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一話 私の推しは異世界王子



 私の推しは眩かった。まるで異世界人のような等身で、ファンタジーに出てきてもおかしくないルックスに、ダンススキルがすごかった。


 だから私は信者になった。唯一無二の彼を推して、人生を満喫していた。

 世界で一番王子様で、背が高くて肌も綺麗で声も甘えたような低い声が優しく、時に暖かかった。


 その推しの動画を見て、私は仕事の帰宅中に癒されていたはずだった。


 だけど。


「ここはどこ!? この城下町は何!? まるで異世界じゃん! リーリンはどこ!? リーリンに会いたい!」


 私は暴れる勢いで叫んだ。周囲の白い目なんか気にしない。

 何これ、どこここ。なんか絵本とかアニメの中みたいな建物しかないんだけれど!?


 今どき木製や煉瓦造りの家ばかりとか、あんまないよね? 

 なんか自然素材で作られた建物しかない。


 本当にどこよ、ここ。

 私普通に会社帰りに推しを思ってスマホを見つめていたはずだけど!?


 ああ、残業最悪だなって早く推しに会いたい、推しが幸せになってほしいと電車から降りて、ふと目に止まった星に向かって願っただけなんだけれど!?


 どう見てもここ、異世界じゃん。


 見慣れない服装の派手な髪の色の人間達に、ジロジロ見られて嫌な気持ちしかしない。

 なんでよりにもよって、仕事用のグレーのスーツにメガネにひっつめ髪で、こんな2•5次元ミュージカルみたいな場所にいなきゃいけないの!


「リーリン!」


「……お前が、俺を呼んだか?」

 

 O h!? OSHI!? リーリン!?


 気がつけば目の前に推しがいた。

 ありえない、と思った。リーリンの透き通るような綺麗な金髪は、この世界によく馴染んだ。

 煌びやかなアイドル衣装も、まるでこの世界にあつらえたかのよう。


 じゃなくて。


「なんで!? なんで! リーリンが私の目の前に!?」


 私、いつの間に寝たの!? さすがにこれ、欲望に忠実な夢すぎない?


「それはこっちが聞きたい」

 

 髪を撫でて困惑した様子のリーリン。年齢未公開。性別男、職業トップアイドル。

 出身どこかの国と日本のハーフ。三人組のアイドルグループのエースでセンターで一番人気。


 日本人離れしたビジュアルと、とろけるような歌声はデフォルトで、何させてもできそうで、でもそんな事はないところが親みやすさもある大人気アイドル。


「俺は自分の国にそろそろ戻りたいと願ったんだが、なんで代わりの人間がこの世界に転移してるんだ。誰だ、お前」


「私はリーリンのオタクです。デビュー前からずっとファンの古参オタクです。ガチ勢です」


 それはもう、リーリンのことを考えない日々は、リーリンを知った時からありませんでした足、きっとこれからもそうです。絶対。


「お前、まさか何かを願ったか?」

「何に?」

「今日の22時22分22秒に、赤く光る星に」


 願ったかもしれない。時計なんか見てない。

 珍しいな、と目に止まった星に、推しとの幸せと、推しの幸せと、推しの永遠の活躍を願った気がする。

 いや、絶対したけどさ。


「あなたがどこにも行かないように、願いました、祖国に帰らず私のそばにいるように。だって、ハーフだし」

「お前のせいか!」

「え?」

「俺がせっかく集めたキュンをこの世界に戻って、世界を救うために回そうとしたのに、お前の願いの方がデカかったのか!」


 意味が不明だけれど、つまりはリーリンは異世界人? というか異世界人と日本人のハーフ?

 え?

 説得力しかないんですけど。ですよねぇ、だって異次元ビジュだし。

 なんて私が呑気にリーリンに見惚れてると……。


「困った、俺はもうキュンを集める能力でいっぱいいっぱいでお前を日本に戻す能力は持ち合わせてない」

「え。私日本に帰れないの?」

「いや、俺がこの世界を救って、魔力に余裕ができればお前を元の世界に戻すことはできる」


 な、なるほど?

 で。なんでリーリンは何を言いたいの?


 キュンってなに?


 まつ毛の長い目を細めて、私をじっと見るリーリン、顔が良い。じゃない、顔が近い。

 死ぬ。

 私日本に戻る前に特大ファンサで死ぬ。

 推しに目で殺されたオタクになれるなら、限界OLの私に未練なんかあるわけもない。


 最高。


 もっと見て。

 じゃなくて。


「キュンとか世界を救うとか、何。そもそもここ、どこ」

「ここは俺の生まれ育った世界だ。この世界は今、キュンと呼ぶときめきを栄養に平和を保ってる」

「どういう事」


 キュン?


「あちらこちらの異世界へ飛び、アイドルになり、大量のキュンを受け取り、それを魔力にして世界を維持してるんだ」


 いやいやだから、キュン? ときめきって意味?

