017:誓いと約束
第一章:罠師よ、常識を壊し続けろ!!
017:誓いと約束
薄暗い洞窟内を駆ける。
目の前を行くカリンもアイテムのおかげで、大分ダメージを回復できたようで、その速度は中々に速い。
そしてナリィさんに任せた場所からかなりの距離をとった頃、俺は駆けていた脚を止める。
俺のその行動を見て、目の前を行くカリンも脚を止める、しかし、その顔には焦りしか浮かんでいない。すぐに彼女の鋭い視線が俺に突きつけられた。
「 何をしているのです!!!早くみんなを助けてナリィさんの援護に行かないと!!! 」
「 ・・・落ち着け、カリン。何の為に俺が“救出のほう”を任されたと思ってるんだ? 」
その返しに「えっ」と声を漏らし、カリンは唖然とした。
普通に考えるのなら、魔力を吸収してくる魔物を足止めするのなら俺が残ったほうがいいのだ。なぜなら、魔力に依存した彼女の闘い方に反して俺の戦闘方法は自然物に“干渉”して行うものであるからだ。
俺が使用しているトラップの殆どは少量の魔力で自然物に干渉、変化をもたらし効果を生み出すというもので、それを組み合わせ、工夫して使うことこそが、俺の戦い方。
いくら魔力を吸収する魔物でも自然物までは飲み込むことはできない。
それこそ、俺が“ウォールトラップ”などを使用して岩壁によってS級危険種の進行を防ぎ、時間を稼ぐなどしたほうが、ナリィさんが残るよりはよっぽどマシのはずなのだ。
それくらいの判断は彼女にもできる。なら、それを知っているうえであえて俺を救出に向かわせた訳、それは後輩たちが捕まっている“場所”にある。
「 カリン、今は急ぐことよりも“冷静”になることが重要だ。落ち着いて、三人がいる場所のことを・・・ 」
「 そんなこと!!進みながら話します!!だからっ!! 」
「 落ち着けっつってんだろ!!!! 」
思わず叫びが漏れてしまう。そんな俺の対応にカリンは「ひっ」と小さく悲鳴を上げた。
ゆっくりと一つ深呼吸を行い、気持を落ち着かせる。
「 悪い・・・俺だって少しでも早くナリィさんの援護に行きたい、けどこのまま突っ走ってたら俺たちは確実に“死ぬ”・・・俺は死ぬ訳にはいかない、お前を死なせる訳にもいかない・・だから落ち着いて俺の質問に答えてくれ、頼む・・・ 」
気持を落ち着かせ、カリンに頭を下げる。
今一番必要なのは情報だ。そしてそれを持っているのは彼女だけ、カリンが知っているモノを共有できなければ、ナリィさんの読み通りなら俺たちは死ぬことになる。
そんな俺に対して彼女は小さく「すみませんでした」と発すると、呼吸を整え始めた。
そして思い出すように、ゆっくりと言葉を口にし始める。
「 もうアレが何日前なのかハッキリとはわかりません・・・私たち四人はこのダンジョンでウルフマンの群れと戦っていたんです・・戦いは優勢でした。けど、突然地面に大穴が空いて、気がついたらこの地下空間に・・・・落下の衝撃は”アイリス”の、仲間の一人のおかげで何とか防げたのですが、ここには上位種の魔物ばかりで私たちはここから脱出できずに、ひたすらに逃げていたのです。幸い数日分の携帯食料は持っていたので、食べ物には困らなかったのですが・・・ 」
そこまで言ってカリンは言葉を詰まらせる。
そして体を震わせながら、話を続けた。
「 逃げ続けた先で・・・私たちは”アレ”と遭遇してしまったのです・・あの巨大な喰人花の魔物に・・・・アレは他の上位種の魔物とは比べ物にならない強さでした。奴の前に私たちの魔法やスキルはことごとく無効化されて・・・・ 」
喰人花の魔物という言葉が新しい欠片となり、俺の脳へと保管される。目の前のカリンは今にも恐怖で泣き出したいという気持ちを必死に抑えているのが見て取れた。
「 私たちはそいつに捕まって、”あの場所”に連れて行かれました・・・そこは・・一面が赤い花で埋め尽くされてて・・その下にほ・・骨が、人の骨が一杯あって・・蔦が、私たちに・・巻きついてて・・・それから!! 」
「 ・・・カリン、もう無理に思い出さなくてもいい・・・・・ありがとう 」
恐怖に支配されながらも、その頬に涙を伝わせながらも、それでも必死に俺へと情報を伝えようとしてくれている彼女に静止をかける。
彼女の震える肩に優しく手を置き、そして片手を残したままカリンの頭を優しく撫でた。
もう、限界だ。
彼女は精神にかなりのトラウマを負ってしまったのだろう。それを無理やり聞き出すなんて、俺にはできない・・・
情報は欠如したままだ・・・けど、やるしかない。
今だ震えている彼女に「大丈夫だ」と何度も声をかける。同時に少しでもカリンが落ち着けるようにゆっくりと頭を撫で続けた。
しかし、彼女の震えは中々止まらず、時間だけがすぎていく。
「 ・・・カリン。三人が捕まってる場所はこのまま真っ直ぐに進んだところでいいのか? 」
「 ・・・はっ、はい 」
それを耳に、手早く彼女を近くで、それでいて身を隠せそうな場所へと誘導し、その周辺に厳重なトラップを仕掛ける。
何十にも張り巡らせたトラップだ、いくら相手がS級危険種でも、倒すことはできなくとも十分な時間稼ぎにはなる。
「 カリン、俺が三人を助けに行く。だからお前はここで待っててくれ 」
「 そんなっ!!・・わ、私も・・・私も行きます!!!・・・・お願いです・・一人に・・・しないで 」
俺の言葉に、カリンは頬に涙をつたわせながらすがり付いてくる。
そんな彼女の身体をやさしく抱きしめる。
そして再び頭を撫でながらも優しく言葉を発した。
「 大丈夫だ、約束したろ?俺は生きて帰ってくる。だから待っててくれ・・・大丈夫、お前は俺が護るから 」
そう口にし、頭を撫で続ける。すると少ししてカリンは涙混じりの声で「はい」と小さく呟いた。
こうしていると故郷にいる年下の幼馴染を思い出す。
泣き虫だったそいつにもよく、こうして抱きしめてやってたっけ・・・
身体を離し、カリンを見つめ笑みを浮かべる。
「 じゃあ、行って来る。待っててくれ 」
「 まっ、待って 」
カリンの声に駆け出そうとしていた脚を止める。
「 あの・・・もう一度、誓ってしてくれませんか・・・・絶対に生きて帰ってくるって 」
「 ・・・・あぁ、絶対に、絶対に生きて帰ってくる!!!約束する!!! 」
言葉と同時にこれまでに無いくらいの笑みを浮かべる。
そして、再び彼女から視線を外し、俺は三人が捕まっているであろうそこへと駆け出した・・・




