第5話 分岐点
僕はかあさんととうさんと外に出たんだ何が何だかわからなかったけど、二人の慌てる顔を見て只事じゃないとは思った。
家から出て走っていると一人見覚えのない男が立っていた。
とうさんが刃をふるった、初めて見た人が正確には人ではなかったけれど人の首が飛ぶところが。
衝撃的な光景だった、なぜとうさんがその人を切ったのか理解できなかった
何をしているのかととうさんを叱責した、とうさんは謝った誤って人を切ったわけじゃないと正確な意思をもってお前たちを守るためだとかあさんに手を引かれ走り続けた、とうさんが何人も何人も何人も切って斬って霧をも斬り走った。
気づけば何も感じなくなっていた。
体が熱くなってきたコントロールが乱れてきた、自分を何とか落ち着かせることだけ考えていた。
雨の音が響く悲痛な叫びさえかき消すほどに
とうさんの腕が飛んだ、かあさんが魔法を使った
爆発が起きた視界が煙に包まれた
煙が晴れたときとうさんがかあさんが倒れていた
そして今に至る
「とうさん。かあさん。なにこれ」
とうさんとかあさんを斬った男はなぜかその場を立ち去った。
「ロ....イ.....にげて」
かあさんの手が冷たくなってきた。
かあさんが着けていたリストバンドを僕に渡してきた。
とうさんも自身が着ていたフード付きのローブを僕に渡してきた。
「これを....カレナークの王にみせればわかる」
二人は涙を浮かべ少し笑った
「かあさん、とうさん。なんの冗談だよ。」
震える声詰まる息。受け止めたくない現実。
雨が降っていたいつもと違う雨だと気づいた赤く鼻を貫くにおい
次第にいつもの雨に戻った
その場に座り込んで動けなかった。
感情の灯が雨によって薄く消えていく
足音がする
先ほどの男が戻ってきた。
哂っていた。嘲笑うかのように見下していた
左目を斬られた、痛みはなかった。
正確には痛みに気づけなかった、そんな痛みより家族を失った痛みのほうが痛かったからだ。
頭の中で何かが斬れた音がした。
ブチンとちゃんと音が聞こえた。
マナを制御していたリミッターが切れた
気づけば男はバラバラになっていた
腸は引きずりだされ脳汁もぶちまかれていた見る形もないくらい
走ってくる男の仲間たちすらも気づけば肉の塊とかしていた
別の方向から足音が聞こえてきた
「な、なんだこれは。」
高貴な服を着ていた老人が立っていた
ほかにもメイド服を着た女性が2人後ろには武装した騎士たち
ロイは走った何よりも早く音をも切り裂き姿を置き去りにして
キィーン!!!!!
甲高い音が響いた
「くっ!早い。あなたほんとに人間の子なの。。」
メイド服を着た一人がロイの拳を受け止める
足に装着されていた鉄の装具に亀裂が入る
「落ち着きなさい。我々は人の敵ではない」
ロイを抑えているメイドは叫び訴える
ロイの顔を見つめた。
メイドは驚いた。哀れんだ。歯を嚙み締めた。
「王よ、おそらくこの子はタリアお嬢様のお子様にございます。片目を潰されおそらくライ様とタリア様はもう。」
光のない右目笑わない顔切り裂かれた左目泣かない顔
感情なんてものはとうに消え去っていた。
両手には臓物、ボロボロのローブ汚れたリストバンド
血だらけの足、割れた爪、汚れた青い髪
傷ついた体。
「タリアお嬢様のお子様はマナ暴走を起こしております。お許しください。」
断片的な会話、ロイは悟った
ああぁ死ねるんだ。
かあさんに会いたい、とうさんと話したい。
頭に強い衝撃を感じた
楽になれるんだ。これで。
「ロイ。ごめんね、まだたくさん話したかった一緒にご飯食べて喧嘩したりして成長を近くで見守りたかった。本当にごめんなさい。」
かあさん。とうさん。
後姿は寂しそうに少しほっとしたように暗闇に歩いていく。
「待って!ねぇ!いかないでくれよ。かあさん、とうさん!」
目を開けると
そこは知らない部屋だった。
明らかに高貴な部屋だった。
視界が変だ。
右側の視界しかない。
あたりを見回す。
ゆっくり息を吸い
ゆっくり息を吐く
「なんだここは」
思い出したいのいに、思い出したくない記憶に影がかかる。
「うっうああぁあああぁぁあああ」
痛くないはずなのに左目に幻痛が走る
知りたくない忘れたいでも忘れられない光景
僕は一体どこにいるのだろうか。
扉が開く音がした
パリン!!!
花瓶が落ちる音が部屋に響き渡る。
「サヤ!!目を覚ましたわ!サヤ!!」
メイド服を着た女が走り去っていった。
第6話 真実




