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潰れた夢

燃え盛る炎と、沢山の瓦礫が眼前に広がっている。

空が暗い。夜なのだろうか。焦げ臭い。何かが焼けた臭いだ。血や、内容物が焼けた臭い。生き物?よくわからない。


「あ……あぁ……」


声が聞こえる。自分が出したのか他の何かが出したのか、わからない。


「ううう……ああ……」


また聞こえる。今度は他の何かから発せられたように聞こえた。感覚がおかしい。自分で辺りを見ているはずなのに、誰かに見せられているような、おかしな感覚。声の聞こえ方がおかしいのもそのせいかもしれない。


ざっ……ざっ……。


足音?この炎と瓦礫の中を歩いてくるような音。レスキュー隊員だろうか。


少し、おかしなことに気づく。この炎の中、全く熱くないし、息苦しくもない。どこか他人事のような、遠い感覚。例えるなら、夢。景色からして、所謂「悪夢」と言われるような夢を見ているかのようだ。


「……来ないで」


言葉だ。声らしきものを発していたのは人のようだ。しかし、視点は動かない。見えるのは炎と瓦礫。そして、よく見れば瓦礫と一緒に、人のような形をしたものも転がっている。少し離れているせいかよくは見えないが、ピクリとも動かない。もし、人だとしたらもう手遅れかもしれない。


「……来ないで」


まただ。この声の主は、何かから逃げてきてこうなったのだろうか。そして追い詰められたのだろうか。


ざっ……ざっ……。


また歩く音だ。どんどん近づいてくる。

人影が見えた。はっきりは見えない。文字どうり人影だ。しかし、どこかに映った影が見えるのではなく、影そのものが歩いてくるような感じだ。そのシルエットからレスキュー隊員でないことは確かだ。線は細く、女性のような形に見える。


どんどんそれは近づいてくる。こちらに向かって真っ直ぐに。


いきなり目の前が真っ白になる。強い光でも当てられたかのようだ。その光に目が眩み、一瞬なにが起きたかがわからなかった。視力が戻ると、人影の後方に息も絶え絶えな少女らしき人物が見える。全く知らない人だ。


その人物は手のひらに光の玉のようなものを次々と出現させては人影へぶつける。しかし、人影は全く動じない。人影はその少女の方へ近づいていく。


光の玉が人影にぶつかり、弾ける度に激しい雷鳴のような音と共に、周りの瓦礫は弾け飛んでいる。相当な衝撃波なのだろうが、全くこちらには感覚が伝わらないので、その衝撃がどれ程のものかはわからない。


少女の目がどんどん虚ろになっていく。相当無理をしているようだ。しかし、光の玉をぶつけるのをやめない。人影も進むのをやめない。少女の投げる光の玉はみるみる小さくなっている。そして、少女の発する光の玉が遂に消えそうなほど小さくなってしまった時、人影が少女の姿と重なった。人影が一瞬動いたように見えたが、よくわからない。


人影はすぐにこちらへ向いて、また歩き出した。少女がいたはずの空間には赤い霧が漂っていた。


突然、身体がとてつもなく重くなったような感覚に襲われる。今まで音以外は何も感じなかったのに、おかしい。まるで、意識を失う寸前のようだ。


その間にも人影は近づいてきて、遂に目の前にまで来た。今度はゆっくりと、その片足を持ち上げ、一気に踏みつけた。


「ぐぇ……!」


腹でも踏まれたのだろうか。声にならない声が響く。

そのあとも何度も何度も同じような声と、どこかを踏みつける音だけが聞こえ、最初は殴打するような音が、次第に湿り気を帯びたような。泥の塊でも踏みつけたような音に変わっていった。


「ひゅー……ひゅー……」


虫の息というやつだろう。息をするのもやっとのような、音。

もうこの景色を見ている主は長くない。

人影の足の裏が見える。今度は頭を踏みつける気だ。また何度も踏みつけるのか。むごいことをする。


ぐしゃっ。


そこで私は夢から覚めた。

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