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本当に好きな人というもの


「門限があるから帰るわ」


加奈子さんは教科書とノートを片付け始めた。

すると、お兄ちゃんは教科書やノートの入った加奈子さんの鞄を持ち、立ち上がった。


「琴乃、加奈子を送っていくから」

「あ、うん。いってらっしゃい……」


お兄ちゃんと加奈子さんは部屋を出た。ペンの走る音だけがリビングに響いて、私はペンを止めた。 そして、隣にいる人の服を引っ張った。


「お兄ちゃん、この問題分かんない」

「あんたの兄なら、今頃彼女とラブラブしてるけど」


私は固まり、暫く落ち込み、私はその顔を誤魔化すように勢いよく、剣斗の背中を叩いたら、剣斗は私の感情に勘づいたのか少しムッとしていた。


「ちょっと、あなた、俺を何だと思ってるんですか」

「彼氏」

「そうだけとさ……」


嫌な静寂に包まれていると、剣斗は私の手を強く握り、再び口を開いた。


「琴乃は優一の事が好きかもしれないけど、俺にだって好きな人いるんだよ」


痛いくらい手を握りしめて、震える声はだんだん今にも泣きそうなくらいか弱い声に変わっていった。


「琴乃は小学校の時から優一を見てて、いつも優一の事になると目を輝かせていた。だけど、俺だって琴乃の事好きなんだ」


いつもニコニコと太陽みたいに馬鹿みたいに笑って、すぐにちょっかいを出す彼は居なかった。私の目の前にいたのはただ真面目に自分の気持ちを好きな人に伝えた男性だった。


「もし、琴乃が優一の事が好きなら、髪を黒染めするし、制服だって真面目に着る、ピアスも取るし、勉強も運動もあいつに勝ってやる。俺は琴乃のためならなんでもやるよ」


剣斗は顔を上げて、私を見た。

すると、剣斗は驚いた顔を私に向けた。


思いを伝えた男性の目の前にいた少女は静かに大粒の涙を溢していた。


「このストーカー野郎」

「第一声がそれかよ」

「でも、嬉しい。私に対してそんな風に考えてくれる人なんてもういないと思ってたから」


泣いている私の後頭部に触れ、剣斗はそっと抱き寄せた。戸惑いはあったものの、彼の暖かい優しさに私は断る理由はなかった。


「……あの、琴乃さん? 俺の胸で寝てらっしゃるのですか」


静かになったリビングで剣斗は私の頭を撫で、そして、「いつもお疲れさん」と小さく呟いた。


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