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落とし者の国  作者: 水歩
1/1

1*アルト•リーリアル

アルト•リーリアルの朝は早い。

まず日が昇り切る前に目を覚まして、ベットから抜け出す。夏はスッキリと起きられるが、冬は大変だ。ふかふかで温かい布団はなかなか彼を離そうとはしない。

なんとかして誘惑を断ち切った後は、自宅と店の全ての掃除を行い、どこを見ても完璧になるようにピカピカに磨き上げる。人を迎える場所は常に清潔に、美しく。アルトの尊敬する人の教えだ。

掃除が片付いたら、次は朝食。一人分しか用意しないので、簡単に用意できてすぐ片せるものを。数年前までは頑張って作っていたが、褒める人がいないと張り合いがない。簡易なものでも怒る人はいないし、ちゃんと午前中しっかり働ける分は食べている。

食べてる途中に、アルトは慌てて着ているエプロンのポケットから小さな小瓶を取り出して、中に入っていた液体を一滴だけカップに注がれた紅茶に入れた。これを忘れるとすこし辛いことになる。

そうこうしていると、外はすっかり日が昇り、街が起き出す。それまで静かだった街は賑やかになる。アルトは洗い物を済ますと、掃除のときに出たゴミを持って外へ出る。


「あらぁ、先生、おはよう。今日もいい朝ね」

「おはようございます、ミーラさん」

「先生おはよう!」

「はい、おはようございます。リアムくんは今日も元気ですね」


近所の人々と挨拶を交わす。店と並行して、近所の子供達に勉強を教えているアルトは老若男女に渡って顔を知られていて、店からゴミ捨て場に行くまでに次々と声を掛けられる。そのひとつひとつを丁寧に返しながらゴミを捨てて店に戻る。

店を開けるまでにまだ時間がある。ならば、作業場で在庫が少ないものの補充分でも作ろうかな、と考えていると、不意にどさりと何かが落ちる音が聞こえた。

この家にはアルト一人しかいない。こんな朝っぱら泥棒か、と疑いながら音の聞こえた保管庫へと向かう。あそこに細々と物が置かれているが、こんな重量のあるものは置かれていないはずだ。

用心の為に放置されていた古い傘を持って、恐る恐る保管庫へ向かう。扉の前でひと呼吸して、勢いよく開く。


「誰ですか!」


開けたはいいものの、そこには誰もいなかった。なんだ、やはり勘違いかと部屋に戻ろうとして、ふと床の上を見て驚いた。


そこには、見知らぬ少女が一人、倒れていた。

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