第17話 ロイの魔法
レオとロイはベガに斬りかかる。
氷雪の風魔導書サリオンに記載されていた。
【極大魔法氷雪の風】文字の如くマナを伝い冷気を纏い自身の周りの温度を低下させることができる
空気は氷点下を超えるがマナの干渉を受け液体や固体になることがない。絶対零度をも超える冷気を生み出す。
そんな物が体内に入り込めば臓器は凍り機能を低下次第に機能を停止させ壊死させ直にその者を死へと追いやる最強で最恐の極大魔法の一つ。
「はぁぁあ!」
レオの斬撃はベガの肩から入り斜めに腰へと刃筋が通る
血液が噴き出しベガのうめき声が響く。
「うがぁぁぁあ!」
掠れたうめき声は耳障りだった。
次第に血液が凍り傷は修復されると共に辺りの温度も更に下がっていく。
レオとロイの体は凍っていき痛みを伴う。
「うっ!!」ロイは痛みに喘ぐ
「ロイ君!マナで体温を上げろ!常に肺を温めることも意識するんだ。油断すると肺が凍り呼吸できなくなる!」
レオの息が少し乱れているのがわかる。無理もない、ロイを意識し自身の体を内部さえマナで温め、なお身体強化を施している。
心身の体力を常に最高速で消費しすり減らしている。
それは、ロイも同じだ。
レオは攻撃の手を止めることなく斬り続ける。宙を舞いベガの頭を切りつけその度に血が噴き出る。
数秒もすれば血は止まり傷はふさがる。
「はぁ、はぁ。くそ。キリがない!どうすればいい。」
レオはものの数分でばてていた。
二人はチェルシーの方を見たが変わらず動けそうもない状況だった。
「やはりチェルシ―を連れて逃げるべきだロイ君。」レオの一言に首を横に振るロイ
ロイはそのまま両手を前に出しマナを集める。
目を閉じ呼吸を整える。
だが、何も起こらない。
「なんで!星の輝きが。放てない。」
ロイがあたふたしているとき
ベガが氷塊を飛ばしてきた。
「危ない!」
レオのとっさの判断でなんとか避けきれたロイ。
「すいません!レオさん」
ロイが再び立ち上がり星の輝きを放とうとする。
何度やってもできなかった。
こんな時になんで!ロイは心の中で叫ぶ
「ロイ君!合わせて!手数で勝負しよう!後方支援なんて言ってる場合じゃない」
レオと足並みを合わせベガに体をクロスで斬る
結果は同じだった。血を噴き出すものの体は数秒でもとに戻り温度は下がる。その繰り返しだった
二人の息が切れかけている一方ベガは何も変わらない様子だった。
痛みすら感じていない様子。
「あんだけ極大魔法を発動し続けていて何も弊害がないなんて、そんなのありかよ。」
ロイは愚痴をこぼす。
「いや。弊害はある。体の皮膚の爛れ方が異常だ。恐らく細胞が常に冷気にさらされることで壊死していくんだろう。狂気じみてる、まともじゃない!」
レオの言葉を聞きロイはベガを見るとたしかに最初見たときより皮膚が少ない
「痛くないのか。」ロイが気味悪そうに見る中レオは一つ気づいた
「首輪をつけてる。あれは魔道具か。。。。。まさか。グールか!」
レオの言葉に納得がいった、痛みでひるまない。明らかに生者ではない雰囲気、マナの使い方。
「レオさん、一度僕の魔法で頭を吹き飛ばしてみます。」
グール、ロイの中にある記憶ゾンビは脳を破壊すれば生命活動を停止する。それに賭けるしかないロイはそう思い、左手の指を弾いた。
パチン!
マナに包まれた水滴がベガに顔の目の前に飛んでいく。
「爆ぜろ!」ロイの一言と同じタイミングで水滴は大爆発を起こした。
煙が薄れて二人の視界に映ったのは顎から上がないベガの姿だった。
「やれた。のか」
ロイが呟く。
よく見ると死滅した細胞は染色体のような物をうねらせ再生活動を始めていた。
「ダメか。くそっ!」
ロイが強く拳を握り腿にたたきつける。
「もう一度やります!」
ロイは間髪入れず水蒸気爆発を撃ち込む
何度も爆散しベガは腰から上がすべて消し炭になった。
それでも再生活動を止めないベガ。
絶望を感じた。今できる全力をもってしても消し去れない強敵ロイは自身の不甲斐なさに打ちひしがれていた。
「ロイ君大丈夫、ダメージは与えられている。体力は持つか!」
レオの励ましによりなんとかメンタルを保つロイ
「ロイ君合わせよう!私が切り込みを入れるからそこを爆破してくれ、再生速度が上がっている今内部でのみ爆発が起きるはずだ!」
レオが走り剣を振り上げる
レオが斬り、ロイが爆破させる。
ドゴォーン!鈍い音が響き爆散する、辺りは雪が舞い上がり視界を遮る。
ロイとレオは腕で顔を覆い視界が晴れるまで待機していた。
次第に雪が消えていき視界が鮮明になっていく。
そこにはベガの姿はなくベガのものと思われる足跡のみが残っていた。
「終わったのか、」
温度は変わらない。でもベガの姿も見当たらない
二人は警戒を解かず剣を構え背中を合わせた。
「ロイ君あの巨体だ、隠れるのは難しいと思うが一応警戒をチェルシーの事も見てやってくれ。」
レオの声掛けもありロイはチェルシ―に目を向ける特に変わった様子もなく安堵の表情を浮かべ周りを見る。呼吸を整え警戒を行い数分が経ち特に何も起こらなかった。
二人は剣を下ろし顔を見合わせて頷いた。
終わった。何とか勝てた。
氷雪の風確かに能力は厄介だったが案外あっけないとロイは思っていた
拍手が聞こえた。
チェルシーが拍手を送ってくれている
そう思っていた二人はチェルシーの方に目を向けた。
チェルシ―の後ろに立っていた男だった。見覚えのない若い成人男性が経っていた
その男が口を開いた。
「すばらしい。見事な連携だった。そして感謝を。」
一礼をする男の顔はいやらしく気持ち悪くおぞましい笑顔だった。
第18話 ベガ