 よくわかんないけど、めちゃファンタジー。まあ、リーリンのいるグループもどこか王子様ちっくなメンバー 五人で、華やかかつ、ノスタルジックさのある素敵なグループだけれど。 


 その中でもメインセンターの一番人気「リーリン」は、私の最推し。プロ意識が強くて、ファンサの鬼で、あんまり普段は笑わないのに、ファンの前ではすぐ可愛く笑うのだ。


 同じメンバーの「ユーリ」はリーリンをライバル視していて、ツンデレで可愛いし、そのわがままに振り回されるインテリ担当の「モモ」はみんなの安定剤だ。


 お兄ちゃん担当の「セツナ」はリーリンを溺愛していて、最年少の「ミュウ」はあざと可愛く、賢い。


 そんな、世界規模の人気のアイドルグループがのセンターが、なんでここに?


「そして、俺はこの国の王子だ。次期国王である以上、特に熱を入れてキュンを集めればいけず、アイドル文化の根強い日本でトップアイドルをやっていたわけだ」


 ああ。

 なるほど。

 推し活が世界を救ってたって事ね?

 すげぇな、オタク。


「本当、最高のアイドルです! リーリン! リーリン!」


 私が見えないうちわやサイリウムをブンブン振ってリーリンを応援した。

 その時、リーリンがハッとした目で私を見た。


「お前が俺を見る時、世界で一番特大のキュンを産むんだな」

「強化リーリンオタクの自覚はあります!」

「なあ、お前、俺のためにきゅんを生み続けて、世界を救うのを助ける気はないか?」

「ありまーす! リーリンのためなら死ねます」

「死ぬな。そりゃ、滅亡を狙う敵はいるし。命には関わるかもしれないけれどな」


 淡々とした表情でリーリンは言うけれど、これって冗談ではないと思う。

 リーリンはそう言うの苦手だし。

 ファンサあざといけど。


「リーリンを失う事より怖いものはありません!」


 LOVE! リーリン!

 この世で神様はリーリンだけ!


「たとえば、これはどうだ」

「え?」


 リーリンが私を抱き寄せる。

 わ。

 なんかピンクのハートがキラキラ浮かび上がってきた。

 それをリーリンは長い腕をシュルンと広げてかき集める。

 すると、周囲が輝いて、なんだか浄化されたような気持ちになった。



「リーリン王子がまた世界を救うために、キュンを集めたぞ」

「すごい! リーリン様!」


 国民が、キャアキャアと騒ぐと、やっぱりハートが浮かぶ。

 そしてそれをまたリーリンが集める。


「できれば同じ世界の人間のキュンじゃないほうが強力で、プラスマイナスゼロにもならないし、この世界のためになるんだ。頼めるか、……お前、名前は」

「オタクです、オタクと呼んでください」


 推しに認知されるだけでもありえないのに、名前呼びなんか滅相もない。


「それでいいのか……?」


 呆れ気味のリーリン。いいんです!

 オタクはむしろリーリンが最前列で見れるだけでもう死にそうです。


「リーリン様に認知の上本名呼びなんて滅相もない。私はただのオタクで結構です」

「わ、わからん」


 頭を抱えるリーリンも絵になる。

 キャーかっこいい! 最強!

 あ、またハートが産まれた! リーリンが腕を伸ばしてかき集める。


「うーん。お前はどうやらこの国の聖女かもしれない」


 真顔で言うリーリンは、美しかった。


「お前は、世界を救う乙女だ」

「オタクです」


 絶対に聖女でもオタクじゃありません。ただのガチオタです。

 いっそキモオタでも構いません。

 国宝級イケメンアイドル、いやリアル王子様なリーリンと同じ立ち位置に私を置くのも無理だし、リーリンより上に私を置くのはもっと勘弁してください。


「よし、俺をもっと好きになれ、オタク!」


 ぎゅっと両手を握ってくるリーリン。

 大きくて、でも細い指が私の手を絡めて、暖かさが伝わってきて、わー。

うわ、尊い。ああ。召されるぅ。


「大丈夫です、すでに限界まで大好きです!」


 むしろ今の状況は願望ゆえの幻覚とかそう言うのじゃないだろうか。

 眩暈がする。でもリーリンは綺麗な髪を揺らして何やら考えだした。


「オタク。お前を、狙い撃ちだ! あちこちのファンのきゅんを集めるより熱意の強いお前だけにファンサして、きゅんを集める方が効率がいい」


 私を見つめて、バーンっていうファンサ定番のポーズをしてくれた。

 あの、手で銃を撃つようなポーズだ。しかも超急接近で。

 やばいやばいやばい。

 気絶する。

 死ぬ。

 いや、もう死んで何回か蘇生したな? 神様リーリンの手で……。


「ああああああああああああ! 顔面直でファンサ!? もう、無理ぃ」


 顔面がもう、自然発光してる。同じ人間だとは思ってなかったけれど、やっぱり異世界の王子様って言われると納得しかない。


「よし、オタク、これからよろしく頼む。欲しいファンサがあればいくらでも言ってくれ」

「無限に湧いてくるので任せてください。ただし、その前に私が持たないかもしれないですけれど」


 ガッツポーズをする私。

 オタクとしてなんて勝ち組なのだろうか。幸せの極みである。



 こうして、私とリーリンは最終的に異世界を救う事になる。

 そして、他のグループメンバーや王族とも交流し、いろいろあるのだけれど……。

 でもそれは、もう少し後の話。


短編で書いた話を膨らませて連載にします、ぜひ応援してください!

推し活好きな方も、アイドル好きな方も溺愛好きな方も楽しめると思います!

皆さんの反響が私の生きる糧です!

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