私が好きなのはお兄ちゃん
「お兄ちゃん、御飯冷めちゃうから食べよう」
「そうだな」
御飯を食べて、お兄ちゃんの話を聞いて、勉強を教えてもらって、私だけがお兄ちゃんを独り占めできる。
「風呂入ったら寝るから、おやすみ」
「おやすみなさい」
バタンとドアを閉めて、部屋に戻るのを確認すると私は透かさず、お兄ちゃんが寄りかかっていたクッションに抱きつく。
「お兄ちゃんの使用してる物になりたい」
クッション、筆記用具、枕、布団、 眼鏡、ハンカチ、箸……。お兄ちゃんの物なら何でもいい。
クッションに顔を埋めて、ゴロゴロと転がり、急にピタッと止まり、ハッとする。
「もしかすると、お兄ちゃんは天使なのかも」
三日月が寝転がってる私を見て、小さく笑ったように見えた。
ーーー
翌日。二人分のお弁当を作り、新聞を読んでいるお兄ちゃんにお弁当を渡す。お兄ちゃんは新聞を閉じて、微笑む。
守りたい。その笑顔。
「いつもありがとう」
「どういたしまして」
ご飯、味噌汁、魚、野菜、栄養バランス完璧の朝食を並べて、満足そうにお兄ちゃんは食べてると、玄関から声が聞こえてきた。
「優一、琴乃! 来たぞ!」
「お兄ちゃん、剣斗くんが来たね」
「あいつは放置しても大丈夫だ。時間は余裕だし、
ゆっくり食べよう」
「そうだね」
ドタドタと騒がしい足音が聞こえて、爆弾が爆発したかのような勢いでドアを開けた。
「お前ら何のんびり食ってるんだよ。遅刻するぞ」
「不法侵入だ。訴えるぞ」
ギロリと睨み付けて味噌汁を飲むと、剣斗は困った顔をした。
「まあまあ、そんなに怒るなって」