第2話 誕生
「頑張れ!タリア!俺がついてるから!」「うぅっ!!んああぁ!ふぅふぅ」
汗を流し顔を赤らめ男の手を握りながら声を上げる女性タリア
「よぐ頑張ったなぁ」
部屋に鳴り響く産声。それ以上に男ライの泣き声が響く。
「この子はどんな子に育つんでしょうライ。」
息を切らしながら微笑みライを見つめる「どんな子だって嬉しいよ。自由に生きてほしい俺たちのように何もかも捨てて逃げた、こんな人生は歩まないよう見守るんだ。」
ライはタリアの顔を見つめ微笑み返す。どこか寂し気な顔をして
(ん。どこだ。知らない天井だ確か俺は死んだんじゃ。)優は周りを見渡した
知らない人たち知らない場所何故か宙に浮いてるような感覚。
(いや、これは抱っこされてる。20代前半くらいの女の人に?どういう状況だこれは。ん?)
自分の手を見た。小さい、見慣れた手じゃない。これは。。。。赤子だ
耳が徐々に聞こえるようになってきた。
「んぎゃー!おぎゃー!」優は声にならない声を出す
(そうか、俺は生まれ変わったのか前世の記憶を持って。転生ってことだよな)
優は少しずつ頭を整理し状況を飲み込んでいくことにした。
喜びに浸り飛び跳ねるタリアが叫ぶ
「さぁ!この子の名前を決めないと!!」
タリアを宥めながら腕を組み目をつむるライ
「もう決めている、この子はロイだ。」
数秒の沈黙が続きタリアが口を開く
「安直ね。」
「いや。これでも2日真剣に考えたんだぞ!」
ライは真顔で返答した。
「.....まぁでもいいんじゃない!」
少し考えた様子のタリアだったが納得したように首を縦に振った。
そして、優はロイとして新たな人生を歩むことになる。
季節は冬
ロイが誕生して1年ほどたった肌寒く白息が目立つ季節。薪がバチバチと音を立てて赤い炎が周りを温める。
「あぅ!ああぅ!!」
未だしっかり言葉が話せないロイはハイハイをしながら家を駆けまわっていた
(ん~暇だな。にしてもこの世界はザファンタジーって感じだな。雰囲気としては中世だろうか。景色がきれいだな。このままゆっくり人生を過ごしていきたいな。でも、この辺りは何もないな村ではなく完全に独立しているんだろうか。)
ロイが生活している家は完全に独立しており周りに家一つなかった
「おーい!今日はハイドラビットが取れたぞ!!」
ライが兎を手に満面の笑みで帰ってきた
「寒くなってきてるし今日はシチューを作りましょうか!」
食材が入った棚から野菜を取り出しエプロンを着用するタリアは両手を合わせ楽しそうに調理を始める。
「最近この付近の動物が魔物化してる。近隣の国で大きな軍事活動が始まってるかもしれない。まだロイも小さいし何があるかわからないから気を付けておいてくれ。」
ライは少し深刻そうにタリアの肩に手を置く
「わかったわ、ライも無理をしないで。逃げるときは必ず一緒約束したでしょ。」
タリアはライの手を握り震えた声で言った。
「あぁわかってる。ロイを守るのもタリアを支えるのも俺の役目だ。」
お互い見つめ合い固い意志を再度確認するかのように微笑んだ
(なんの話をしてるんだ。軍事活動って戦争でもすんのかな。)
ロイは何も理解できなかったのか顔を少し傾ける
「ああ!ごめんね!ロイは大丈夫よ!」
少し慌てた様子のタリアはロイを抱き上げる。
「ちょっとライ!シチューの様子見ておいてくれない!!」
そのままタリアはライに家事の様子を見るように促した
少し時が経ちロイが2歳になった年の春
「こらー!待ちなさい!!服をきて!」
部屋にタリアの声が響く。
「いやー!あははは」
拙い言葉でわかりやすい言葉で反抗するのはロイ
足腰がしっかりしてきたのか小さな足で走りまわる
(筋肉はかなりいい感じに発達してるな。走る速度もまだ上げられそうだな。)
心の中でロイは細かい分析を行っていた。
(問題はいつから鍛え始めるかなんだよなぁ。)
ドン!!!!!!!!
部屋に鳴り響く鈍い音
「いった――――!!!」
ロイは頭から血を流す
「大丈夫!!!ほら見せて」
タリアは驚きロイに歩み寄る
「前見なきゃ危ないじゃない!」
布で血を拭い包帯を巻きつける
「ごめんなさい、、、」
ロイはタリアの顔を見る
(こんな他愛無い会話をしたのっていつぶりだろう)
そのままロイはタリアの書庫に足を向けた。
(少しづつ文字が読めるようになってきたしこの世界のことも勉強しないとな)
ふと手に取った本を開き目を通していく
この世界は大きく分け5つの国に分類される
魔導大国マナンブルグ
商業大国リュウトゥー
カレナーク
ミリオン
神聖ハーベルン
さまざまな人種が存在している。獣人、エルフ、魔族、人族、神族が存在している。
「世界情勢はさすがにここにある本じゃわからないよな。」
ロイはページを進め本を読み進めていく。
通貨各国の取り決めにより一律に定めることとする。
銅貨10枚で銀貨1枚 銀貨10枚で金貨1枚 金貨10枚で聖金貨1枚
(これはわかりやすい)
また、各国入国税を設定すること払えない場合は税と同等値にあたる魔石でも良しとする。
魔石とは動物が一定のマナにさらされる事で変異することで魔物になるその魔物のコアつまり心臓のことを指す、魔物の危険度を設定している為危険度に応じて価値を設定する。
(まぁこんなところか。だいたい基礎知識は補えて来たかな。)
ロイは本を戻し次の本へと手を伸ばす
第3話 魔導の目覚め




