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雑竜種《デミドラゴン》とスマートフォン  作者: 皇 咲麻
Ver X 季節ネタ
3/126

#SeasonFilm:04/01 嘘と虚実は紙一重

「ヒっくん?朝ですよ~」

「ん、んぁ・・・」

いつも通りの聞き慣れた声で目が覚める。ルイラが部屋に入ってきたということは大体午前九時、起きるのが遅いから呼びに来たってことだろう。

「早く起きないと朝ご飯作ってもらえなくなっちゃいますよ?」

「ん、起きる、起きるから・・・」

寝ぼけた目を擦りながらベッドの横に置かれた少し低めの机に置いたスマホを右手で取り、左手で敷き布団に手を当てて体を起こす。

「最近疲れてるから朝つらいなぁ・・・あ?今が九時?」

「ヒっくーん、そろそろ起きないと朝ご飯でないですよー・・・」

それと同時に、ルイラが洗濯物のかごを持ちながら部屋のドアを開けて入ってきた。

「・・・えっ?」

「ん?」

「あれ?」

「「「・・・・・・」」」

気のせいだろうか、なぜかルイラが分身しているように見えるのだが。先程入ってきたのがルイラ。今入ってきたのもルイラ。あれ、コイツ双子だったっけ?いや、いたのは姉が一人としか聞いてないが・・・。

「「えっ、何で私が!?」」

「いやこっちが聞きてえよ!なんでご丁寧にリアクションまで被ってんだ!」

遂に空間の弄りすぎで自分自身が増えたか?リアクションが一致してるし、見た感じはどちらも同じように見えるしで区別がつかない。あれ、どっちが先に入って来た方だっけ。

「「ヒっくんはどっちが本物だと思ってますか!?」」

「えっ俺に聞くの!?・・・えーっと・・・先に入ってきたルイラはどっちだ?」

「私ですけど・・・」

返事をしたのは左のルイラ。なるほど、よくわかんないけど分かった。

「じゃあそっちじゃないほうが本物だな」

「「なんで!?」」

「だって洗濯の時刻ピッタリに入ってきただろ?それより早く来た事って無いじゃん」

ルイラは洗濯物を集めるついでに人を起こす。一番南にあるこの部屋は階段から一番近い為、ルイラが入ってくるのは一番最初。九時に洗濯物を集め始めるのなら時間丁度にこの部屋に入ってくるはず。まあ、実際は洗濯物のかごを持ってたっていう理由が一番強いが。

