5.(異変)
すっかり夜は更け、月明かりだけが辺りの暗闇をうっすら照らす中、
俺とミリシャは町外れの森の入り口で合流した。
「じゃあそろそろ行くか…
といっても、前はがむしゃらに森の中を歩いていて、見つけたもんだから…
すぐ見つかると良いが…」
俺はそうぶつぶつと零し、森の中に入ってくと、
後からミリシャもすっと付いてくる。
コイツが居れば、もしモンスターに遭遇しても安心だ、と俺は背中に頼もしさを感じた。
なんとか記憶を辿って、森を徘徊し、奥に侵入していく…
そうこうしているうち、数人の人影が、とある樹木の側にうごめいているのに気付いた。
「だ、誰だ?!…こんなところに夜中に。」
俺は人影の正体をはっきり確認しようと急いで近付く。
ミリシャも緊迫した面持ちで続いた。
その数人の人影は黒頭巾に、黒の衣といった、まるで忍者の様ないでたちをしていた。
俺たちに気付き、こちらを振り向くと慌てたように森の入り口に向かって走り去っていった。
「アイツら、一体何だったんだ・・・」
俺は狐に包まれたように呆然と立ち尽くした。
「戦闘になるかと思ったが…脱兎のごとく去っていったな。」
その訝しげな人影のいた場所のそばの樹木の根元に目を遣ると、
一昨日の晩目撃した、グリーンドラゴンの卵が茂みに隠れており、白い表面が見え隠れする。
「見るがいい、これが、くだんのグリーンドラゴンの卵だ。」
俺はそう口を開くと、そっと葉の茂みを掻き分けた。
スイカのように大きいサイズの緑色の丸模様で彩られた、その卵があらわになり
10個近く密集していた。
「初めてグリーンドラゴンの卵を見たが、こんなに大きいサイズだったのか…」
まじまじとミリシャは卵を腰を低くして凝視する。
「あの妙な奴らがなんだったのか気になるが…
ともかくまた明日の朝にでも、喫茶店ブランに集合して今後の具体的なプランについて詰めていきたい」
俺はミリシャの方に向き直って、そう宣告した。