第14話 極大魔法
ロイがサレンディアに編入してからしばらく時が経ち雪が積もる季節になった。
粉雪が吹き荒れる校庭に立つロイは一人マナを集中させていた。
辺りは静寂が立ち込めロイの周りに風が巻き起こる。
大きく息を吸い両手を前に突き出す。
頭の中に浮かぶ光景は前世死に際に見えた星。「なんで今さら。」そんな事をぼやきながら集中を切らさないよう深呼吸するロイ。
大気中のマナが反応を起こす、微かに星のように光を帯びたマナが無数に反応を起こす。
数秒後ロイの周りに漂う無数の光が連鎖的に爆発を起こす。
辺りを爆音で包み雪が舞い上がる。「これが、極大魔法。」
ロイの目の前に映る光景はまさしくあの時見た綺麗な星空の様だった。
数か月前
ロイはコルティーナ・エイフィアに関してゾロアの元に赴いていた。
「ゾロア聞きたいことがあるんだがコルティーナ・エイフィアって誰かわかるか。」
ロイは過去に住んでいた一軒家もと実家にてゾロアと話をしていた。
「なんでお前が姫の名前を。」
ゾロアの表情は少し暗くなっていた。
「学校の図書館で見つけた本の作者がコルティーナ・エイフィアと記載されていたんだ。その本に書いてある極大魔法について知りたいんだけど本がボロボロで所々読めないんだ。だから会えないかなって思ってたんだけど」
ロイの手元には魔導書サリオンがあった。
ゾロアは魔導書サリオンを見つめながら言った
「もう。いないんだ、昔お前と対立した原因がコルティーナ・エイフィアだ姫殺しとしてカレナークを襲撃しようとしていたんだ。知ってるだろ」
拳を強く握りロイを見るゾロア
「やっぱり。そうなんだ。」
ロイが俯き悲しそうな眼をした。
ゾロアが魔導書サリオンに手を伸ばしページをめくる。目を見開いたゾロアの口から出た一言はロイにとって衝撃だった
「なぁロイ。この本、何も書いてないぞ。」
ロイは驚きを隠せなかった。何度も読んだ解読を試みた、事実内容はすべて頭に入っている。
「そんなわけがない!何度も読んだ、内容だってすべて頭に入っているし。一体何を言っているんだ!」
ゾロアの開いているページに目を向ける。
「ほら!書いてあるじゃないか!ここに」
ロイの指をさす先には、極大魔法【星の輝き】と記載されていた。
「なにも見えない。」
ゾロアは首を横に振った。嘘をつくような人ではないことは知っている、ロイは理解できなかった。
「一体どういうことだ。何が起きているっていうんだ。」
ロイは首を傾げ考える。答えは見つからなかった「なんで僕には見えてゾロアには見えないんだ。」
他のページを見ても何も見えないと言うゾロアを横にロイは再度目を向ける。
「あ、あれ。ここに書いてあった時の極大魔法は。なくなってる。」
記載されていたはずの文字が消えていた。
ページをめくって何度も確認すると今まで記載されていた極大魔法はすべてなくなっていた。
星の輝き以外は
「星の輝きってなんなんだ。」
ロイが呟くとゾロアは立ち上がった
「それは、姫コルティーナが作り上げた極大魔法だ。姫以外は使える者は存在しない」
ゾロアの目に映る光景、過去に見た美しい魔法
マナンブルグを以前襲ったスタンピード7年前マナンブルグとミリオンの牽制が行われていたとき膨大なマナの影響により付近の動物が8割ほど魔物化し付近の村やマナンブルグを襲った時だった。
わずか9歳の少女が国を救った。
押し寄せる魔物を目の前に両手を前に突き出し大きく息を吸い目を閉じる
途端大気中のマナは星のごとく光を帯び激しく爆発する。
物凄い音と砂埃とともに魔物は蹴散らされた。それは星の輝きと呼ばれ僅か9歳の銀髪の少女コルティーナ・エイフィアは姫と呼ばれるようになった。
「これがコルティーナ・エイフィアの話だ、わかったかロイ」
ゾロアは本を閉じロイに渡す。
「なるほど。でもなぜ僕には本の内容が見れるのかはわからないな。」
ロイは本をしまい立ち上がる。
