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プロローグ

「かえで〜、この荷物はどうするのー?」


「ああ、そこに置いといて。一緒に向こうに持っていくから」


楓は自分の服を丁寧にたたむと手早くダンボールの中に入れた。


楓の周りには荷物を入れ終え、ふたをされた段ボールがあちこちに積み上げられている。


「それにしても楓がこの家を出て嫁入りするなんてね〜。母さんなんだか寂しいわ……」


「何言ってるのよ。お母さんにはお父さんがいるでしょう」


楓は服を入れ終えるとガムテープでふたを閉じた。


「はい、これで出来上がり!もう持ってく物とかないわよね?」


「多分ないと思うけど……。あら?そこの段ボールは何かしら」


母親が指差した方向には明らかに周りの段ボールとは違う古ぼけた段ボールがあった。


「あっ、忘れてた!今日物置部屋の奥で見つけたんだけど、まだ中を見てなかったわ」


楓は急いで立ち上がると置いてある段ボールを跨ぎながら古ぼけた段ボールに近づいた。


傍に座るとポケットからカッターナイフを取り出しふたを開ける。


「うわー懐かしいー!!これ高校の教材じゃない」


楓は一番上に置いてあった国語の教科書を手に取りページをめくった。


教科書はまるで新品のように真新しく折り目ひとつ無かった。


(そうよね……。高校に行ったことなんてあんまりなかったし……)


楓は教科書をそっと閉じて段ボールの中に戻そうとしたが他の教材にはさまれたある物に気づきふと手を止めた。


「――あれ、これって……」


それは、擦り切れた古い日記帳だった。


楓が17歳の時、毎日病院で書き続けたものだ。


楓は自分の青春時代がつまった日記帳に懐かしさで胸が一杯になりながら、そっとその日記帳の最後のページを開いた。


――そこには、色あせた一輪のシャクナゲの押し花があった。

かえで……17歳  身長158センチ

        持病のため幼いころから入退院を繰        り返していた病弱な少女。

        

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