「・・・いやー、もうちょっと誤魔化せるかなって思ったけどダメだったわね」

急に声のトーンが低くなる。左のルイラはポケットからボタンのような何かを取り出しそれを押すと―――。

「にしても良く分かったわね、そんな小さな生活習慣見逃さないとか気持ち悪いわよ」

「声真似してまで妹の変装する姉には言われたくないと思うぞ」

「えっ、あっ、お姉ちゃん!?」

全身から何かが剥げるようにパラパラと飛び散った中から出てきたのはルイラの実の姉だった。

「何やってんだレイラ、というかなんだ今の装置・・・」

「最近入手した変装道具。対象の遺伝子から全身を再現して皮膜を作るの」

「とんでもねえ装置だな・・・」

「ところでなんで私に変装してたの・・・?」

「ほら、今日って旧暦で四月じゃない、エイプリルフール、だとか」

エイプリルフールの文化はあるのか、というか旧暦って何だ。

「なんだっけそれ、嘘をついてもいい日だっけ・・・?」

「いや、よくないぞ」

「よくないんですか!?」

「という嘘だ」

「どっちなんですか!?」

「なんか賑やかだぞ、お前の妹」

「本当になぜかしらね・・・」


その後、レイラがルイラに魔力変装道具を貸して遊びに行ってしまった。

「ワープでいくらでも遺伝子情報なんて集められる奴になんで渡したんだ・・・まあいいや、飯食いにいこ」

食堂に下りると全体がいつもの賑やかさではなく謎の慌ただしさ。どうやらそっくりな自分自身がいろんなところに出現してる、と数人が話をしていて中々にカオス。

カウンター席に座るといつも通りにレイラがグラスを磨き、必要食材の整理をしていた。

「あらヒサメおはよう、若干起きるの遅かったじゃない」

「誰のせいだと・・・なんかギルドが騒がしくなってるぞ」

「そうみたいね。なんでもそっくりな自分自身が目の前に現れるとか。奇妙よね」

「は?あの装置ルイラに渡したのはお前じゃん?というかさっき俺の部屋来ただろ」

「・・・え?私、朝からここにいるわよ?」

「・・・ん?」

なんか、何かが噛み合わない。いや、何が合ってないんだ?

「あ、ヒっくん起きました?あの後大変だったんですよ」

「お、ルイラ。・・・大変って何が?」

「お姉ちゃんから渡されたあの装置、押しても反応しなくて。お姉ちゃんに聞こうと思ったらいなくなってたんですよ」

「・・・?ルイラ、私、今日あなたと会ったのは今が初めてよ?」

「え?」

「「「・・・・・・」」」

「私の目の前にいたのは・・・私に変装していたお姉ちゃんで・・・」

「レイラ自身はずっと食堂にいた・・・」

「「じゃあ、アレは一体誰・・・?」」




「あら、昼」

ギルド内の大時計が正午の鐘を鳴らす。丁度時計の針が一周回ってきたタイミングだ。

「・・・確かエイプリルフールって、午後は嘘ついちゃいけないんだっけ」

変装装置を右手に持ちながら時計を眺めるレイラは少々考え事をしたのち、持っていた変装装置を握りつぶす。

「まあ、午前中だけでも十分楽しんだからいいや」

声のトーンがさらに低くなる。もはや女性の声の高さではない。変装装置を壊したことにより体の皮膜がぱりぱりと剥がれていき―――。

「しっかしチョロイねぇ、変装の変装ってのはさすがに思いつかなかったか」

中から出てきたのは金髪の狼男、グランツ。変装と潜入の任務に関しては達人級な彼にとって声真似はお手の物。容姿を魔法で整えればバレる心配も無い。問題点があるとすれば時間制限がある事だろうか。それでも時間制限はそんなに短くはないから十分だが。

「いいよねぇ、嘘をついてもいい日。何をしても大体許されるから本気で遊びに走っちゃうよな」

実際、今回の変装騒動にグランツは何の悪気も無い。そして意味も無い。とりあえず面白そうだから新作の魔術道具を試しに使ってみた。

食堂に向かえば昼を過ぎてもそっくりな自分の話。一定回数ごとに変装の中の変装は変えているので犯人を追うとしても結局は一周して良く分からなくなる仕組み。

「おうデミドラ少年、どうした」

「あ、グランツさん。なんかさっきまでレイラのそっくりさんがいたらしいんですけど・・・」

「おおう、ここもか。あちこちでいろんなそっくりさんが出回ってるぞ」

「そんな大人数に変装できるって一体誰なんですかね・・・?」

「さあな。少なくとも・・・凄い変装の腕前ってことは確かだろうな」

そういえばコイツの出番最近なかったなと。

季節ネタは久しぶりですね。バレンタインの時にやりたかったんですけどテストが迫っていたのでやむなく見送りました。

なんかすごいアイテムが出てきたけどこれは本編で使うことはないだろうし、もし使うことになるとしたらその時はその時で解説するのでこれを読んでいないと伝わらない、とかは多分無いです。季節ネタなんていつ消すかわからないようなものですし。

エイプリルフールって皆さんは何をしますか?いや、大抵の人はただの休日なんですけど。

私の場合はやっているゲームが沢山あるから一大イベントのような気がしてます。公式が遊んでくれる日だからこそって感じですね。

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