癒し
「お兄ちゃんが加奈子さんと」
「優一と加奈子がどうした?」
「キs……」
「言ってくれてありがとう。それ以上言わなくていいよ」
涙が溢れるとまた優しく撫でた。ずっと……私が泣き止むまで。
外が暗くなると剣斗は机の上の教科書やノートを片付け始めた。私は泣いたせいか放心状態でいると剣斗は私の手を引いた。
「帰るぞ」
手に引かれるまま、ついて行き、気付くと剣斗は私のバックを持っていた。手をバタバタとさせて荷物を持とうとすると、手が届かないほど高い位置まで持ち上げられた。
「意地悪止めてよ」
剣斗はお兄ちゃんと違って、いつも私をからかって遊んでいる。正直何が楽しいのか私には分からない。
「あ、今日晩飯エビフライなんだけど食べる?」
到頭な質問に少し戸惑うと剣斗は頭を掻いて目を反らした。
「嫌なら、いいけどさ」
「嫌じゃないよ。久し振りに剣斗くんの家行きたい」
剣斗くんはあまり裕福な家庭ではないけど家族が皆、暖かくて、とても優しい。私の両親が亡くなった時も温かいココアを出して、泣いている私を眠るまで慰めてくれた。
「今おばさんいる?」
「いや、パート」
「そっか……」
「でも、8時頃に帰ってくるから」
「本当!」
嬉しさに目を輝かせると、剣斗はドアを開けた。
久し振りに嗅ぐ、懐かしい匂い。