勝算があった。

10万文字突破です。

目標地点に到着しました。

ここからの更新は遅くなるかもしれません。

感想などいただければ、やる気に繋がりますのでもし読んでくださっている方がいたら、何かしらいただければ幸いです。

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こちらが書籍版です。
『ダンジョン・スクールデスゲーム』
もしよろしければ、ご一読ください。
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