第15話 初めての学友
イデア・クロノスと握手を交わした後ロイは校庭に出て極大魔法の研究を進めていた。
「なんでだろう。威力が全然上がらないコルティーナ・エイフィアと話せたらもっと詳しく理解できるのに。」
ロイは星の輝きを何度も放ち首をかしげていた。
「まだ、自身のマナと大気中のマナが上手く足並みを合わせられていないからだよロイ君!」
声がする方に顔を向けると、そこに居たのはイデアだった
「どういうこと、イデア君。」
ロイは聞く
「言葉にするのは難しいんだけど、簡単に言うと自身に流れるマナは自分の体に合う流れ方や形をしているのに対して大気中のマナの形や流れ方は自由なんだよ、つまり干渉して上手く魔法の歯車が嚙み合わないってことなんだ。だから自身のマナを大気に漂うマナの流れに合わせれば極大魔法の威力も上がるってことだ!」
イデアは饒舌に説明を行う
「なんでそんなこと知ってるんだ!物知りなんだねイデア君は」
ロイにとってかなり有益な情報だった、なぜイデアが知っているかは気になったがそんなことより早く試したいと言う気持ちになっていた
雪が降るなかロイは再び極大魔法を発動しようとしていた時イデアは口を開いた
「静止する時。これが俺が天から授かった極大魔法だよロイ君。」
その一言にロイは目を見開いた
「イデア君も極大魔法を使えるの.....」
イデアは右手を突き出しカギを閉める動作を行った。
降る雪がその場で止まり窓から見える生徒たちも全く動かない。
「なぜ僕だけ動けるんだ。」
ロイとイデアのみが動ける世界
「これが俺の極大魔法、静止する時だよその名の通り大気中のマナを伝染的に静止させるこの世界のすべてをね。任意の対象の時を静止解除も行えるんだ」
イデアの説明を聞いたロイは正直チートだろと思ってしまった。
「さすがに強すぎないか。」
ロイがそんなことを口にすると
「極大魔法は最強だこの世界で8つしか存在しない。でも最強の極大魔法にもデメリットが存在するんだよロイ君」
イデアがカギを開ける動作を行うと時の流れが元に戻った。
降る雪が地面を湿らすと同じタイミングでイデアは吐血した
「おい!大丈夫かイデア君!」
ロイは駆け寄り背中をさする
「これが、デメリットだ。時を止める長さによって体にかかる負荷が倍々に増えていくんだ。次第に心拍すら静止してしまう。つまり死だ時を静止し続けるとそれだけの代償が降りかかるってこと。ロイ君の極大魔法にもデメリットは存在する、なにかはわからないけどね。だからそんな連続で極大魔法を使うものじゃないんだ。」
イデアがロイの肩を掴み立ち上がって注意を促した。
「わかったよイデア君。」
世界で8つしかない極大魔法。
星の輝き、静止する時。残り6つ
数日経ち自室で目を覚ましたロイは視界の歪みを感じた。
「な、なんだこれ。」
ロイは右目をこすり目を再度開く。
なにもなかった
「なんだったんだ今の」
ロイは何度か瞬きを繰り返し呼吸を整えた
机に座り魔導書サリオンに手を伸ばしたロイ
本を開きページを進める。
今までにない文字が浮かびあがっていた
【ロイ・サラディーナ私は生きている。時が来たら必ず出会う。待っている。コルティーナ・エイフィア】
「え。生きてるのか。コルティーナ・エイフィア」
震える声。
いつだ、時が来たらっていつなんだと
ロイは思ったあの時聞こえた声の主4年後にまたと言っていた。助けてと言っていた気がする。あの声もしかしてコルティーナ・エイフィアなのではないかと考えてしまった。
「まさか。本当に、今どこに居るんだ!答えてくれコルティーナ・エイフィア!」
部屋の中で叫ぶロイしかし当然ながら返答はない。
「どこにいるんだ。一体僕と君はどう関係しているんだ。魔導書サリオンを手にしたときからずっと気になっていたんだ。答えてくれよ」
関りがあるわけでもない、なぜこんなに気になるんだろうか。つながりを感じてしまうんだろうか。
理解できなかった。
ページをめくり読み進めたが何も記載のないままだった。
ロイが本を閉じ、席を離れ図書館に向かう
誰もいないロイの部屋机に置かれた本
窓も開いていない、扉も閉じている。なのに本はひとりでにページが捲れていく
【氷雪の風に注意しろ。ロイ】
そのページをロイが目にするのはそう遠くない未来だった。
この世界に存在する極大魔法は8つ
星の輝き、静止する時、氷雪の風。残り5つ
仄暗い洞窟に並べられた魔道具。
「これから我々は禁忌に触れる。身命を賭して世界を蹂躙せよ。」
漆黒のフードを被った男達。
「我々魔術集団ポルックスが世界を蹂躙する時は近い。」
不敵な笑みを浮かべる男達は自身の手を斬り魔道具に血液を注ぐ
次第に魔道具は紅く染まり魔法陣が広がる
「出てこい。ベガ!!!」
男は両手を空に上げ叫ぶ。
次第に魔法陣から顔が爛れ体の皮膚は所々焦げ落ちているグールらしき魔物が現れた。
次第に洞窟内の温度が下がっていき壁には霜がつくほどになった
男たちは即座に首輪を手にしグールベガの首に掛ける。
男の血液がかけられた首輪は次第に紫に光ベガの首を絞めつける
聞くに堪えないベガの叫び声が洞窟に響き。男たちの笑い声も同じく響き渡る
「こいつはいい!愉快愉快!」
男の手に握られた手綱が離され従順な魔物グール【氷雪の風ベガ】がこの世界に生まれ落ちた。
第16話 氷雪の風




