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罠師ですけど戦います!!  作者: Saban
第一章: 罠師よ、常識を壊し続けろ!!
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012:突入

第一章:罠師よ、常識を壊し続けろ!!


012:突入


崖上の森をナリィさんと共に駆けていく。

A級危険種との戦闘を終えた俺だが、そのためにエリカさんはその殆どの魔力を消費してしまった。八十回に及ぶ魔法を用いた施術のうえ、その際にも結界の維持、魔物の拘束を行ってくれていたのだ、魔力がなくなってしまうのも当然だ。


そのため、エリカさんには魔力が回復するまで待機してもらうことにし、俺とナリィさんとで探索を開始したのだ。


俺たちの目的地は二人が教えてくれたかつてこの森にいた民族達が残した“謎の痕跡”がある場所であった。


ソリテュードの森には以前から“魔力がなくなった為に起動しなくなった”と推測される民族達の“痕跡”が何箇所もあったようで、先ほど俺たちが休憩を行った頭上に大木が交差していた場所もその一つだったようだ。


S級危険種が彼らと対峙していたというなら、それを見つける為にはその痕跡を辿るのが一番早いと考えての行動であった。


「 さっ、ついたわよ・・・って、あら?何も無い・・・ 」


先行していたしていたナリィさんが脚を止めるが、そこには広がった草原以外特に目立つものは何も無い。

彼女は「おかしいな」と何度も呟きながら周囲を探り始めた。

それに続いて俺も何か手がかりがないかを警戒してみる。


「 えっと・・ここにはなにがあったんですか? 」

「 ここには、草原の中心ぐらいの所に大きい円状に大木が積み重ねられたナニカがあったはずなんだけど・・おかしいな 」


しかし、どれだけ周囲を見渡しても彼女がいうようなナニカなど視界に映らない。

本当にここにあったのだろうか?


不意に俺の嗅覚が“臭い慣れた”ある香り感じ取る。


「 これは・・火薬?なんでこんなところで・・・ 」

ボムトラップを研究していた時に何度となく鼻にした香りを間違える訳がない。

それを辿って草原を進む。


「 ?・・ハント君、どうしたの? 」


香りはどうやら草原の中心から発せられているようで、そこはナリィさんが話していたナニカがあったはずの場所であった。そこから火薬の臭いが香っている。


片膝を付き、それが香る砂を手にとって見る。

これは・・・そういうことか・・・


組み合わさったパズルが隠された謎を、行方不明となった生徒達の居場所を導き出す。


「 ナリィさん、ここから近い痕跡に案内してください。S級危険種、そして生徒達の居場所がわかりました 」


「 え!!?・・・わっ、わかったわ!!付いて来て!!! 」


再び森を走る。

何度も蘇生を繰り返しては戦闘を行っていた為か、以前ウルフマンに追いかけられた時のように息が切れることがない。加えて、結構な距離を走っているはずなのだが、今だに足の痛みもない。


そうして走ること約十分と数秒の草原に別の痕跡があった。

それはナリィさんが先ほどいったようにその中心付近となる場所に円状となるよう大木が積み上げられている。


「 ・・・やっぱりか、どうにかなるか? 」

円の中心へと歩を進め再び片膝を地面へと付ける。

そしてネメアで指先を硬化し、手でそこを掘り進める。その様子をナリィさんは疑問を浮かべながら眺めていた。


まぁ、俺自身“本物”を見るのはこれが初めてなんだが・・


「 えっと、何をしてるの?ハント君? 」

「 掘り出してるんですよ、火薬を 」


俺の言葉に「火薬?」と再び彼女は疑問を浮かべる。

そんなナリィさんに答えを教えるために一度手を止め、彼女へと向き直った。


「 この痕跡は“魔力がなくなった為に起動しなくなった”って訳じゃないんですよ。単に魔力が必要じゃないだけです 」


「 魔力がいらない? 」


「 簡単な話ですよ。これは魔法トラップができるよりも前にできた、原始的な手段でつくられた罠だったんですよ。火薬と、大木と砂、石、縄で手作りされたトラップ。言われてみれば正しいんですよね、魔法吸収能力を持つ魔物相手に設置型の魔法トラップを使うなんて、ただ餌を与えているにすぎないですからね 」


地面を掘り進め、頭を出した火薬が入った木箱を確認し、手を進めながらも更に話を続ける。


「 大型危険種用のトラップだから人が数人歩いたぐらいじゃぁ反応しないけど、そこに魔物の大群、例えばウルフマンの群れが加われば話は別。規定値の重量に達した瞬間、足元は崩れ、更にこの火薬によって空いた穴を埋めるって罠ですね、これ・・・でも、それなら・・・ 」


火薬を取り出し、ナリィさんへと向き直ると彼女も俺が言いたいことを理解してくれたようで、真剣な顔つきのまま首を縦に振る。


「 そうね、S級危険種は崖上の魔物たちを“支配している”可能性がある。つまり、“ダンジョンマスター”ってことね。まさか、こんな森にもいたなんてね 」


ダンジョンマスター。これは文字通り、そのダンジョンを事実支配している魔物のことを刺している。

そこにいる生物の頂点に立ち、それらを従える強力な魔物。最近では複数のギルドが手を組み討伐を行っているようだが、まさかお初にお目にかかる機会ができるなんて・・・


しかし、気落ちしている暇などない。

木箱の中から何かの役に立つかもしれないので、火薬を少量取り出し、それを丁重に荷物へとしまいこむ。


「 一応火薬は回収したんでこれで生き埋めになることはありません。本来なら大穴空けて突入したいんですが、ここに封じられているやつを外に出すわけには行きません。だから俺が“フォールトラップ”で小さな穴を開けます。そこから突入。そして生徒達を助けて脱出しましょう 」


俺の言葉に彼女は黙って首を縦にふる。

S級危険種。できることなら戦力不足である今は戦うことを避けたいのだ。俺が以前よりは戦えるようになっているとはいえ、それでもその魔物を倒せる確立は限りなく低い。


「 それじゃぁ行きます・・・セット、フォールトラップ 」


発動キーと共にカードケースから放たれたそれは地面へと溶け込んでいきその設置を終える。そしてナリィさんに合図を送ると、俺はそこへと飛び込んだ・・・


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