鑑定スキルは便利です。
※
マッピングのお陰で、通路を進むのはかなり楽になった。
似たような景色。
迷路のような通路。
よっぽど記憶力に自信がなくては確実に迷うだろう。
少なくとも同じ個所を何度も行ったりきたりする心配はなくなった。
順調にダンジョンを進んでいくと、モンスターを発見した。
ホーンラビットが2匹。
気配遮断の効果で不意打ちすることに成功。
なんなく討伐することが出来た。
棍棒での攻撃を試してみたかったが、やはり距離を取れる魔法に頼ってしまった。
しかし、レベルアップできたのでよしとしよう。
魔法とスキルのポイントも手に入った。
1レベルが上がる事に貰えるのは、やはり5ポイントだった。
(……何を取るか)
俺は改めてスキルツリーを確認した。
治癒1と気配遮断1を獲得したことで、どちらも治癒2と気配遮断2にレベルを上げることが可能になっている。
(……1と書かれている魔法やスキルは、レベルを上げることができるんだな)
だが、レベルを2にする為には、それぞれ10ポイントが必要になるようだった。
レベル3、レベル4とあげていくうちに、獲得ポイントが増加するのだろうか?
当然、レベルを上げれば効果が強まるとは思うが、必要ポイントの増加は痛いな。
それに、レベルが上がったことが関係しているのか、獲得できるスキルが増えていた。
(……これじゃ、ポイントはいくらあっても足りなそうだ)
考えなしに使っていては、直ぐになくなってしまいそうだ。
そんな事を思いながら、新しく増えた気配察知1というスキルを確認してみる。
――――――――――――――――――
○スキル
気配察知1
解放条件。
プレイヤーレベル3以上、且つ気配遮断1を獲得することでスキル解放。
スキル効果
周囲の生物の気配を察知することが可能。、
対象のレベルが自分以上の場合、効果は強まる。
――――――――――――――――――
モンスターの存在を逸早く察知できれば、より安全に探索を進められるってわけか。
しかも、生物――ってことは、人間の気配も察知できるってことだよな?
他の生徒たちがダンジョン探索に出ているのであれば、出会える可能性が高まる。
(……獲得しておくか)
スキルポイントを溜めて、気配遮断2を獲得するのもありだと思っていたが、5ポイントならこっちも取っておいて損はない。
気配察知1を選択。
『スキルポイントを5消費して、気配察知1を獲得しますか?』
Yes を選択して、俺は気配察知を獲得した。
マジックポイントは溜めておく。
次のレベルアップで治癒2を獲得する予定だ。
「あ――宮真くん、見て、あそこに宝箱があるよ!」
宝箱……か、担任がその存在を口にしていたが、本当にあったのか。
なんだか、まるでゲームだ……。
だが、痛みがある以上は本当のゲームではない。
ゲーム的なだけだ。
「……って、ちょっと待て、三枝」
「え……?」
「その宝箱を開く前に、鑑定スキルを使ってみてくれないか?」
「え? 宝箱を鑑定するの?」
「ああ、罠が仕掛けられてるかもしれないだろ?
鑑定スキルなら調べられると思うんだ」
「!? 罠……――あ、そうか!
そういう可能性もあるかもしれないんだよね……」
今気付いた。と目を丸める三枝。
だが、これが普通の反応か。
俺が警戒し過ぎなのだろうが、宝箱だからといって直ぐに食いつくことは出来なかった。
上手い話は疑ってかかれ……ってわけじゃないがな。
「じゃあ鑑定してみるね」
「頼む」
そう言って、三枝は宝箱を凝視する。
「大丈夫みたい」
「どういう感じでわかるんだ?」
「対象の詳細がわかるの。
たとえば、この宝箱なら――」
―――――――――――――――――――
○木製の宝箱レベル1
鍵がかかっている。
罠は仕掛けられてない。
―――――――――――――――――――
「こういう情報がわかるの」
「よし、じゃあ開けてみるか」
「でも、鍵がかかってるよ?」
宝箱には鍵穴があった。
「壊せばいいさ」
俺は持っている棍棒で『木製』の宝箱をぶっ叩いた。
ボコッと鈍い音を立てて、宝箱が壊れた。
「ら、乱暴すぎない?」
「貴重な道具かもしれないだろ?」
「中身が壊れるかもしれないじゃん……」
「大丈夫だ。一応、加減はしてる」
瓦解した穴を、棍棒を使って広げていく。
すると、飲み物? が手に入った。
「なんだこれ?」
「鑑定してみよっか」
「そうだな」
「えっとね……」
―――――――――――――――――――
○アイテム名
マジックポーション
・効果
飲むことで魔力を50回復できる。
一度飲むと消滅する。
喉の渇きも癒せる。
―――――――――――――――――――
「魔力の回復薬か」
「これは宮真くんにはありがたいアイテムじゃない?」
「だな。
これで戦闘中に魔力切れをしても、直ぐに魔法が使える」
勿論、魔力を無駄に使うつもりはない。
どうしても必要な時には迷わず使わせてもらうつもりだけどな。
「しかし、喉の渇きも癒せる……か」
俺の言葉の直後――きゅう。という可愛らしい音が鳴った。
その可愛らしくも小さな悲鳴を奏でたのは、三枝のお腹だ。
「……し、仕方ないでしょ!
朝からずっと食べてないんだから……。
あ~……あたし、なんで今朝ご飯抜いてきちゃったんだろう……」
空腹は俺も感じていた。
喉も渇いている。
「……ここって、食べ物とかって手に入るのかな?」
「少なくとも、飢え死にするってことはないと思うぞ」
仮に俺たちを殺すことが目的なら、ダンジョン攻略なんて回りくどいことはさせないだろう。
それに……もしかしたら、なんだが……。
「実はドロップしたアイテムの中に食材があった」
「食材……?」
「ホーンラビットの肉……なんだが。
もしかしたら、これを料理して食べろってことなのかもしれない」
「ええええっ!? も、モンスターを食べるの?」
「俺は炎の魔法が使えるだろ?
焼くこともできるし、最悪はこれで飢えを凌げるって話だ」
「……そうなる前に、何かちゃんとした食べ物とか見つけられるといいなぁ……」
三枝は切実に願っているようだった。
文句を言える状況でないとわかっていても、やはりモンスターを食べるのは抵抗があるようだ。
勿論、俺もないわけじゃない……。
ただ飢えで死ぬなんて考えたくもなかった。




