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あの星ノ下デ  作者: しらたま
第一章 新たな人生

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第10話 再開

今日は晴れていた。

心地良い風が肌を撫で。気持ちの良い日差しが自分を照らしていた。

王城の門を馬車がくぐり正面の玄関で止まった。

鳥のさえずりが聞こえる。外を見ながら窓辺に腰かけていたロイ

部屋の外にはイラとサヤが立っている。

指先で傷ついた左目をなぞりゆっくり呼吸をする今日はいい天気だった。

空を見上げ天に居るであろうライとタリアに問いかける。

「僕はどうしたらいいんですか。」

静寂が部屋を包む返答はない。当然だろう。

玄関の方を見た。

老人が一人馬車から降りてきた。

サルファ王に一礼し何か会話をしていた。

その後に続いて一人の男が降りてきた、話に聞いていたゾロアと呼ばれる護衛だろう。

視界の端で捉えた男の顔。

白髪で隻眼の男。覚えている、忘れるはずもない男。親の仇。

震えた。あの時とは違う恐怖により震えたのではない。憎しみだ、僕からすべてを奪った男

僕は扉の前へと足を運んだ。

「イラさん、サヤさん。ごめんなさい僕は耐えられません。」

と一言残し窓から飛び降りた。

着地時の衝撃と音でサルファ王、フェルメール王、ゾロアは振り向いた。

砂埃が舞、うっすら影がかかっていた。

次第に影が晴れゾロアの視界に映った者。

少し背が伸び髪も伸びて雰囲気が暗い感じだったが見覚えのある顔つき、髪の色。

「覚えているか、僕のことを。」

冷たい声、冷たい視線。はっきりとした殺意。

「あぁ。覚えている。我々がお前のことを忘れたことはない。すまないと思っている」

ゾロアは頭を下げた。

「な、なにをしているんだ。」

ロイは引きつった顔でゾロアを見た。

理解できなかった。両親の仇が頭を下げたことが理解できなかった。

「すまないで済むと思っているのか!おま、お前に奪われたものはもう帰ってこないのに。何を言っているんだお前は、ふざけるなバカにしているんだろう!」

あたりに響く怒号、両親の死後ロイは初めて涙を流した。

サルファ王、イラ、サヤはそんなロイの姿を見て驚きを隠せなかった。

ここまで感情的になったのは初めて見たからだ。

ロイの元へフェルメール王が歩み寄っていた

「だ、だめです!危険です王!」

ゾロアは必死に止めようとする。

「な、なんだ。来るな!」

ロイは震えた声でクロナミを生成し構える。

「え。」

絶句した。ロイは言葉を失った。

あろうことか一国の王たる者が膝をつき頭を下げこういった。

「大変申し訳ございませんでした。」と

もう限界だった。

水がぎりぎりに入ってひび割れかけていたコップに衝撃が加わったように。

割れた。壊れてしまった。逃げ場を失った、もっとクズみたいなやつらならよかったのにと、何度も思ってしまった。

剣を振り上げ斬りかかる。

鈍い音が響く。

ゾロアの剣がクロナミを受け止めた。

「王よ下がってください!」

サルファ王とメイド二人がフェルメール王を支えその場を離れる。

「こうやってお前と話すのは初めてだな。気持ちの整理を付けたいなら相手になる。そのくらいの義務はあると思っているからな。」

ゾロアはそういい後ろに飛びのいた。

「なんなんだよお前は。僕の家族を意味なく殺しておいて!なにを今さら謝罪で済ませようとしているんだ。もうかあさんもとうさんも居ないんだ戻ってこないんだ。」

ロイは泣いていた。震える声でゾロアを見ながら。

イラもサヤもそんなロイの姿を見つめ涙を浮かべた。

わずか9歳、少年の悲痛な叫び。

握られた剣を振りかぶり音速で斬りかかる。

ゾロアはその剣先を何とか受け流す。

イラがもうやめてと叫んでいた。でも、そんな言葉はロイには届かない。

何度も何度も剣がぶつかる音が響きわたる。

もう何を言いたいのかわからなかった。

ただこの男を殺すと心に刻み込み剣を振り続けた。

「我を殺した後お前はどうする。ロイ」

ゾロアの一言にロイは動きを止めた。

続けてゾロアは言った「我を殺したあとお前に何が残る。何も残らない虚しいだけだ、お前の親が帰ってくるわけでもない。」と

そんな事言われなくてもわかっている。

「そんなことわかってるんだ」

ロイは叫んだ。

ロイは左手をゾロアに向け指を弾いた。

パチン!!!

音が響きゾロアの元へ小さな水滴が飛んでいく。

音もなくゆっくりと。

数秒の間があき。

轟音とともに爆風が襲う。

サルファ王達が目を開けると

血を吐きボロボロのゾロアが座り込んでいた。

息はまだ残っていた。

「おまえは、楽になりたいだけだろう。この現状から逃げて楽になりたいだけだ」

ゾロアはロイを見た。

ロイは強く歯を噛み締め俯いた。

再度左手をゾロアに向けた。

その時抱きしめられた。

優しく温かく。懐かしく感じた。

「とうさ......ん。」

ロイは顔を上げるとそこにはイラが居た。

「ロイ。もういい。前を向きなさい、貴方は兄ライの息子でしょ強くなりなさい現実を見なさい受け入れなさい失ったものばかり見つめてどうするの今貴方の手に残っている者を見なさい。」

優しく包み込む声

ロイは泣いたサルファ達はそんな姿を見て思った。

子供のあるべき姿だと。

ゾロアは剣を杖として使いフェルメール王のもとに歩み寄る。

「そろそろ中に行きましょう。彼ともまた後で話したい。」

ゾロアは真剣なまなざしで王を見つめサヤに支えられ城内へと足を運んだ。

数十分のひと悶着があり何とか無事に会談を始めた王二人。

議題は姫殺しの件だった。

神族がかかわっているこの件について、どう対処していくべきかだった。

本来はミリオン、リュウトゥー含め話し合う必要があったがどこまで手が回っているかわからない

だからこの両国のみで話を進めることにした。

「今回なぜ神族が動いたと思う。」「わからんな。世界の支配権であれば今均衡が保たれている今事を起こすとは考えにくい。」

二人は未だ疑問視していた。なぜ今なのか、何のためにこの両国に狙いをつけたのか。

「納得がいかないことがある。姫殺しの件だが神族の奴らに聞いただがまだ死体が見つかっていない。怒りが先走りけしかけてしまったが。」

フェルメールがそんなことを言った。

「実はな。ロイの両親の遺体も回収できなんだ。」

サルファも口を開いた。

「何か関係があるかもしれん。」

二人は同じことを言い放った。


その頃ロイの部屋

「会うのは5年ぶりだな。」

ゾロアは気まずそうに話しかける。

「はい。」

ロイは小さく頷く。

「許してほしいとは思っていない。我も思うところはある、だがお前を憎むのは違うと思っている。すべては神族が元凶だ。」

ゾロアは強く拳を握りロイに言った。

「ごめんなさい、僕話も聞かないでいきなり。」

「気にするな!我も同じだ!」

イラの膝に座るロイの心に灯る黒い炎はイラの優しい手により薄く小さく消えていく。

5年間燃え続けたこの炎は、決して無駄ではないとそう信じてロイは前を向く

全てを許しているわけじゃない思うところもある。

でもそれはお互いさまで互いに認め合わなければならない事でもある。

そう納得しロイは深呼吸した。

そのときロイは失っていたものを一つ取り戻した気がした。

ロイはゾロアを見て涙を浮かべながらも本心から笑えた。

第11話 将来の分岐点

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