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罠師ですけど戦います!!  作者: Saban
第一章: 罠師よ、常識を壊し続けろ!!
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018: 残虐と残酷で彩られた庭園

第一章:罠師よ、常識を壊し続けろ!!


018: 残虐と残酷で彩られた庭園



胸に不安と恐怖を残しつつも駆ける脚を止めない。

カリンと別れ少し経つ、しかし俺はナリィさんも気づいていたであろう事実を目前に恐怖を振り払えないでいた。

恐らく俺が向かっている場所には罠が仕掛けられている・・・


S級危険種は人並みの思考能力を有していると言われている。そんな存在が自ら俺たちへと出向く理由、そして四人いる生徒の内真っ先に捕獲されるであろう“カリン”だけ捕まらなかった理由、それらを考えると自然とパズルは完成した。


カリンは刀を帯刀していた。これは彼女が前衛職であることを現し、それは彼女がS級危険種に真っ先に攻撃を仕掛けるはずであったことの証明となるのだ。

確かクエストの受注書に書いてあった行方不明となった四人パーティは前衛一人、後衛二人・支援職が一人という構成だったはずだから、間違いなくその前衛とはカリンのことをさしているだろう。


問題なのはここだ。

支援職か後衛職の生徒がなんとかS級危険種の手から逃れられたのならまだ納得できる。しかし逃げ延びたのが“前衛職”となると、そこにはなにかしらの“思考”があるとしか思えないのだ。


つまりカリンは俺とナリィさんを捕らえるために“わざと”逃がされた可能性がある。

彼女は俺たちを“罠”へと誘導するための存在で、S級危険種がわざわざ目の前に現れたのは先を急がせる為・・・罠へと追い込むための最終工程なのではないだろうか?


もし、なにも考えずにあの場でS級危険種と戦闘を行っていたのなら、真っ先に弱っているカリンが狙われ、それを庇うようにして俺たちは全滅していたかもしれない。もしくはおそらくヤツの作戦で通り、倒すことができないならせめて捕らえられている生徒たちだけでも助けて逃げ延びるという思考に至り、カリンの誘導で罠が仕掛けられているそこへと突入し、どのみち全滅という未来が待っていた可能性もある・・・


だからこその人選なんだ。

完全に人と同じとは限らないといえ、仕掛けられているのが“罠”であるのなら、俺の専売特許だ。対策なんていくらでもできる。

確かな自信なんてないが、少なくともナリィさんはそんな俺の能力を“信じて”くれた。


『 こっちも危ないし、あっちも危ない。だから救出のほうはお願い・・・・信じてるわ 』


何度も脳内で再生されている彼女の言葉が、竦んでいる脚を進ませてくれる。


不意に視界が奥に開けた場所があることを視認し、それと同時に五感強化を施す。

集中力を高め、警戒を強める。


そしてそこが目の前に広がると同時に、俺の身体は思わぬ光景に固まってしまった。


目の前に現れたのはまるで広大な円状の庭園であった。


一面に赤の花が咲き開き、そこは辿り着くまでの薄暗い洞窟からは連想するのが難しい程に明るい何かによって照らされ続けている。

大きく開けた天井へと視線を向けると、その中心で幾重もの蔦が撒きついた“果実”のような巨大な物体がそこに射している光を放っていたらしく、その果実は太陽を感じさせるものがあり、その灯りがともされている一帯だけがいつまでも明るい昼を創りだしているように感じられた。


しかし・・・


「 なんだよ・・これ・・・・なんなんだよ!!!! 」


一見美しい光景にもとれるそこはしかし、目を瞑りたくなるほどに残酷な光景でもあったのだ。

咲き狂っている赤の花。これは学園で最初に学ぶ危険な花である“ブラッドフラワー”だ。

触れたものに棘と突き刺し、そこから吸血行動を開始。棘には返しが何十にも張られているため、肉体を傷つけずに引き抜くことは難関で、それをとるためには肉を抉らなければならない。そうしなければ身体中の血液を吸われて死ぬといった危険な花なのだ。


