白くなった狼 2ページ
噂を聞きつけて子ヤギがいるという森とやってきたのはよかったのだが、うっかり高いところから落ちて怪我をしたという。
するとそこへ、一人の女性が現れたのだ。
てっきり怖がられるものかと思いきや、彼女は怪我をした姿を見るとかまわず手当してくれたのだという。
その女性が、それはもうかなりの美人で、手当が終わった後には持っていた食料も分け与えてくれたそうだ。
「おい。まさかとは思うが。」
「惚れたね。」
だろうなぁと、赤ずきんを被った狼はため息をついた。
「そりゃあ美人で気立てが良いお人よしだってんなら、惚れても仕方ないだろうよ。」
「お、なんだ。あっさり受け入れてくれたな。でも、それが問題でよ。」
「ん?人間に惚れたってこと以上に、何が問題だってんだ。」
「彼女、子ヤギたちの母親だったんだよ。」
一時の間を置いて、「は?」と赤ずきんの狼は口をあんぐりと開けて言った。
「ちょっと待て、惚れたのは人間の女なんだよな。なんで子ヤギの親が人間なんだよ。」
「まぁまぁ落ち着いて話を聞けって。おいらだって最初は驚いたもんさ。」
なんでも、子ヤギたちの親が亡くなってしまったので人間の彼女が母親代わりとして世話をしているのだという。
本当に優しい人なんだなと感心していると、白い狼はまるで自分のことのように自慢げにしていた。
「ってことはだ。彼女のために子ヤギを襲うのは諦めたのか。」
「そういうこった。」
「で、どうしたらそうなる。」
真っ白な体を見渡しながら聞いた。
「その話はここからなんだ。」
遠い目をしながら、相手は続きを話し出した。




