一般の人から見たら、幸せなのか
弁当はウマイって言ってくれて、残さず全部キレイに食べてくれた。特にハンバーグが美味しいと言ってくれた。彼女としてはそれは嬉しい事なんだろう。だが、私の心はポカンと空いていた。
「あ、雨だ」
なんとなく怪しい気はしていたが、やはり雨が降るとは……。
お兄ちゃんと剣斗くんは数学のセンター対策の講習で帰りが遅くなるらしい。
「お兄ちゃんはともかく剣斗くんが理系とは……」
「優一は医学部、剣斗は理工学部よ」
「へぇー、理工学なんだ。……え?」
加奈子さんは隣で傘を開き、眼鏡をくいっと上げて私を見た。
「傘忘れたんでしょ? 入る?」
「大丈夫です。ありがとうございます!」
私は雨の中、逃げるように走って、家まで逃げた。
真っ暗な部屋に電気を灯し、気持ち悪い靴下を脱ぎ、洗濯物のかごに投げ、風呂にお湯をいれた。
気持ち悪いと小さ呟いて、しゃがみこんだ。そして、膝を顔にくっつけた。
二人きりで話したい、誰もいないところで一緒にいたい。南の島だろうが、雪国だろうが、天国でも地獄でもいい、二人きりになりたい。
「ただいま」
私の思いが通じたのか、お兄ちゃんの声がして、走って玄関に向かった。
「お帰りなさい。寒かったでしょ?
お風呂の準備してあるよ」
「ありがとう。だけど、風呂は後にするよ」
お兄ちゃんの後ろを見ると、加奈子さんと剣斗くんがいた。
「お邪魔します」
私は端に寄り、道を開けた。二人はすたすたと歩いていき、剣斗は私の前で止まった。
「風邪引くなよ」
小さく頷いて、私は先へ行くお兄ちゃんを見つめた。剣斗は私の気持ちを知ってるのか知らないのか分からなかったが、悲しそうに私を見ていた。