人の血を吸い美しく咲き狂う、恐ろしい花々。

それが一面に・・・一体、どれだけの人の命がここで奪われて・・・・


「 ・・・っ!!・・うぅ 」


思わず、胃から込み上げてきたものが吐き出てしまう。

膝をつき、荒れた呼吸を整える。しかし、どれだけ冷静を保とうと内から湧き上がる恐怖、そして憤怒の感情が止まることはなかった。


拳がギュッと音を発する程に堅く握り締められる。それは花々に隠されるように転がっている人骨を見るたびに強く、堅く力が籠められ続けた。


「 ・・・落ち着け・・落ち着け、俺 」


警戒をそのままにゆっくりと瞼を閉じ、呼吸同様に思考を整える。

今は後輩たちを助けることだけを・・・考えろ・・・考えるんだ・・・・


特訓で手に入れた狂気を押し留める集中力を持って、湧き上がるすべての感情を押しつぶす。

今俺がすべきことはいち早く後輩たちを助け出して、カリンと合流。そしてナリィさんの援護、或いはここから脱出することだ。

それだけを考えろ・・それだけでいい・・・・


「 ・・・・よし、大丈夫だ・・・もう、大丈夫 」


落ち着いた精神を持って、冷静に周囲を見渡す。

天井にでかでかと実った果実が放つ光のおかげで、視界は良好だ。


「 ・・・あんまり長居したくはない場所ね。さっさとどう動けばいいか指示しなさいよ 」

「 ちょっと待ってくださいよ。まだあんまり状況つかめてない・・・ん? 」


不意に背後から聞き覚えのある声。慌てて振り返ると、そこには頬一杯に汗を流しながらもいつもどおりの厳しい顔つきをしたエリカさんがいた。


「 ちょっ!!なんでここにいるんですか!!というかまだ魔力回復してないでしょ!! 」

「 は?何いってんのよ?少なくともあんたを余裕で倒せるくらいには回復したわよ 」


・・・・・とり頭!!脳なし!!ツインドリル!!ツンデレクイーン!!


「 駄目です。エリカさん全然回復してないでしょ 」

試しに彼女を罵倒するような言葉をいくらか浮かべてみたが、それを読まれていないということは、彼女がライン程度の魔法も使えていないということだろう。


そんなエリカさんを戦力として数えるわけにはいかない。


まぁ、読まれていたら俺の命無かったかもしれないから・・・まぁ一安心でもあるな・・・


「 ねぇ・・・ハント・・・ 」


不意にエリカさんから発せられる強烈な殺気。

なんだか・・・嫌な予感がする・・・


その考えが現実化したかのように、俺の肩に圧し掛かるように彼女の手が置かれた。

「 えぇっと・・・とり頭? 」

「 っ!! 」


エリカさんの手にとんでもない力が込められ、俺の肩がギュッと音と鈍い痛みを俺へと送る。

あっ・・詰んだ・・・


「 脳なし?・・・ツインドリル?? 」

「 ひっ・・いや、あの・・・ 」

「 ツンデレクイーぃぃぃぃんんん!!! 」

「 ひぃぃぃぃぃぃ 」


般若となった彼女が顔をグイッと近づけてくる。その表情には殺気以外には浮かんでおらず・・・うん、俺確実に死んだな、これ・・・


「 ・・・・五分 」

「 ・・・へ? 」


ポツリといった呟きと共に肩へと圧し掛かっていた重圧が解除される。

さすがに今の状況が分かってくれたのか、今だ般若となっているが、彼女は俺から一歩離れると、腕を組み、見下ろすように鋭い視線を向けてきた。

どうにか・・・生き延びることはできたかな・・・


「 五分以内に救出の指示がなければ・・・殺す 」

「 りょっ、了解しました!!! 」


前言撤回・・・俺もう駄目かも・・・・

自分でも感じたことのない恐怖は、今だかつてないほどの集中力を生み出したのであった・・・



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