見たくないです
首を傾げて、瞬きを数回すると加奈子さんはお兄ちゃんの方に近寄り、キスをした。
「えっ……」
私は思わず、目を反らした。
私には全くどういう事か理解出来なかった。
お兄ちゃんと加奈子さんがキスをした。あの奥手のお兄ちゃんが加奈子さんと?
加奈子さんは微笑んでお兄ちゃんの手を引いて、こちらに向かって、私は思わず物陰に隠れて、お兄ちゃんの表情を見た。
嬉しそうだった……。お兄ちゃんも男なんだ。
私はごみを捨てると教室を駆け上がった。
近くの教室にかけ込み、鍵をかけてしゃがみこんだ。
お兄ちゃんいつから付き合ってたの……。
加奈子さんとどこまでやったの?
「お嬢さん、どうした?」
聞いた事のある声に反応して、声の方に顔を向けるとシャーペンを握りしめて、勉強してた剣斗がいた。
「剣斗くん、なんでいるの?」
「なんでって、俺のクラスだし」
「ごめん……勉強の邪魔した」
教室を出ようとすると剣斗は立ち上がった。びっくりして、振り返ると剣斗は「邪魔してないから、ここにいていいよ」と大声で話した。数秒立ち止まると、私は隅っこでしゃがんだ。
「こっち来いよ。風が気持ちいいから」
私は静かに剣斗の前に座り、ほのかに当たる風を感じていた。
「優一と喧嘩したか?」
「ううん」
「テストで赤点とった?」
「とってない」
「どうした?」
「別に」
「言わなきゃ分かんないぞ」
「……」
黙りこむと剣斗はペンを置き、頭を優しく撫でた。
静かに泣くと剣斗は私の肩を抱き寄せた。私は驚いて小さく肩を動かすと手を離した。