「そういえばロイお前最近剣術はどうなんだ。まさか魔法ばかりで疎かにしていないだろうな」
ゾロアの一言に冷や汗を流すロイ
「い。いやぁーまさかそんなわけ。」
震える声顔をあげるロイの目の前には冷たい視線を送るゾロアがいた
「我と戦ったとき確信した。お前は強いと、剣術も怠るな決して裏切らん。」
ゾロアはロイの背中を軽く叩いた。
その時感じた、マナの流れ「これは。」ゾロアは数秒ほど固まった
「ロイ、魔導書サリオンにマナは流れているか。」
ゾロアの真面目な視線にロイは顔色を変える。
「初めて見たときは確かに感じたけど最近まったく感じないんだ。」
ロイの一言にゾロアは目の色を変えた「まさか。そんな事があるのか」
ゾロアの震える声震える目そんなゾロアを見てロイは言った
「何か知ってるのか。教えてくれ」
ロイの顔を見るゾロア「今は言えない。だがすぐにわかる、お前が辿る運命だ自分で見ろ」
ゾロアはそんなことを呟き家を出た。
「なんだったんだ一体。結局わかったのはもうコルティーナ・エイフィアはいない事と星の輝きって極大魔法か。学校に帰ったら試してみよう」
ロイも荷物をまとめ家を出た。
身体強化を施し学校へと走る。
それから今に至る
「で、できた。これが星の輝き。まだ威力は控えめだけどすご.....うっ!」
物凄い頭痛が襲う。吐き気悪寒。
「な。なんだこれ。気持ち悪い」
ロイは立っていられないほどの頭痛に襲われた。
「マナ酔いだ。気をしっかりもてロイお前のマナで抑え込めじゃないと私のマナに飲まれるぞ」
どこからか声が聞こえた。聞き覚えのある声だった
「だ、だれ。抑え込めってどうやって」
ロイは吐瀉を堪えながら話す
「今は私が誰かなんてどうでもいい、早くしろイメージするんだ体の中にあるマナを感じろ長年付き合ってきた自身のマナとは違うものがあるだろ」
女の子の声の言う通り目を閉じる。感じる。
自身の体に流れるマナに違和感を感じたその違和感を自身のマナで包み込むイメージ
次第に悪寒が取れ吐き気も収まる。
「まだ頭が少し痛いけどこれでなんとか。おい!これでいいのか」
ロイは叫ぶ、返答はなかった。
「ここ最近変なことばかり起きる。なんなんだ。」
ロイは悪態をつき立ち上がった。
そのままクロナミを生成し「つぎは、剣術だな。」とつぶやき身体強化を行った。
剣を振り空を切る「懐かしいな。この感覚」しばらく剣を振っていなかったロイには懐かしい感覚だったマナによって生成された剣はしっかりと重さを感じる。何年も剣を振ってきたロイにとってこの感覚は色々な思いでが詰まっていた。
「強く踏み込んで斬りかかる。初めて自分の意志で人を斬ったのもちゃんと覚えている。」
強く剣を握り思いつめた表情を浮かべたロイ
「もっと強くなる。すべての真実を突き止めたい、神族の思惑もなんなのか知るためにももっと力がいる大切な人をもう二度と失わないように。」
イラやサヤ、サルファにチェルシーの顔を思い浮かべ剣を振り続けた。
そこから数日経ちロイの極大魔法は洗練されていった。
発動までの時間、威力も申し分なく高まって行った。
「やべ!そろそろ授業だ。教室戻らないと」
ロイは慌てた様子で教室に戻り席に着く
「間に合った。。。。」
そのままロイは授業を受け一日を過ごし放課後の事だった。
荷物をまとめ再度極大魔法の研究を行うために校庭に向かおうとしていた時声をかけられた。
「ロイ・クロフォード君だよね」
その声に反応し後ろを振り向くと見慣れない眼鏡をかけた男の子が立っていた。
「そうだけど、君は?」
ロイは見慣れない顔を見ながら聞く
「あ、ごめん!俺はイデア・クロノスいつも校庭で魔法の練習してるの見てて声かけたんだ!」
イデア・クロノスと名乗る少年はロイに握手を求めた。
「ぜひ友達になって欲しい!」
そんなことを言われたのは初めてだったロイは少し戸惑い
握手を交わす。
第15話 初めての学友




